働く場所やスタイルにこだわらないワークスタイルが普及し、オフィスの在り方も変わってきました。そのようななかで、オフィスにアートを取り入れる企業が増えています。
難しく考えてしまいがちな「アート」ですが、オフィスに導入することで、いったいどのような効果が得られるのでしょうか。本記事では、アートがもたらす効果やオフィスデザインに取り入れる方法をご紹介します。
そもそも「アート」とは、なんでしょうか?
アート(芸術)とは、「文芸」「美術」「音楽」「演劇・映画」などをさしています。表現者・表現物・鑑賞者による相互関係があり成立するもので、精神的・感覚的な変化を得る活動です。美術作品だけでなく、音楽家や俳優演者などが「アーティスト」と言われることからも、アートの分野は一般的にも広く認知されています。
オフィスデザインにおいては、BGMとして音楽を取り入れるケースもありますが、主に視覚的な要素としてのアートが導入されています。ウェルビーイング・健康経営の観点からも、これからのオフィスには「心地よい環境」「心身ともに健やかである働き方」がますます重要視されていくでしょう。そのような流れにおいて、アートは効果的な力を発揮されると考えられています。
アートを取り入れるオフィスデザインが増えてきた理由に、ワーカーにとってよい効果があることが挙げられます。ここでは、具体的にアートがワーカーや企業にとってどのような効果をもたらすかを考えてみます。
インテリアに取り入れられる美術作品としてのアートは、視覚情報として人の心理状態に作用します。穏やかな田園風景が描かれた絵画や、海や山などの自然を写した写真などを見ているとリラックスした気持ちになれるでしょう。逆に、不安をあおるような対象物が描かれていると多くの人はストレスを感じます。
また、絵画や写真に含まれる要素の一つである「色」は、人の気持ちに影響を与えると言われています。例えば、赤は高揚感をもたらし積極的な活動を促します。また、青には集中力を高める効果があります。このような色がもたらす心理効果をアートに結びつけて取り入れることでオフィス内での業務効率化やリラックス効果の向上をコントロールできるでしょう。
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細かな事務作業を長時間続ける、営業戦略を考えることに没頭するなど、仕事に集中し続けてストレスを感じた経験はありませんか。集中して取り組めるのは悪い状態ではありませんが、適度にリフレッシュしないと心身に大きな負荷がかかったり、考えが煮詰まったりしてしまいます。
業務効率だけを考えたオフィスは、どこか殺伐とした無機質な印象になりやすく、ゆったりとした気持ちで休めないのではないでしょうか。しかし、オフィスにアートがあると、殺伐した雰囲気をやわらげることができます。また、業務にかかわりのないアート作品を眺めて気持ちを切り替えられるでしょう。
リラックス効果だけでなく、ワーカーの気持ちをポジティブに変換する力もあるのがアートの魅力の一つです。先に述べた色の効果や気分転換のきっかけになるだけでも、疲れやストレスを軽減させ、前向きな気持ちを引き起こしてくれます。
アート作品の近くで仕事をすると、やる気や創造力があがるというアンケート結果もあります。オフィス内にアートがあれば、ワーカーの思考の切り替え・モチベーションアップに貢献できるでしょう。
企業のビジョンや理念を反映させたアート作品は、来訪者へ対外的なアピールや会話のきっかけになるのではないでしょうか。理念は言葉での具現化も重要ですが、抽象化されたアートでは無意識化でビジョンを社内に浸透させられます。アートは雰囲気のよい空間づくりにもつながり、ブランドの魅力を伝えるツールとして今後ますますオフィスデザインにおいても注目される分野です。
アートと言っても、その種類はさまざまです。ここでは、実際にオフィスにアートを導入する方法について解説します。
もっとも手軽で一般的なのが、壁に額装した絵画や写真を飾る方法です。一般家庭に比べて、天井が高く壁面が広いケースが多いオフィスでは、大型のアート作品を壁面に飾ることも可能です。
かつては風景や人物が描かれた具象画を、エントランスや応接室などに飾ることが多かったのですが、最近では抽象的なものが好まれる傾向が見られます。また、特別な場所だけでなく執務スペースや会議室など、社員が日常的に使用する場所にも積極的に導入されています。
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オブジェとは、事物・物体などを表すフランス語です。美術用語として、立体作品をさしている場合もあります。オフィスデザインのアートとして、立体的な作品を飾る方法もあります。広いエントランスホールに大きな彫刻作品などが飾られているのを目にすることもあるでしょう。
インパクトがあり、人目を引くような大型作品ではなくても、書類棚などにアート作品としてのオブジェを飾ればインテリア性が高まります。オフィスの棚と言えば、書類などを管理するための収納要素が強いと思いますが、アート作品を飾る場として雑貨や小物をディスプレイすることで、一味違った空間演出が生まれます。
壁画=ウォールアートを導入する事例も増えています。ウォールアートは、画家やアーティストが壁・天井に直接アート作品を描く方法です。文字とイラスト・グラフィックを組み合わせてより印象的に企業理念などを表現できます。
企業ロゴやコーポレートカラーを用いたものや、ビジョンをデフォルメした文字で描いたメッセージ性の強いものなどデザインは様々です。エントランスに採用して、来訪者へのアピールとするケースだけでなく、社員の目にとまりやすい執務スペースや会議室などにも取り入れられています。
WORK KITが手掛けたオフィスのなかには、アートやグラフィックを積極的に導入した事例もあります。ここでは、数多くの事例のなかから3つを厳選してご紹介します。
大胆なグラフィックで人を引き付けるウォールアート。鉄の扉には「NOW OR NEVER」と描かれ、会社とクライアントの2社(者)が寄り添い一つになるという想いをアートに託しています。モノクロながらインパクトが強いデザインで、見る人に気持ちがダイレクトに伝わります。
多様な装材を組み合わせて設計され、柱や壁などを含めた構造や内装材が、一つのアート作品のようです。植物を取り入れることで、空間に安らぎを与え、バランスのよいコーディネートが実現できました。
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エントランスからミーティングルームまで、スムーズな動線計画となっている開放的なオフィス。入口から見渡せるガラスには、全面にグラフィックデザインが施されており、インパクトを与えています。動きのある幾何学模様は空間に奥行きを感じさせ、見る人に「つながり」「継続性」を伝えるデザインです。
全体的に落ち着きのあるカラーコーディネートのなかで、ソファやチェアに鮮やかな赤色をアクセントに加え、空間全体にリズムを生み出しました。スタイリッシュなインテリアですが、無機質な冷たさではなく、人を迎え入れる温かさを感じられるでしょう。
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企画・デザイン・開発・運用を行う企業のエントランスやミーティングエリアのリニューアル事例です。待合スペースには、コーポレートカラーを取り入れたカラーリングの壁。ナチュラルな内装のなかで、ほどよくスパイスとなるカラフルな壁面。一つのアート作品のように、鮮やかに空間を演出しています。社内外の人が交流する場所として、明るい気持ちになれる空間デザインです。
また、天井面を見ると動きのある照明器具が設置されています。これまで照明は、明るさを確保するための道具・設備としてとらえられていました。しかし、デザインにこだわればアート作品のように空間を彩るアイテムとなります。
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働き方の多様化にあわせて、オフィスデザインの幅も広がっています。ワーカーの働く時間や環境を豊かで心地よいものにしたいという要望は、年々高まっています。アートには、働く人のやる気を引き起こす効果もあると言われています。仕事を快適に行い、モチベーションを上げるための要素として、オフィスにアートを取り入れてみてください。