快適なオフィスの重要な要素の一つに「照明」があげられます。取り組む仕事の内容によって、必要な照明は変わるでしょう。本記事では、パソコンでの作業が多いデスクワーカーにとって最適な照明計画について解説します。
また照明は、オフィスの雰囲気を左右するアイテムです。かつては天井面に一律の光源が並び、オフィス内が一定の明るさにコントロールされていました。しかし近年、より奥行き感のある照明計画がオフィスに取り入れられるようになっています。そこで、オフィスの照明計画の多様化している様子を、事例とともにご紹介します。
オフィスは、デスクワーク以外にも、会議や休憩など様々な過ごし方が想定されるでしょう。部屋の利用目的が異なると、必要な照明も変わってきます。ここでは、オフィスの照明計画で気をつけるとよいチェックポイントを詳しく見ていきます。
まずは、ワーカーが仕事に集中できるかどうかが重要なポイントです。パソコンでの作業がメインワークのケースを考えてみましょう。部屋全体と手元の明るさの両方をコントロールする必要があります。これを「タスク&アンビエント照明」といいます。
なかには、部屋全体が暗くても、パソコン画面の光だけで作業を続ける方もいるのではないでしょうか。作業に支障がないとしても、目の疲労を引き起こしやすくおすすめできません。眼精疲労は、腰痛・肩こり・頭痛などの原因にもなり、深刻な健康被害につながります。
そこで、ディスプレイと手元の明るさにできるだけ差がないように、モニターライトや手元ライトを用意するなどしましょう。手元に影ができない・光源が直接目に入りまぶしくないといったストレス要因をなくすために、セードの向きが調整できるような器具を選んでください。
また、休憩スペースでは、リラックスできる照明計画が大切です。光の色や照度をコントロールして、心地よいと感じられる空間づくりを目指してみてください。具体的な照明の選び方は、後ほど詳しく解説します。
作業に適した照明だからといって、無機質な雰囲気では心地よさを感じにくいのではないでしょうか。オフィス空間にもなじむデザインの照明器具を取り入れると、インテリア性が高まります。
しかし、好みのデザインの照明だからといって、やみくもに選んではいけません。十分な明るさが確保できない、かえって目立ってしまい仕事場にふさわしくないなどのデメリットもあり得るからです。
執務スペース・応接室・会議室・休憩スペースなど、場所や用途によってデザインやスタイルを選びましょう。
SDGs・サステナブルなどの理念や考え方が普及してきました。近年では、地球環境や人権平等は企業の経営にとっても重要な項目と言えるでしょう。オフィスの照明計画においても、環境配慮の観点から省エネルギーである必要性が高まっています。
消費電力の少ないLED電球を使用する、タスク・アンビエント照明とする(部屋全体の明るさと手元の明るさを併用して、照明量をコントロールする)など、エネルギーの負担を減らす計画が大切です。
また、光源そのものだけでなく、反射する光を利用する方法もあります。壁や床が暗いと光が吸収されて暗く感じやすいため、部屋全体の明るさを確保するために壁や天井を白くし、明るい色の床材を選ぶなどの工夫も必要でしょう。
ここまでは、オフィスの照明計画をするときに意識するとよい点を解説しました。では、具体的な照明器具はどのように選ぶとよいのでしょうか。オフィスに必要な照明の選び方のポイントをご紹介します。
照明の明るさは「ルーメン」「ルクス」「カンデラ」などで表されます。それぞれの意味は次の通りです。
● ルーメン(Lm):光束(光源から放たれる光の量)を表す単位
● カンデラ(cd):光度(光源から出る光の強さ)を表す単位
● ルクス(Lux):照度(照らされた場所にどれだけ光が入っているか)を表す単位
照明計画をする際に基準となる単位は「ルクス(Lux)」です。光源から離れるほど、数値が小さくなります。JIS照明基準総則では、オフィスに必要な「奨励照度」は500ルクスから750ルクスとされています。奨励照度は、部屋全体の平均的な明るさではなく、作業面における数値です。事務作業であれば、机上面として捉えるとよいでしょう。
厚生労働省では、テレワーク環境での必要な明るさは「300ルクス以上」としています。地下鉄の座席上で350ルクスほどというデータもあるため、体感としてはやや暗いかもしれません。明るさの感覚は個人差もあることから、手元の照明などで明るさを補完するようにしてください。
明るさの感覚は、電球の「色」によっても変わります。照明の色は「色温度(単位:ケルビン・K)」で表されます。
● 数値が小さい(色温度が低い)=白っぽい色
● 数値が大きい(色温度が高い)=赤味を帯びた色
一つのLED電球で色温度を段階的、あるいは無段階で調整できるものもあります。一般的に単色で販売されているLED電球は、次の4種類です。メーカーによって色温度に違いがありますが、参考になる数値もご紹介します。
電球色:2700~3000ケルビン
温白色:約3,500ケルビン
昼白色:約5,000ケルビン
昼光色:6200~6500ケルビン
家庭では、リビングなどくつろぐためのスペースには電球色などのあたたかい色が好まれます。しかし、オフィスの作業スペースには不向きかもしれません。場所や用途にあわせて、適切な色温度を選ぶようにしてください。
オフィスに適切な明るさ・色味は、その場所の用途などによっても変わります。作業をするスペースは白色系の「昼白色」「昼光色」、休憩スペースや応接室は「温白色」「電球色」などのあたたかみがある色が向いているでしょう。会議室では、議論をするシーンと照度を落として映像や画像を確認するシーンなどにわかれるかもしれません。そのように、同じ場所でも必要な照度や色温度がかわることもあります。
また、時間帯・季節によって光をコントロールする、タイマー制御の照明調光システムの導入も注目されています。一日を通して、太陽の色が移り変わるように時間によって照明の色温度を変化させるというものです。
これまでの照明は明るさを中心に計画されてきましたが、これからは色温度や場所・用途にあわせた照明器具の選定など、複合的に考える必要があります。LED電球の進化に伴い、調光・調色システムも発達しています。システムを上手に取り入れて、よりよいオフィス空間を作りましょう。
オフィスの照明計画は、ワーカーが快適に仕事に取り組むだけでなく、対外的にも企業の魅力を伝える要素となります。ここでは、WORK KITが手掛けた、照明にこだわったオフィス事例をご紹介します。
オブジェのようにデザイン性の高い照明器具をエントランスに設置し、印象的な演出をした事例です。またカウンタースペースにも、目を引くデザインのペンダントライトを設置しました。カフェのような空間を作り上げています。
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カラフルな壁面デザインとシンプルながら目を引くデザインの照明が、来訪者を迎えるエントランス。7つの照明によって天井面にリズムが生まれ、訪れる人をわくわくさせる空間になっています。
フリースペースには、ナチュラルな木質家具とパステルカラーの家具・北欧家具ブランドMuuto(ムート)の照明を取り入れ、やさしい雰囲気のなかで、リラックスしながら仕事をしたり、休憩をとったりできるでしょう。
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エントランスから続くフリースペースには、和傘を使った照明演出をしています。意匠性が高く、インパクトがあるユニークな空間デザインです。
社内外の交流を促進する場として、会話のきっかけを生み出せる要素の一つになるのではないでしょうか。ミーティングルームには、オフィス全体の「和」テイスト融合させるレトロな印象のペンダントライトを取り付けました。
→事例の詳細はこちら
働き方は多様化し、オフィスに対する意識も変容しています。ワーカーが生き生きと働くために光環境の整備はなくてはならない要素の一つと言えるのではないでしょうか。一日の内でも長い時間を過ごすオフィスの照明環境は、心身にも影響します。健康的な暮らしを送るためにも、照明のストレスを減らし快適なワークスペースを整備しましょう。