働く場所やスタイルにこだわらないワークスタイルが普及し、オフィスの在り方も変わってきました。「おしゃれで働きやすいオフィスに一新させたい」と考える経営者の方も多いのではないでしょうか。そこで、おすすめなのがアートの導入です。
難しく考えてしまいがちな「アート」ですが、大掛かりな工事をしなくても取り入れることができます。本記事では、アートがもたらす効果やオフィスデザインに取り入れる方法を解説。WORK KITが手がけた事例も紹介しますので、アートを導入したオフィスを具体的にイメージしながら検討してみてください。
近年、オフィスにアートを取り入れたいと考える企業が増えています。しかし、日本企業では、なかなか思い切った導入ができていない現状があるようです。アートが普及しにくいのはなぜか、これからのオフィスに必要な理由と合わせて考えてみます。
そもそも「アート」とは、どのようなものでしょうか。
アート(芸術)とは、「文芸」「美術」「音楽」「演劇・映画」などをさしています。表現者・表現物・鑑賞者による相互関係があり成立するもので、精神的・感覚的な変化を得る活動です。美術作品だけでなく、音楽家や俳優演者などが「アーティスト」と言われることからも、アートの分野は一般的にも広く認知されています。
オフィスデザインにおいては、BGMとして音楽を取り入れるケースもありますが、主に視覚的な要素としてのアートが導入されています。
これまでのオフィスは、「効率よく業務を行う場所」であることが重要視されてきました。システムの導入や家具レイアウト、照明計画は検討するものの、プラスアルファのアイテムであるアートの必要性に目を向けられにくい環境といえます。
また、大きな変化を受け入れにくい日本企業の価値観が、実際の業務に関わりのないアートの導入にブレーキをかけていたのではないでしょうか。アート自体が、敷居の高いものとして一般的に定着していない側面もあります。どれくらいの価値があるのか判断しづらく、適正な費用がわからないことも普及の妨げになっています。
テレワーク・リモートワークが一般的になり、オフィスの必要性や価値基準も変わってきました。インターネット環境が整っていればほとんどの業務ができるデスクワークの場合、オフィスは不要と考える方も増えています。そのため、わざわざ行く価値のあるオフィスが求められています。
ただ業務を行いやすいだけではなく、コミュニ―ケーションがとりやすく居心地のよい空間作りが必要でしょう。内装を一新させておしゃれで快適にするのは、大がかりな工事が必要でコストもかかります。原状回復工事も踏まえると、手軽に印象を変えられるアートの導入はオフィスを変える方法としておすすめです。
アートを取り入れるオフィスデザインが増えてきた理由に、ワーカーにとってよい効果があることが挙げられます。ここでは、具体的にアートがワーカーや企業にとってどのような効果をもたらすのでしょうか。
一般的なオフィスは、白い壁に囲まれた無機質な印象の空間です。デスク・チェア・収納・OA機器などの必要なものを並べただけでは、殺風景に感じやすくなります。オフィス家具はシンプルなデザインも多いため、寂しい雰囲気になりがちです。
鮮やかな色の絵画やパッと目を引くようなテクスチャー、形のオブジェなどのアートがあれば、空間が一気に華やかになります。おしゃれで居心地のよい演出ができ、ワーカーの気持ちもポジティブになるでしょう。
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「細かな事務作業を長時間続ける」「営業戦略を考えることに没頭する」など、仕事に集中し続けてストレスを感じた経験はありませんか。集中して取り組めるのは悪い状態ではありませんが、適度にリフレッシュしないと心身に大きな負荷がかかったり、考えが煮詰まったりしてしまいます。
業務効率だけを考えたオフィスは、どこか殺伐とした無機質な印象になりやすく、ゆったりとした気持ちで休めないのではないでしょうか。しかし、オフィスにアートがあると、殺伐した雰囲気をやわらげることができます。また、業務にかかわりのないアート作品を眺めて気持ちを切り替えられるでしょう。
リラックス効果だけでなく、ワーカーの気持ちをポジティブに変換する力もあるのがアートの魅力の一つです。先に述べた色の効果や気分転換のきっかけになるだけでも、疲れやストレスを軽減させ、前向きな気持ちを引き起こしてくれます。
アート作品の近くで仕事をすると、やる気や創造力があがるというアンケート結果もあります。オフィス内にアートがあれば、ワーカーの思考の切り替え・モチベーションアップに貢献できるでしょう。
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企業のビジョンや理念を反映させたアート作品は、来訪者へ対外的なアピールや会話のきっかけになるのではないでしょうか。理念は言葉での具現化も重要ですが、抽象化されたアートは無意識化にビジョンを社内に浸透させられます。アートは雰囲気のよい空間づくりにもつながり、ブランドの魅力を伝えるツールとして今後ますますオフィスデザインにおいても注目される分野です。
働いている自分を好きになれるようなおしゃれなオフィスは、ワーカーの気持ちを前向きにしてくれます。アートに刺激を受けて美意識が高まり、新しいアイデア交換も活発に行われているオフィスは、自然と雰囲気がよくなるでしょう。
アクティブで生き生きとしたオフィスは、就職・転職活動中の求職者にとって魅力的に映ります。また、アートを取り入れること自体が、新しい発想を持った将来性を感じる企業であるアピールにもなるのではないでしょうか。そのような企業姿勢は、優秀な人材の採用率アップや離職率の低下にもつながります。
アートと言っても、その種類はさまざまです。ここでは、実際にオフィスにアートを導入する方法について解説しま
もっとも手軽で一般的なのが、壁に額装した絵画や写真を飾る方法です。一般家庭に比べて、天井が高く壁面が広いケースが多いオフィスでは、大型のアート作品を壁面に飾ることも可能です。
かつては風景や人物が描かれた具象画を、エントランスや応接室などに飾ることが多かったのですが、最近では抽象的なものが好まれる傾向が見られます。また、特別な場所だけでなく執務スペースや会議室など、社員が日常的に使用する場所にも積極的に導入されています。
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立体的なオブジェを飾る方法もあります。広いエントランスホールに、大きな彫刻作品などが飾られているのを目にすることもあるでしょう。人目を引くような大型作品ではなくても、書類棚にオブジェを飾ればインテリア性が高まります。オフィスの棚と言えば、書類などを管理するための収納要素が強いかもしれません。しかし、アート作品を飾る場として雑貨や小物をディスプレイすることで、一味違った空間演出が可能です。
壁画=ウォールアートを導入する事例も増えています。ウォールアートは、画家やアーティストが壁・天井に直接アート作品を描く方法です。文字とイラスト・グラフィックを組み合わせてより印象的に企業理念などを表現できます。
企業ロゴやコーポレートカラーを用いたものや、ビジョンをデフォルメした文字で描いたメッセージ性の強いものなどデザインは様々です。エントランスに採用して、来訪者へのアピールとするケースだけでなく、社員の目にとまりやすい執務スペースや会議室などにも取り入れられています。
WORK KITが手掛けたオフィスのなかには、アートやグラフィックを積極的に導入した事例もあります。ここでは、数多くの事例のなかから3つを厳選してご紹介します。
「長く使い続けられるオフィス」をコンセプトに、移転したオフィス事例です。グレーを基調としたシンプルで飽きのこないデザインになっています。空間全体のデザイン性を高めるために、インテリアグリーンと移転前のオフィスで使われていたアートを飾っています。すっきりとした雰囲気のオフィスに、アートに使われている赤が映え印象的です。壁面に飾るアート作品は、移設も簡単に行えます。季節や気分に合わせて変えることもできるでしょう。こちらの事例のように、企業のアイデンティティを伝えるアイテムとして、オフィス移転に合わせて移設させることも可能です。
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エントランスから続く通路には、思わず足を止めて見入ってしまうアートウォールが来訪者を迎えてくれます。全長約16.5メートルのアートウォールは迫力があり、起業家をはじめとした挑戦者がプレゼンテーションを行う場につながります。企業のアイデンティティをイメージしたデザインです。
また、社内外で活用するHUB機能を集約したワークラウンジには、一段高いステージを設けました。背面には、ブラッシュレタリング(筆・筆ペンなどを使って文字を書くカリグラフィの一種)で企業理念が書かれています。多くの人が過ごすスペースで、理念を共有してワーカーの気持ちを一つにする効果が生まれるでしょう。
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日本国内の陸上競技を統括する企業のオフィスです。エントランスの壁には、躍動感あふれるスポーツをする人物の絵が描かれています。「走る・跳ぶ・投げる」などの身体の動きをアクリル絵の具やクレヨンを使い描かれました。平面作品でありながら、凹凸感がありダイナミックな動きが感じられます。
色数を減らし内装は、普遍的で飽きがこない「持続性」のあるデザインです。殺風景になりがちなシンプルな空間ですが、壁面のアートが空間全体に生き生きとしたリズムを作り出しています。
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