適切なオフィスの通路幅はどのくらい?シーン別の目安と法律面の注意点まとめ

オフィスづくりのコツ

オフィスのレイアウトを考えるうえで、通路幅の設計は欠かせないポイントです。通路が狭すぎると社員同士のすれ違いがストレスになり、反対に広すぎるとスペースの無駄につながります。

通路幅は単なる「距離」ではなく、働く人の心理的な快適さやコミュニケーションのしやすさ、そして非常時の安全性にも大きく関わる重要な要素です。

本記事では、法令上の基準からシーン別の目安まで、最適な通路幅を確保するためのポイントを解説します。

オフィスの通路や通路幅を考える際に重要な3つの法律

オフィスの通路を計画する際に、まず確認しておきたいのが関連法規の基礎知識です。

通路幅そのものを明確に定めている法律は多くありませんが、安全で快適なオフィス環境を維持するための最低限の基準が、複数の法律によって定められています。

建築基準法では廊下の幅が規定されている

建築基準法では、建物内の「廊下」の幅について明確な基準が設けられています。ここで注意したいのは、この法律が対象としているのは「廊下」であり、オフィス内の動線としての「通路」そのものではないという点です。

具体的な基準は、廊下の片側に居室がある場合は1.2m以上、両側に居室がある場合は1.6m以上となっています。測定は壁の内側から行う「内法」で算出され、柱などの突起物がある場合は、その最も狭い部分で測る必要があります。

ただし、これらはあくまで安全を確保するための最低基準です。実際に快適で働きやすいオフィス空間を設計するためには、余裕を持った寸法設定を検討することが望まれます。

出典:e-GOV法令検索「建築基準法施行令第119条」

消防法では避難経路の確保が義務付けられている

消防法は、火災などの非常時における人命安全を目的とした法律です。オフィスの通路幅について明確な数値基準は定められていませんが、避難経路を常に確保しておくことが義務付けられています。

建築基準法で定められた廊下幅を満たしていれば、消防法上も原則として問題はありません。

ただし、実際の運用で通路上に荷物や什器を置くと、避難経路が塞がれてしまう恐れがあります。非常時に安全に避難できるよう、通路を常に確保し、物を置かない運用ルールを徹底することが大切です。

労働安全衛生規則では安全確保の対策が規定されている

労働安全衛生規則では、通路の最低幅に関する明確な数値は定められていませんが、安全を確保するための重要な基準が盛り込まれています。

とくに注目すべきは「通路面から1.8m以内の空間に障害物を設置してはならない」という規定です。これは、通路上のオブジェや高すぎる収納家具の設置を制限するもので、平面だけでなく高さ方向の安全にも配慮する必要があることを示しています。

背の高いパーテーションや装飾品が避難や移動の妨げにならないよう、立体的な空間設計にも注意を払いましょう。

出典:e-GOV法令検索「労働安全衛生規則第542条3項」

【執務室】オフィスの通路幅の目安

執務室は、従業員が一日の大半を過ごす中心的な空間です。寸法の根拠となるのは、成人の標準的な肩幅(約45~50cm)と、動作に必要なゆとりです。

メイン通路の幅

オフィスのメイン通路は、従業員が頻繁に行き交う主要な動線です。成人1人が通行する幅は60cmですが、快適に通行するには80cm程度が推奨されます。

2人がすれ違う場合には、最低でも120cmの幅が必要です。これは日本オフィス家具協会(JOIFA)が推奨する避難経路の基準にも該当します。より余裕を持たせる場合は、160cm以上を確保することが理想的です。

また、車椅子での通行を想定する場合、車椅子自体の幅はおよそ60cmですが、スムーズに移動するには80cm以上、方向転換には140cm以上、車椅子同士がすれ違う場合は180cm以上の通路幅が必要となります。

デスクとデスクの間の通路幅

デスク島とデスク島の横の間隔、つまりデスク列の側面に設ける通路は、1人がスムーズに通行できるよう最低でも約90cmの幅を確保する必要があります。

人の往来が多い場所や、メイン動線として利用する場合は120cm以上を確保すると安心です。さらにスペースに余裕がある場合は160cm程度を確保すると、すれ違いもスムーズで、避難経路としても十分な幅になります。

通路が狭すぎると、通行のたびに周囲の作業が中断され、業務効率の低下につながります。

こちらの記事では、オフィスの一人あたり面積について解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。

座席と座席の間の通路幅

背中合わせのレイアウト(背面型レイアウト)では、座席と座席の間が通路となるため、ほかのレイアウトよりも広い間隔が必要です。最低でも150~160cmを確保すべきとされています。

この寸法は、両側に人が座った状態で、間を1人が通り抜けられるようにするためのものです。人が頻繁に通行するメイン動線を兼ねる場合は、さらにゆとりを持たせて180cm以上が推奨されます。

この程度の幅があれば、誰かが着席していても背後を通常歩行で通り抜けられ、椅子のぶつかり合いも避けられます。

座席背面が壁の場合の通路幅

座席の背面が壁に面している場合、通路として人が通るかどうかで必要な幅が変わります。

通行がない場合、つまり座席利用者のためだけのスペースであれば、最低85cmが目安です。職務内容によっては、背後に人が通ることを望まない場合もあり、その際はあえてスペースを狭くして通りにくくすることもあります。

一方、通路を兼ねる場合は、着席中の人の後ろを無理なく通り抜けられるよう、最低120cmを確保する必要があります。140cm程度あれば着席・離席もスムーズになり、さらにメイン通路として使う場合は160cm以上を推奨します。

デスクと収納棚・コピー機の間の通路幅

収納棚やコピー機を設置する場合、扉の開閉や機器の操作に必要な動作空間を考慮する必要があります。

収納棚が座席の背後にある場合、着席スペース(50cm)に扉や引き出しの可動域と動作空間(100cm)を加え、デスクから収納棚まで最低150cm以上を確保します。座席の背後が主要な動線を兼ねる場合は180cm以上が推奨されます。

デスクの横に収納棚を設置する場合は、通常歩行に必要な幅(60cm)と立位での動作域(50cm)を加え、最低110cmを確保します。コピー機の場合も同様に、デスクの背後なら150cm以上、横なら110cm以上が目安です。

なお、収納棚は開き戸ではなく引き違い戸(スライド式)を選ぶことで、扉の開閉スペースが不要になり、通路幅を狭くできます。

【会議室】オフィスの通路幅の目安

会議室では、人数や会議の形式によって最適なレイアウトが異なります。

対面形式の会議室

テーブルを挟んで向かい合わせに座る対面形式は、一般的な会議室レイアウトです。

A. 4~6人の部屋の場合

少人数の会議室では、入口からテーブルまでの動線は扉の開閉を考慮し最低90cmを確保します。着席時の動線は、椅子を引いて座る・立ち上がる動作のための空間で、肘付きチェアを使用する場合は最低90cmを確保しておくと快適です。

テーブルの端(入口とは反対側)も最低90cmあれば通路として機能しますが、モニターやホワイトボードを設置する場合は90~120cm程度を確保すると、発表者が前で動作しやすくなります。

B. 8~12人の部屋の場合

10名前後で利用する会議室では、座席の後ろと壁の間隔は、着席状態でも背後を通常歩行で通り抜けられるよう、最低120cm以上を確保します。入口とは反対側も最低90cm、モニター設置なら90~120cm確保します。

コの字型レイアウトの会議室

モニターやプロジェクターを使用するプレゼンや報告会に適したコの字型レイアウトでは、動線となる通路は、着席状態でも後ろを通行できる幅として、いずれも120cm以上を推奨します。

ただし、部屋の奥にあたる①の部分は動線としての重要度が低いため、100cm程度でも機能します。

正面のスペースは、モニターの場合90cm、ホワイトボードの場合120cm程度を設けます。司会や発表者が動作するためにも、正面側は最低限120cmの確保が望ましいでしょう。

並列型の会議室

皆が前を向いて座る並列型(スクール形式)レイアウトは、研修やセミナーに適しています。

前方のスペースは、講師や発表者の動作空間を考慮して、ホワイトボードやモニターから机まで120cm以上を確保します。壁から最前列デスクまでと、入口付近の通路は、100~120cm程度の余裕が望ましいでしょう。

デスクの左右間隔は最低で60cm、前後間隔④は着席・離席の動作域を含め80cm以上が推奨されます。壁と最後列の机までの間隔は、最低で100cm、できれば120cm以上確保すると、着席時の通り抜けがスムーズです。

オフィスの限られたスペースを有効活用するには?

適切な通路幅を確保しながら、限られたオフィス空間を最大限に活用するには、いくつかの工夫が必要です。

まず、優先度の低い通路であれば、幅を10〜15%ほど狭めることもひとつの方法です。ただし、狭くしすぎると心理的な圧迫感や動線の滞りを招くため、業務に支障のない範囲にとどめることが大切です。

家具の選定も重要なポイントです。収納棚の扉を開き戸から引き違い戸に変更すれば、扉の開閉スペースを削減できます。また、標準的なデスク(幅120cm×奥行70cm)よりもコンパクトなサイズ(幅100cm×奥行60cm)を選ぶことで、デスク1台あたりの専有面積を減らせます。

OA機器の見直しも有効です。小型の複合機を導入することで設置スペースを節約でき、さらにペーパーレス化を進めて書類保管を減らしたり、外部の保管サービスを活用することで、収納家具そのものを減らすことも可能です。

これらの工夫は、限られたスペースの中で最適なレイアウトを設計する際にプロのデザイナーが実践している手法です。オフィス全体の働きやすさと効率性を両立させるためには、スペース配分のバランスを意識した設計が求められます。

まとめ

オフィスの通路幅は、安全性と快適性の両立に欠かせない重要な要素です。建築基準法や消防法といった法的要件を満たすことは最低限の条件であり、そのうえで従業員が快適に働ける環境を実現するためには、場所や用途に応じた適切な幅の設定が必要です。

通路幅の設計は、単に寸法を守るだけでなく、従業員の動線やコミュニケーション、心理的な快適さにも大きく影響します。適切な幅を確保することで、業務効率の向上や自然な交流の促進、そして「出社したくなるオフィスづくり」にもつながります。

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