就職先を求めて活動する就活生や転職者は、理想と現実の間で悩みが尽きないでしょう。一方で、採用する側である企業も、優秀な人材確保が思うようにいかず困っているケースもあります。せっかく雇用しても、早期離職が続くなどの課題に苦しんでいるかもしれません。
テレワーク・リモートワークの定着で、オフィスに求められるものも変わっています。給与面や福利厚生を改善しても解決しないようであれば、オフィス環境の見直しをしてみてはいかがでしょうか。ワーカーが心地よく感じ、働きたくなるオフィスデザインをすれば、採用力が高まるでしょう。
そこで本記事では、就活者が求める要素を詳しく解説し、採用力のあがるオフィスデザインのポイントをご紹介します。ワーカーの悩みを解消して、生き生き働ける環境づくりのヒントを見つけてください。
テレワーク・リモートワークが、広く一般的になってきたなかで、メリット・デメリットも見えてきました。これから初めて社会へ出る就活生にとっては、テレワーク・リモートワークも踏まえた環境で働く不安も大きいでしょう。では、そのような時代において就職活動を行っている学生は、オフィスに何を求めているのでしょうか。
厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果 若者の離職理由」のなかで、「仕事上のストレスが大きい」「会社の将来性・安定性に期待が持てない」という声が上位に挙がっています。
また、マイナビが行った「2023年卒大学生活動実績調査(3月)」では、学生が企業に安定性を感じるポイントとして、福利厚生の充実に次いで多かった理由は「安心して働ける環境である」でした。
就職活動中の学生や社会に出たばかりの若い世代にとって、将来にわたり安心して働けるという条件が企業に求められていることがわかります。
安全性が担保されないオフィスでは、常に大きなストレスがワーカーの負担になります。では、具体的に安心できるオフィスとは、どのような環境を指しているのでしょうか?身体的な安全性はもちろん大切です。ケガや災害などを減らすために、整理・整頓・清掃・清潔の「4S」を維持しやすい環境設計をしなければいけません。
しかし、それだけで「安心できる」といえるでしょうか。近年、テレワーク・リモートワークの急速な普及により、コミュニケーション不足によるストレスなどが問題視されました。
「すぐに相談できない」「孤独を感じる」などの精神的な不安がミスを誘発し、業務効率を下げてしまうケースもみられます。なによりも、ワーカーのストレスが増え、心身の健康を損ねる事態になりかねません。
「ラーニングコモンズ」制度の導入を積極的に取り入れる大学も増えました。学生が、積極的な交流を図りながら学ぶ体制に慣れている背景も影響しているかもしれません。コミュニケーションがとりにくいオフィス環境を、より不安に感じる可能性があります。
多様性のある価値観を持つ現代の若者にとって、「心理的安全性」が確保されている環境であることも重要なポイントです。心理的安全性とは、1999年にハーバード大学教授により提唱された概念です。心理的安全性が担保された環境とは、「対人関係のリスクがなく安心できる場所であると、メンバーが共通認識として持っている状態」を指しています。
心理的安全性を考えるときに、対人関係のリスクは主に次の4つの要因から生まれるとされました。
・無知だと思われる不安
・無能だと思われる不安
・邪魔をしていると思われる不安
・ネガティブであると思われる不安
これらの不安がないような環境を作ることが、働きやすく「安心できるオフィス」と言えます。
多くの学生は、前向きな気持ちで働く意欲を持っています。また、会社へ能力を還元するだけでなく、自分自身の多くの学びや成長を期待しているのではないでしょうか。先輩ワーカーがポジティブな気持ちを持ち、積極的な姿勢で働いている環境は、就職活動をしている学生に魅力的に感じられるでしょう。
オフィスデザインと聞けば、おしゃれでハイセンスな内装・トレンドを意識したインテリアをイメージする方もいるでしょう。見た目や雰囲気のよさはオフィスの魅力の一つですが、ワーカーにとって大切なのはそれだけではありません。ここでは、具体的にワーカーが求めるオフィスデザインに必要な要素を解説します。
まずは、業務に集中できるかどうかが重要なポイントとなるでしょう。取り組む作業内容に適したデスクレイアウトを計画してください。整理整頓がしやすい収納やコンセントの位置も必要です。
また、空調や照明は快適に業務に取り組めるかどうかに大きくかかわります。寒さ・暑さは個人差があり、すべての人にちょうどよい状態にするのは難しいかもしれません。フリーアドレス制を導入して、個々に快適な場所を選択できるようにするなどの工夫も必要です。
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コロナ禍で一気に普及したテレワーク・リモートワーク。現在では、出社とテレワーク・リモートワークを交互に行うハイブリッドワークも一般的になりました。天候状況や交通機関の影響によって出社が厳しい場合は、自宅で安全に働けるなどのメリットもあります。
一方でオンライン会議が増え、人の多いオフィスでは声が反響して落ち着いて会話ができないなどのデメリットも生まれています。TELブースを設置するなど、さまざまな働き方に対応できる環境が必要です。
心理的安全性を確保するためには、コミュニケーションがしっかり取れる環境であることが重要です。話しやすい環境、気持ちを切り替えて休める休憩スペースがあるとよいでしょう。逆に、人目が気になって集中できない状況があるかもしれません。人の気配を感じながらも個別で利用できる空間を、作ってみてはいかがでしょうか。
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ダイバーシティ=多様性を学ぶ機会の増えた現代、価値観の多様化を認める環境であることもオフィスデザインにとって大切な要素です。
オフィスで必要とされるダイバーシティ経営は「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」(引用:経済産業省)とされています。実際にオフィス計画に組み込むだけでなく、日ごろから性別、人種、国籍、障がいなど様々な視点から、価値観の多様性について考える機会を設けることも必要でしょう。
業務の遂行を通して、自分自身の成長や学びに繋がる機会があれば、ワーカーのモチベーション向上に繋がります。日々の仕事で得るものもありますが、研修制度や先輩との交流を通して様々な学びがあるでしょう。そのために、広く交流を図れるフリースペースや研修のしやすいミーティングスペースを設けることをおすすめします。関連書籍を集めたライブラリー併設の休憩スペースなども、利用価値があるのではないでしょうか。
オフィスデザインをするときに、企業のストーリーやビジョンを伝えられるかどうかもカギとなります。ワーカーにとって働きやすい環境であると同時に、社員が一丸となって同じ方向に向かって活動する必要があります。コーポレートカラーを取り入れたり、アートワークで企業理念を伝えたりといった工夫をしましょう。
採用力アップに繋がるようなオフィスデザインの事例をご紹介します。
コロナ禍で働き方が変化したことをきっかけに、オフィス移転を行った株式会社アットイン様。繋がりを意識したコンセプトをデザインに取り入れました。エントランスから執務エリアの奥までを横断するカウンターやガラスを使用し、見渡せるようになっている点など、繋がりを感じられるようになっています。
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株式会社アトリエ様のオフィスは、フロアを二つにわけています。フリーに使えるワークラウンジと執務に取り組むワークスペースは、それぞれの利点をいかして活動できるでしょう。ラウンジエリアでは、社内外の積極的な交流を図れるパブリックスペースです。一方、白を基調としたシンプルな内装のワークスペースは、すっきりと洗練された印象で集中して仕事に向き合えます。
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ダノンジャパン株式会社様のオフィスでは、TELブースや集中席、フリースペースが設けられ、コミュニケーションが円滑に取れるように設計しました。在宅勤務を含める新しい働き方にも、柔軟に対応できるオフィスです。インクルーシブな企業文化(すべての従業員がお互いを尊重しあえる職場)に根付いた、働きやすい環境設計の一つとして、盲導犬利用者に配慮したレイアウトを採用しています。
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オフィスデザインは、ワーカーが心地よく働ける環境を整えるために、様々な視点からアプローチします。業務効率をあげるだけでなく、時勢にあわせた働き方にフィットしたオフィスは、実際に働いている人のモチベーションを上げて活気ある雰囲気を作ってくれるでしょう。
そのようなオフィスは、就職活動をしている人たちにも魅力として映ることは間違いありません。求める人材とのマッチングをよりよくし、採用率を上げるためにオフィスデザインの見直しを検討してみてはいかがでしょうか。