会社の席配置の際、役職者にはどんな位置が適切?パターン別に解説

オフィスづくりのコツ

オフィスレイアウトを検討する際、役職者の席配置は非常に重要な要素といえます。適切な位置に配置することで、従業員のストレス軽減やコミュニケーションの活性化につながるでしょう。

本記事では、レイアウトパターン別に役職者の適切な席配置を解説し、配置を決める際のコツや注意点もご紹介します。

会社の席配置をする際に把握すべき役職者の適切な席の位置

役職者の席配置は、オフィス全体の働きやすさを左右する重要な要素です。レイアウトパターンによって最適な位置は異なりますが、いずれのパターンでも全体を見渡せる配置を心がけることが大切です。

ここでは、代表的な4つのレイアウトパターンにおける役職者の適切な席配置をご紹介します。

対向型

対向型は、デスクを向かい合わせに配置するレイアウトです。島型レイアウトとも呼ばれ、多くのオフィスで採用されている形式です。

対向型における役職者の席は、島の端に配置するのが基本となります。従業員のデスクと90度になるよう配置することで、島全体を見渡せる構造になります。この配置であれば、役職者は部下の様子を把握しやすく、部下からも相談しやすい環境を作れます。

ただし、島の端は2か所ありますが、メイン通路の反対側に配置することが重要です。通路側に配置すると、ほかの従業員が背後を行き来するため、機密情報の漏洩リスクが高まります。通路から離れた位置であれば、役職者のデスク上が見えにくくなります。

対向型は部署やチームごとにコミュニケーションを取りやすく、スペース効率もよい点がメリットです。

背面型

背面型は、デスクを背中合わせに配置するレイアウトです。お互いに背中を向けた状態となり、振り向けばすぐにコミュニケーションが取れます。

背面型における役職者の席は、島の端に配置する方法と、従業員の席と独立させて設置する方法があります。島の端に配置する場合は対向型と同様に、通路から離れた位置を選びます。独立させて設置する場合は、全体を見渡せる少し離れた場所に配置します。

背面型で最も注意すべきなのは、役職者が従業員に背中を向けた状態にならないよう配慮することです。背中を向けた状態では、機密情報を扱う際にデスク上が見えやすくなり、セキュリティ上のリスクが高まります。

背面型は、プライバシーを確保しながらコミュニケーションも取りやすい点がメリットです。従業員は他人の視線が気になりにくいため、業務に集中しやすい環境を作れます。

同向型

同向型は、すべてのデスクを同じ方向に配置するレイアウトです。並列型とも呼ばれ、学校の教室や講義室のような配置になります。

同向型における役職者の席は、チームの最前列または最後尾に配置するのが一般的です。どちらの場合でも、従業員のほうを向いて配置します。

最前列に配置する場合は、従業員全員の様子を把握しやすい点がメリットです。ただし、従業員は常に役職者の視線を感じるため、プレッシャーになる可能性があります。

最後尾に配置する場合は、プレッシャーは軽減されますが、表情や細かな様子は把握しにくくなります。

同向型は、コールセンターや窓口業務など、個人の業務に集中する必要がある職種に適しています。全員の方向が同じであるため、従業員の注意が散漫になりにくい点がメリットです。

フリーアドレス型

フリーアドレス型は、従業員の固定席を設けず、自由に席を選べるレイアウトです。その日の業務内容や気分に応じて座席を選択できるため、柔軟な働き方を実現できます。

フリーアドレス型における役職者の席は、固定するか流動的にするかをあらかじめ決めておく必要があります。役職者の席を固定する場合は、オフィスの入り口付近や中央に配置するのがおすすめです。

入り口付近であれば従業員が出入りする際に自然なコミュニケーションが生まれやすく、中央であれば全体の様子を把握しやすくなります。

役職者の席を固定することで、従業員が相談したいときに探す手間が省けます。在席状況を一目で確認できるため、業務の効率化にもつながります。さらに、書類の紛失リスクを減らせるため、セキュリティ上も効果があります。

一方、役職者の席も流動的にする場合は、座席管理システムの導入が必要です。座席の使用状況や役職者の所在地がわかるシステムを導入することで、チーム内のコミュニケーションを取りやすくできます。

職種別役職者の適切な席配置

役職者の適切な席配置は、職種によっても異なります。デスクワーク中心の職種と外勤やテレワークが多い職種では、求められる配置が大きく変わります。
ここでは、職種別に役職者の適切な席配置をご紹介します。

デスクワーク中心の職種

総務や経理、開発職など、デスクワークが中心となる職種では、固定席を設けるのが一般的です。書類量が多く、資料の管理が重要となる業務では、固定席のほうが業務効率が上がりやすくなります。

デスクワーク中心の職種における役職者の席配置は、対向型や背面型、同向型などのレイアウトが適しています。役職者は島の端や全体を見渡せる位置に配置し、必要に応じてサポートや相談対応ができる環境を整えます。

また、固定席のオフィスでは、別途ミーティングスペースを設けることをおすすめします。役職者と従業員が気軽に相談できるエリアがあれば、コミュニケーションが取りやすくなります。

ラウンドテーブルやスタンディングデスクなど、柔らかい雰囲気の家具を選ぶことで、従業員が話しかけやすい環境を作れます。

外勤やテレワークが多い職種

営業職やクリエイティブ系など、外勤やテレワークが多い職種では、フリーアドレス型のレイアウトが適しています。固定席を設けないことで、オフィスの面積を有効活用でき、省スペース化につながります。

外勤やテレワークが多い職種における役職者の席配置は、固定することをおすすめします。役職者の席が流動的だと、従業員が相談したいときに探す手間がかかり、業務効率が低下します。

役職者の席は、オフィスの入り口付近や中央に配置しましょう。入り口付近であれば、従業員が出入りする際に自然なコミュニケーションが生まれやすくなります。中央であれば、出社している従業員の様子を把握しやすくなります。

外勤やテレワークが多い職種では、在席率に変動があるため、ABWの導入も検討する価値があります。この場合も、役職者の席は固定し、従業員が相談しやすい環境を整えることが重要です。

役職者の席の配置が重要な理由

役職者の席配置は、単なる配置の問題ではなく、チームのパフォーマンスや組織全体の生産性に大きな影響を与えます。
ここでは、役職者の席配置が重要な理由を3つご紹介します。

近すぎると部下のプレッシャーになるため

役職者の席が近すぎると、部下は監視されているように感じ、必要以上に緊張してしまいます。常に上司の視線を意識しながら働くことになるため、本来のパフォーマンスを発揮できなくなる可能性があります。

部下がプレッシャーやストレスを感じる環境では、業務効率が低下します。集中力が続かなくなったり、ミスが増えたりするなど、さまざまな悪影響が出る恐れがあります。

とくに、役職者と部下の席が向かい合っている配置では、部下は常に役職者の視線を感じるため、大きなストレスとなります。近すぎると逆効果になってしまうため、適度な距離感を保つことが大切です。

遠すぎるとコミュニケーションが取りにくくなるため

一方で、役職者の席が遠すぎると、コミュニケーションが取りにくくなります。物理的な距離があると、部下は役職者に声をかけにくくなり、相談や報告が滞ってしまいます。

役職者と部下の間でコミュニケーション不足が続くと、業務の進捗に遅れが生じたり、トラブルが発生したりするリスクが高まります。役職者は部下の状況を把握しづらくなり、適切なタイミングでサポートやアドバイスができなくなります。

お互いに気軽な相談ができる距離感を保つことが重要です。役職者の目が届きやすい範囲に部下の席を設け、部下から役職者に話しかけやすい配置になるよう工夫しましょう。

機密情報を保護するため

役職者は、経営戦略や人事情報など、一般従業員には閲覧権限のない機密情報を扱うことが多くあります。役職者の席が部下から見えやすい位置にあると、パソコンの画面や書類の内容が偶然見えてしまう可能性があります。

偶然見えた情報であっても、情報漏洩につながる危険があります。本来は見えてはいけない情報が部下の目に入ることは避けるべきです。

役職者の席を配置する際は、部下からデスク上が見えにくい位置を選ぶことが大切です。デスクの向きを調整したり、パーテーションを設置したりするなどの工夫が求められます。

とくに、メイン通路に面した位置は避け、通路から離れた場所に配置することで、情報漏洩のリスクを減らせます。

役職者の席を決める際のコツ

役職者の席を決める際は、いくつかのコツを押さえることで、より働きやすい環境を実現できます。
ここでは、役職者の席を決める際の5つのコツをご紹介します。

適切な距離感を意識した配置にする

役職者と部下の席は、近すぎず遠すぎない適切な距離を保つことが最も重要です。仕事をする上では、120cmから360cmの対人距離が適切だといわれています。

この距離であれば、役職者は部下の様子を把握でき、部下も役職者に声をかけやすくなります。お互いの顔が見える範囲であることが大切で、表情や態度から悩みを抱えているかどうかなどを察知できます。

従業員の働きやすさを考えると、1人あたり2.5坪から4坪程度の面積を確保することが理想です。物理的な距離を適切に調整することで、双方が働きやすい環境を作ることができます。

こちらの記事では、オフィスの一人あたり面積について解説しています。
必要な広さや算出方法も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

コミュニケーションエリアを設置する

役職者の席近くに、ミーティングスペースやフリースペースなどのコミュニケーションエリアを設置することをおすすめします。ちょっとした打ち合わせや休憩に利用できるエリアがあれば、気軽にコミュニケーションが取れる場になります。

コミュニケーションエリアは、オフィスの空きスペースにテーブルや椅子を設置するだけで完成するため、手軽に導入が可能です。人が自然と集まる場所になるよう、ラウンドテーブルなど柔らかい雰囲気の家具を選びましょう。

簡単なミーティングスペースには、立って会話ができるスタンディングデスクもおすすめです。立ったまま会話をすることで、自由な姿勢や動きが取れて、部下の緊張感をほぐす効果が期待できます。

上座・下座にこだわらない

従来のオフィスでは、上座を意識して役職者の席をオフィスの奥に配置するケースが一般的でした。出入り口から遠い席を上座、出入り口に近い席を下座とする風習があり、これをオフィスにも取り入れていたためです。

しかし、上座・下座にこだわりすぎると、働きやすさを損なう可能性があります。オフィスの奥に役職者の席を配置すると、部下は監視されているように感じやすく、役職者に話しかけに行くハードルも上がってしまいます。

近年では、出入り口付近や中央に役職者の席を配置することも珍しくありません。コミュニケーションの取りやすさを重視するなら、固定観念に縛られない配置を検討しましょう。

プライバシーを確保する

役職者の業務資料には、従業員の目に触れるのが不適切なものが少なくありません。コミュニケーションの取りやすさは確保しながら、外部からの視線にさらされない配置を意識することが重要です。

デスクの向きを調整したり、パーテーションを設置したりするといった工夫が求められます。ただし、パーテーションを多用しすぎると、コミュニケーションが取りにくくなるため注意が必要です。

対向型では背の低いローパーテーションを使用するなど、デスク上の資料やパソコンの画面が見えない程度のタイプを選ぶことをおすすめします。また、役職者が部下に背中を向けた状態にならないよう配慮することも大切です。

部署間の連携を考慮する

オフィス全体の効率を上げるためには、各部署の役職者同士が行き来しやすい配置を心がけることも重要です。ほかの部署のリーダーと連携を取ることは、役職者の重要な業務のひとつです。

チーム内だけでなく、部署間のコミュニケーションを取りやすくすることで、組織全体の協力体制を強化できます。関連部署は同じ執務エリアにまとめ、役職者同士の席を近くに配置するといった対応が考えられます。

部署間の連携が必要となることが多い場合は、役職者をオフィスの中央に集約して配置する方法もあります。ただし、集約型の配置にはある程度のスペースが必要となります。

オフィスの席配置を変更する際の注意点

組織改革や移転などの兼ね合いでオフィスの席配置を変更する場合は、位置以外にもさまざまな点を考慮する必要があります。

ここでは、オフィスの席配置を変更する際の4つの注意点をご紹介します。

従業員へ配慮する

席配置を変更する際は、従業員への配慮を忘れてはいけません。突然の変更は従業員に混乱やストレスを与える可能性があるため、事前に十分な説明と準備期間を設けることが重要です。

席配置の変更は、従業員の働き方に大きな影響を与えます。慣れた環境から変わることに抵抗を感じる従業員もいるため、変更の目的や期待される効果を丁寧に説明しましょう。

また、席配置の変更後は、従業員の意見やフィードバックを積極的に収集することをおすすめします。実際に使用して感じた問題点や改善点を把握し、必要に応じて調整を行うことで、より働きやすい環境を実現できます。

自席の荷物をなくす(フリーアドレス化する場合)

フリーアドレス化する場合は、自席の荷物を整理することが必要です。固定席をなくすためには、個人の荷物を保管するスペースを別途用意しなければなりません。

フリーアドレス化を成功させるためには、役職者から率先して自席の荷物をなくすことが重要です。役職者が率先して取り組むことで、従業員も前向きに変化を受け入れやすくなります。

ロッカーやキャビネットを設置し、個人の荷物を保管できるスペースを確保しましょう。書類の電子化を進めることで、紙の書類を減らし、保管スペースを最小限に抑えることも効果的です。

パーテーションの使用頻度を考慮する

パーテーションはプライバシー確保に役立ちますが、使用頻度を考慮することが大切です。集中が必要な業務や機密情報を取り扱う場合には有効ですが、多用しすぎるとコミュニケーションが取りにくくなります。

業務内容に応じて、パーテーションの使用頻度を判断しましょう。個人ワークが中心であればパーテーションを活用し、チームワークが必要であればオープンな配置にするなど、柔軟な対応が求められます。

パーテーションの高さにも配慮が必要です。完全に視界を遮る高いパーテーションではなく、適度に視線を遮る程度の高さを選ぶことで、プライバシーを確保しながらコミュニケーションも取りやすい環境を作れます。

オフィス家具は将来を想定しながら検討する

オフィス家具を変更する場合は、将来性まで想定して検討することが重要です。従業員の増減やオフィス移転などにより、今回採用するレイアウトから変更しなければならない可能性も十分にあります。

レイアウトを変更するたびにオフィス家具を入れ替えると、コスト負担が大きくなります。中長期の事業計画や経営計画を確認し、レイアウト変更がスムーズにできる汎用性の高いオフィス家具を選ぶことをおすすめします。

可動式のデスクやチェアを選ぶことで、レイアウト変更に柔軟に対応できます。また、モジュール式の家具を選べば、組み合わせ次第でさまざまな配置が可能になります。

こちらでは、workkit by HITOBA DESIGNの施工事例をご覧いただけます。

まとめ

役職者の席配置は、オフィス全体の働きやすさやコミュニケーションの質を左右する重要な要素です。レイアウトパターンや職種によって最適な位置は異なりますが、適切な距離感を保ち、コミュニケーションを取りやすい環境を整えることが大切です。

限られた空間のなかで、組織のつながりや働く人の動き、ワークスタイルの多様化まで考慮して配置を最適化するには、繊細な設計視点が必要です。業務環境だけでなく、これからの組織の姿を見据えたデザインが重要になります。

workkit by HITOBA DESIGNでは、オフィスの内装設計から施工までをワンストップで対応しています。

プロジェクトの目的や規模に応じて最適なチーム体制を構築し、社外パートナーを含む経験豊富なデザイナーを柔軟に配置することで、多角的な視点から最適なプランをご提案いたします。

オフィスの席配置でお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

workkit by HITOBA DESIGNでは、オフィスデザインやリニューアルに関する相談を受け付けております。
お困りの際にはぜひお問い合わせください。