どこでも働ける時代に、「出社する理由」をデザインする|クライアント×PM×デザイナーの挑戦

インタビュー・レポート
カフェエリア

主要子会社の3社が統合し、新しい一歩を踏み出したオープングループ株式会社。
それを機に、新オフィスへの移転プロジェクトが始動しました。
「出社する価値を感じられるオフィスで、組織の一体感を育みたい」。
担当者様の想いに寄り添いながら、workkitのPMとデザイナーが伴走していきます。
本鼎談では、オープングループ株式会社の平岡さん、workkitのPM小西とデザイナーの下田が登場。プロジェクトにかけた想いや新オフィス完成までのプロセスを語り合います。

(Profile)

  • オープングループ株式会社
    デジタルマーケティング事業部 グループ広報兼務 マネージャー

    Risa Hiraoka

  • 株式会社ヒトバデザイン
    プロジェクトマネージャー

    Motoyuki Konishi

  • rinsix
    デザイナー

    Tomofumi Shimoda

顔を合わせず働く組織に|「コの字型オフィス」とリモートがもたらした分断

−−まず、オフィスを移転した経緯について教えてください。
 
平岡さん(以下、平岡):テナントの契約更新と同時期に3社の統合が決まり、コーポレート体制も含めてオフィスのあり方を一から見直すことになったんです。
また、以前のオフィスは「コの字型」だったので、両端に配置された部署同士の接点がほぼなく、出社しても部門間で顔を合わせにくい状況が続いていました。リモートワークの定着や、部署ごとに異なる出社日の影響もあり、組織としての一体感が薄れているといった課題も抱えていましたね。

−−新しいオフィスには、どのような機能や役割を希望されましたか?
 
平岡:出社する価値を感じられるオフィスにしたいと考え、自宅よりも生産性が高い環境や、業務の種類・内容に応じて使える可動式の席、社員が集まれるカフェスペースを希望しました。 

下田:空間への要望だけでなく、企業の想いやビジョンを語られていたのが、とても印象的でした。
 
平岡:統合した3社の社員が、立場を超えて協力し合いながら業務を進め、さらに成長していきたいという想いが強かったですね。

移転先のオフィスに設計されたカウンタースペース

出社の体験を豊かにする|人が集まるオフィスの仕掛け

−−ご要望を受けて、どのような提案をされたのでしょうか?
 
小西:オープングループ様はハイブリット勤務を実施されており、社員のみなさんがそれぞれ好きな場所で働ける環境でした。だからこそ、働く場所の選択肢の中心にオフィスを持っていきたいと考え、「出社したくなるオフィス」をコンセプトに掲げることに。
出社の際の体験を豊かにすべく、社員同士の距離を近づけ、自然と会話がはじまる空間を目指しました。
 
−−プロジェクトはどのようなステップで進められたのですか?
 
小西:レイアウトが決定するまでのプロセスを大切にしましたね。さまざまなパターンをご提案し、平岡さんに実際に働くシーンをイメージしていただきながら、一番自然に感じられるかたちを一緒に探していきました。
また、「ロゴに込めた想いやビジョンも空間で表現したい」とご要望をいただいていたため、切り取り方や空間への落とし込み方について、下田さんと何度も検討を重ねました。
 
下田:通常、レイアウトとデザインは一緒にご提案するのですが、今回はコンペではなかったので、レイアウトをしっかりと固めてからデザインに取りかかりました。きちんと段階を踏み、丁寧に進められたと思います。

偶然の会話をデザインする|ランダムな席配置の工夫

−−では、実際に社員同士の距離を近づけるために、どうアプローチされましたか?
 
小西:出社しても顔を合わせない社員様がいるとうかがったので、あえてデスクの配置をランダムにしたレイアウトをご提案しました。整然と並べてしまうと、通路ですれ違う顔ぶれがいつも同じになりがちです。
そこで、デスクの位置に変化をつけ、普段は接点のない部署の方とも、思わず会話が生まれる仕掛けをつくりました。
 
平岡:こういった席の配置方法があるなんて、想像もしていませんでした。規則的に並べた方が空間を効率的に使えると思っていたので、はじめてプランを見たときは驚きましたね。でも、なぜこの配置にしたのかを説明していただき、とても納得しました。
 
下田:こちらのビルは柱が多く、デッドスペースが生まれやすいつくりなんです。デスクをランダムに配置したおかげで、空間を無駄なく活用できました。
 
平岡:採用人数が想定よりも多く、20〜30席ほど追加になってしまって……。パズルを組み立てるかのように配置を検討しましたよね。
 
小西:4人の島があっても問題ないと判断していただき、なんとか実現できました。社員同士の距離を縮めるうえで欠かせないレイアウトでしたので、本当によかったです。

育つ木に重ねる想い|成長を象徴する空間デザイン

エントランス

−−“ビジョンの可視化”にあたっては、どのような空間設計を意識されましたか?
 
下田:企業の顔であるエントランスと、コミュニケーションの中心であるカフェスペースに植栽を入れました。木が伸びやかに育つように、オープングループ様が未来へと向かって成長していく姿を重ねています。また、カフェスペースには木製の家具やカウンターを採用し、空間に温かみをもたらしながら、成長するイメージをより感じていただける設えにしました。
 
小西:一部はフェイクグリーンですが、平岡さんが「できれば本物を」とこだわられていたので、メインの植栽には本物のグリーンを採用しています。
 
平岡:メンテナンスが大変なのは分かっていましたが、それでも「成長を目で見て楽しみたい」と思い、本物の植物をお願いしました。
とくに、エントランスにある大きな木は、ビジョンを体現するシンボルとして、どうしても取り入れたかったんです。

下田:ちょうど移転される少し前にロゴが変更されたこともあり、その配色をソファの張り地とラグにあしらい、“オープングループらしさ”を空間全体で表現しています。
 
平岡:ロゴマークにある曲線をイメージして家具を造作していただけたのも、本当にうれしかったです。
実はカフェスペースについては、社内で否定的な意見も多く、私自身も執務室のスペースを削ってまでつくるべきか悩みました。けれども、お二人がイベントスペースとしても活用するプランをご提案してくださり、無事実現できました。

出社したくなる空間の手応え|「一番使いやすいオフィス」を目指す、三者のこれから

――実際に完成したオフィスを使ってみて、何か変化はありましたか?
 
平岡:カフェスペースでコーヒーを淹れている間に世間話をしたり、上司にお菓子をごちそうになったり。以前のオフィスにはなかったコミュニケーションが、自然と生まれるようになりました。懐疑的だった社員からも「カフェスペースをつくって正解だったね」と声をかけてもらえて、本当にうれしかったです。
今年のはじめに社内調査をしたところ、出社率が10%ほど上がっていました。社員数が増えたのも要因のひとつではありますが、新オフィスによる効果も確かにあると実感しています。

――最後に、今回のプロジェクトを終えられた感想を教えてください。
 
下田:「会社としてもっと成長していきたい」という想いが、平岡さんから強く伝わりました。その熱意に応えたいとの気持ちで取り組めたので、私にとっても非常にやりがいのある、楽しいプロジェクトでした。
 
平岡:オフィスデザインに詳しくない私に対しても、丁寧に寄り添いながら伴走していただきました。打ち合わせ中に、私がポロっと言ったことも拾い上げてくださって。何ひとつ妥協せず、すべてに納得して進められました。お二人には感謝しかありません。
オフィスはひとまず完成しましたが、移転後も相談にのってくださり、とてもうれしく思います。これからもよろしくお願いいたします。
 
小西:平岡さんの熱い想いをうかがい、絶対に実現させたいと心から思ったプロジェクトでした。オフィスは完成がゴールではなく、移転後からがスタートです。実際に使ってみて不便なところがあれば改善し、使いやすいところは追加していく。そんなふうに少しずつ育てていく空間だと思っています。
これからも、みなさんにとって「一番使いやすいオフィス」になるよう、引き続きサポートさせていただきます。
 

クライアントの想いに応えるべく、PMとデザイナーが丁寧に空間をつくり上げた今回のプロジェクト。
「完成してからがスタート」というPMの言葉どおり、これからも三者が“想い”を共有しながら、理想のオフィスをともにつくり続けていきます。