“つながり”が広がる空間へ|三者の信頼と覚悟が導いたオフィス移転プロジェクト
株式会社NTTデータ先端技術が挑んだ、大規模オフィス移転プロジェクト。
方針やレイアウトをめぐって意見が錯綜し、新オフィスづくりは想像以上に難航しました。
そんな停滞した状況を動かしたのは、主担当様の覚悟が滲むひとことでした。
「社内調整は自分が責任をもってするので、この方向で進めさせてほしい」。
その瞬間から、全員の足並みが揃い、プロジェクトは一気に加速します。
本記事では、プロジェクトの中心を担った株式会社NTTデータ先端技術の吉永さん、株式会社NTTデータ・ウィズの小川さん、workkitの堀本の三者が当時を振り返ります。
(Profile)
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株式会社NTTデータ先端技術
人事総務部 人事総務担当 担当課長
Kazuhiko Yoshinaga
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株式会社NTTデータ・ウィズ
ライフサポート&ウェルネス事業本部 ワークサポート事業部 課長代理/PM
Masashi Ogawa
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株式会社ヒトバデザイン
デザイナー
Naotaka Horimoto
Kazuhiko Yoshinaga
Masashi Ogawa
Naotaka Horimoto
部署を越えた共創が生まれる場づくり|働き方と組織戦略を支える空間

――まず、オフィス移転に至った経緯についてお聞かせください。
吉永さん(以下、吉永):
コロナ禍以前は固定席で社員一人ひとりに席を設けていましたがコロナ禍を機に、全社員がリモートワークを実施することになりました。最初は社員からの反発もありましたが、リモートワークが徐々に定着していくと、今度はコロナが終息しても出社率が低いまま戻らないという状態となりました。多様化する働き方や社員の価値観の変化に対応すべく、抜本的な見直しが必要と判断。
まず、社内で「オフィス最適化ワーキンググループ」を立ち上げ、本部や経営層と意見を交わしながら、 “社員にとって本当に必要なオフィスとは何か”を模索していきました。
――新オフィスにどのような役割や機能を期待されましたか?
吉永:実現したかったのは、出社している社員がストレスなくコミュニケーションをとれる環境です。個人や同一チームだけでの取り組みでは、発揮できるパフォーマンスに限界があります。だからこそ、部署を越えたコラボレーションが生まれる場をつくり、ビジネスの成長につなげたいと考えました。
また、本プロジェクトと並行して、広報部門が社員の意見や企業理念をもとに「人と技術で、まだ見ぬ未来へ」というブランドスローガンを作成していたため、そちらも空間に反映したいとお願いしました。
調整を重ねた先に残ったのは、“無難な空間”|多様な意見に翻弄され、葛藤が続いた日々

――大規模プロジェクトだっただけに、ご苦労も多かったとうかがいました。推進するうえで、とくに難しいと感じた点があれば教えてください。
吉永:想像以上に多くの意見が集まり、プランの方向性を決めるのには本当に苦労しました。
当初は、一目見て“NTTデータ先端技術”らしい未来感やシンボルがある空間を目指していましたが、最初に提出したプランに対しては会議で思ったほど良い反応が得られませんでした。
社内からは「木の温かみがある心地よいオフィスにしたい」との声も上がってきて……。意見が出るたびに方向性が変わっていき、気がつけば何ら変哲のないプランになっていました。
堀本:20名弱のメンバーで定例ミーティングを行っていましたが、そのたびに多様な意見をいただきました。意見が割れるたびに多数決で決めていたので、本来目指していた方向とずれる場面が多かったです。私としても置きにいくご提案しかできなくなっていました。
小川さん(以下、小川):社員のみなさんが求める“働きやすさ”と、経営層が描く“企業らしさを体現したい”という想いが交錯していましたよね。
堀本:最終的には、家具メーカーのショールームのようにブランド家具を配置するだけのプランにまで落ちてしまって……。当然、役員の方々からも「全然おもしろくない」と厳しい声をいただきました。
吉永:社長から「まるで食堂みたいだ」と言われたときが一番辛かったですね。
決断が風向きを変えた|覚悟と信頼に支えられ前進したプロジェクト

――そんな難しい状況の中で、どのように打開策を見出されたのか教えてください。
吉永:途中から、「せっかく堀本さんがいいアイデアを出してくれているのに、私たちがそれを潰してしまっている」と感じるようになりました。
そのとき、急に自分の中でスイッチが入ったんです。「素人があれこれ口を出してもしょうがない。堀本さんには当社の目指したいイメージをしっかり伝えることに注力し、それをデザインに落としてもらう方がいいプランになるはずだ」と。
小川: 私も一度立ち戻るべきではないかと感じ、吉永さんにご連絡しました。お話をしていくなかで、お互いに同じ想いを抱いていたと知り、“ブランディング”と“コミュニケーション”を軸に、堀本さんにあらためてプランをご提案いただくことにしました。
すると、会議で「ちょっとおもしろいのが出てきたね」と前向きな声が上がり、風向きが一変しました。

堀本:吉永さんが腹を括ってくださったときに、小川さんも「自分も一緒に責任を持ちます」とおっしゃってくれて。あの瞬間、3人の心が“ガチっと”固まった感覚がありました。
吉永:それからは、打ち合わせの場でも堀本さんのデザインを軸に設計を進められるようになりました。さまざまな意見が出てきても、方針と一致していない意見については「社内調整は自分が責任をもってするので、この方向で進めさせてほしい」と説得して取り下げていただくこともありました。
堀本:大きな責任を伴うため、プランの方向性を決めるのは容易ではありません。吉永さんがしっかり舵をとってくださったから、前に進むことができました。
波紋のように、人との“つながり”が広がる|「Link」が生み出す新しい空間



――最終的にどういったプランに辿り着いたのでしょうか?
堀本:コンセプトは「Link」です。空間の主役であるセミナースペースは、コーポレートアイデンティティを反映させたデザインにしました。目の前にある東京駅からこちらに向かって、波紋のように“つながり”が派生し、その波紋が重なり合いながら社内へと広がっていく。そんなイメージを、弧を描くような席配置で表現しています。
執務室は、随所に木やファブリックをあしらって心地よさを、エントランスはNTTデータ先端技術様らしい“未来感”を意識しました。白を基調とした空間に、グループ名のサインが浮かび上がる設計にしています。
吉永:エントランスはお客様からも大変好評で、「入った瞬間に“新しさ”を感じるオフィスですね」と言っていただけます。
現在、セミナースペースで新卒入社社員の研修を行なっているのですが、先輩社員たちが他部署の業務を知るきっかけにもなっています。空間が広く、イベントの日は出社人数が増えました。

堀本:部署を超えた偶然の出会いと会話を促すために、回遊性のあるレイアウトを取り入れました。個人で集中して作業する場とチームで協働する場を点在させて、“業務効率”と“コミュニケーション”を両立させています。
吉永: 回遊型のレイアウトのおかげで、これまで接点のなかった社員と顔を合わせる機会が増えて、ちょっとした会話を交わすようになりました。「横のつながりができた」と感じている社員も多く、社内の空気が少しずつ変わってきたと実感しています。半円をモチーフとしたコミュニケーションエリアは常設モニターがないので初めのうちは敬遠されるかもと懸念していましたが、移転直後から自然に使われはじめたのには驚きました。
「このプロジェクトは、このチームでなかったら成し得なかった」|三者が語る、それぞれの想い

――最後に、移転プロジェクトを終えた感想を、それぞれお聞かせいただけますか?
小川:新オフィスが社員のみなさんにどう受け止められるか、不安もありました。けれども開業当日に、吉永さんをはじめ、社員の方々の笑顔を見て、胸が熱くなりました。
NTTデータ先端技術様のご要望を的確にかたちにしてくださったのは、workkitだと思っています。堀本さんの豊富な知見と真摯な姿勢に、何度も支えていただきました。
吉永:楽しいイベントが終わったあとのような寂しさを感じつつも、ようやくスタートラインに立てた、そんな気持ちです。全社員に「うちのオフィスって素敵だよね」と思ってもらえなければ、プロジェクトが成功したとは言えません。
みなさんにご尽力いただいて完成したオフィスを、社員一人ひとりに愛着を持ってもらうこと。そして、次の飛躍へとつながる土台として、最大限活用していくことが、これからの私たちの課題だと思っています。
何より、このプロジェクトは、このチームでなければ成し得なかったと感じています。堀本さんのおかげで、私は覚悟を決められました。プロとして誠意を持って取り組んでくださり、心から感謝しています。
堀本:ありがたいお言葉です。私はいつもプロジェクトを進めるうえで、まず「一緒に取り組むメンバーの“人”を好きになること」を心がけています。お二人を好きになり、しっかりと意思疎通できたからこそ、このオフィスが完成したと思っています。
それぞれの立場から多くの“想い”が交錯した今回のプロジェクト。お互いを信頼し、覚悟を決めて三者が同じ方向を見据えたからこそ、企業らしさと人とのつながりを育むオフィスが実現しました。
オフィスは単なる職場でなく、“社員の未来を育てる場”であることを、あらためて実感しました。
