オフィスにはパソコン周辺機器やタブレット・スマートフォンの充電器・コピー機など、数多くの電気製品があります。それらの配線をまとめ、すっきりとした環境を作るためにオフィスビルでは一般的に「フリーアクセスフロア」「OAフロア」があります。すっきりした空間づくり、転倒やデータ紛失などの事故を防ぐためにも有効な方法です。
本記事では、フリーアクセスフロアの特徴やメリット・注意点を詳しく解説します。快適なオフィスをデザインする際に参考にしてみてください。
フリーアクセスフロアとは床の上にネットワークや電気の配線を行い、その上に別の床を作った「二重床」のことです。「OAフロア」あるいはそのまま「二重床」と呼ばれることもあります。
床を這うたくさんのコード類は美観を損ねるだけでなく、足を引っかけて転倒するなどの可能性があり危険です。しかしフリーアクセスフロアなら、床の表面に配線が露出しないため、家具レイアウトや通行の邪魔になりません。
オフィスだけでなく、店舗や工場などの配線がたくさんある場所でよく見られる構法です。
フリーアクセスフロアは、一般的に構法の違いで2つのタイプに分類されます。ここでは、その違いについてご説明します。
支柱タイプ
「支柱タイプ」は、鉄・コンクリート製のパネルを支柱で支える構法です。PP樹脂などでできたパネルを置き敷く「支柱一体型」と、スチールやコンクリート製のパネルを用いる「支柱分離型」があり、いずれも変更や増設がしやすいメリットがあります。支柱の高さを変えることで、床下の高さ調整が可能です。十分な空間を床下に作り、自由に配線を通して活用できます。
しかし、配線の自由度が高いがゆえにかえって混触したり、ノイズが発生したりするデメリットが考えられます。事前にしっかりと配線の設計を行い、固定する必要があるでしょう。支柱が配線に重なる可能性もあるため、断線などが起きないような対策が必要です。また、ノイズ対策も行うようにしてください。
置敷タイプ
ブロック型のパネルを床に敷き詰める方法のフロアです。
床面の凹凸や傾斜した場所をフラットにするために、事前に不陸調整用のフロアシートを敷きます。配線が通るように溝が作られたパネルを設置し、タイルカーペットをその上に敷く施工方法です。
床上を歩くときの空洞音やがたつきが少なく、歩きやすいでしょう。カバーにしているパネルを外すだけで配線を組み替えられます。また、配線の混触が起こりにくく、ノイズに対しても性能が高い構法です。
フリーアクセスフロアのオフィスは、企業やワーカーにとってどのようなメリットがあるでしょうか。オフィスのフリーアクセスフロア化で得られるメリットについて、考えてみましょう。
現代のオフィスでは、ほとんどのワーカーがパソコンを使用しています。パソコン本体、ディスプレイ画面、プリンタなどの付属機器のほか、スマートフォンの充電器などを利用する方もいるでしょう。
また、コピー機などの大型OA機器も設置されています。壁面に設置した電源コンセントしか用意がない場合、これらの電気機器に延長コードなどを複数使いコンセントから電源を確保しなければいけません。このように、たくさんのコード類がすべて床上にあると煩雑な印象になってしまいます。
フリーアクセスフロアは床下に配線を通すため、床上に配線コードが露出せずオフィスの美観保護につながります。見苦しい配線が目に入らない、すっきりした空間で気持ちよく働けるでしょう。
フリーアクセスフロアにする場合、あらかじめ配線経路を設計・計画します。事前にオフィスのレイアウトやデスク配置を踏まえて計画的に電源を用意できるため、明確な配線経路を作れます。
デスクを設置する予定の場所には電源を多めに用意しておけば、後から延長コードを床上に這わせてつなげる必要もありません。オフィスを利用し始めてすぐに、パソコンなどの必要な電気機器をつなげて業務をすぐに始められるでしょう。
人員増員・減員などに伴い、デスクのレイアウト変更を行うことも考えられます。複数の人が使う配線は複雑で、絡まったり自分のケーブルがわからなくなったりした経験はないでしょうか。
フリーアクセスフロアは、配線が絡まるなどのストレスなく簡単にデスク移動が可能です。前任者のデスクを後任者がそのまま使う場合でも、電源やコードがすぐに使えるので着任後もすぐに仕事を開始できます。
溝構法の場合は、パネルを外して床下のケーブル自体の配線計画を変えることもでき、より複雑なレイアウト変更にも対応でき安心です。
露出した配線などは、通行の邪魔になります。ケーブルを床の隅に這わせて固定できれば、大きな障害物にはならないでしょう。しかし、壁から離れた位置に設置したデスクでパソコンなどを使用する場合は、壁面コンセントから延長コードで電源を引かなければいけません。
フリーアクセスフロアなら、床下に配線を収納でき、床下からコードを引き出せます。床上にコードやケーブルが露出せず、足を引っかけて転倒するなどの事故につながる危険性を減らせます。
配線が床上にあると、通行時や椅子などを引いたときに踏んでしまい断線につながるかもしれません。断線は電子機器の故障やデータ損失だけでなく、場合によっては火災につながり大変危険です。また、露出している配線にはホコリなどもつきやすく、引火などの恐れも考えられます。フリーアクセスフロアによる、床下配線の溝やパネルはコードやケーブルを保護する役割も担っています。
コードやコンセントが、床の上に露出していると足を引っかけて誤って抜いてしまったり、椅子で踏んで断線したりする可能性があります。複数の人が利用しているオフィスでは、他者のパソコンにつながる配線を抜いてしまうかもしれません。作業中であればパソコンにつながる主電源が突然消え、バックアップを取っていないデータが消失してしまいます。フリーアクセスフロアの床下配線なら、そのような危険を減らせるでしょう。
フリーアクセスフロアのオフィスでは、美観がよい点や安全性の高さなど多くのメリットがありました。しかし、使い方や元々の設計次第では使いにくさを感じることや思わぬ事故につながる可能性も考えられます。ここでは、フリーアクセスフロアの導入時に気をつけておくべきポイントを解説します。
電気機器が増えると配線が複雑になります。ケーブルの混線により、自分の使いたいケーブルが取り出せず無理に引っ張るなどの行為で断線するかもしれません。フリーアクセスフロアは、床下に配線して断線リスクを軽減できますが、ピンポイントで必要な機器と接続できるわけではありません。床から出したケーブルを机上まで混線しないように誘導する必要があります。
複数の配線が張り巡らされ密着した状態になると、熱を持ち火災や感電につながる危険性も考えられるでしょう。また、見えにくい場所に電源コンセントがある場合、静電気などでホコリを吸い寄せ、火花放電による発火(トラッキング現象)の原因になり危険です。定期的に配線を整え、ホコリを取り除くようにしてください。
OA機器などの電子機器・電源配線はノイズを発生しています。これらのノイズが、誤作動やネットワークエラーを引き起こすことがあります。LANケーブルと電力線は離れたルートで配線設計をするなどの配慮が必要です。
二重床にして、床下に配線を通し、すっきりとしたオフィス設計ができるフリーアクセスフロア。美観維持だけでなく、転倒や断線の危険性を回避し、効率よく業務に取り組める環境を作れます。多くの電化製品が使われるオフィスに取り入れて、安全で心地よい仕事環境を整えましょう。