近年、オフィス内にライブラリー(社内図書館)を設ける企業が増えています。健康経営・ウェルビーイングな働き方が身近な価値観となり、オフィスは業務を遂行するだけの場所ではなくなりました。
これからのオフィスのあり方が模索されるなかで注目されているのが、オフィスライブラリーです。では、オフィスライブラリーとはどのようなものなのでしょうか。本記事では、メリットデメリットだけでなく、設置にあたり意識するとよいポイントを詳しくご紹介します。
オフィスライブラリーとは、その名の通りオフィス内に設けられたライブラリー=図書館スペースのことです。本を読むための専用の部屋を設ける、休憩スペースを兼用とする、など様々な方法があります。また、その場所での閲覧だけなのか、貸し出しもできるのかなど、運用方法もさまざまです。
業務に関係する本だけでなく、なかには漫画や写真集を置いているケースもあります。知識を増やす、コミュニケーションの促進になるなどのメリットが期待できます。一方で、運営・管理にはコストがかかる点には注意が必要です。どれくらいの規模感でどのように運営していくか、明確に決めることで費用対効果の高い空間になるでしょう。
オフィスライブラリーは、働きやすく通いたくなるオフィス作りに一役買います。具体的には、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、オフィスライブリーがもたらすメリットについて考えてみます。
業務に関わる書籍や情報誌をライブリーに置けば、必要に応じて従業員がさまざまな知識を得ることができます。知識を増やし、自身の業務や日常の生活に生かせます。また、従業員同士が知識を共有することで、相互理解が深まりコミュニケーションがスムーズになるでしょう。従業員の意識向上が生産性を高めることにもつながります。
効率化を意識した作業しやすい環境づくり同様に、職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化は企業にとって重要な課題です。ライブラリーでは、本を介して部署をこえた交流も生まれやすく、年齢・立場にかかわらず話題を共有し、会話が弾むシーンもあるでしょう。横のつながりが広がり、コミュニ―ケーションが活発になります。
休憩室としても利用できるライブラリースペースなら、長時間集中して作業に取り組んだ後のリフレッシュ空間として利用できます。適度に休息をとることは、生産性向上にもつながります。気持ちの切り替えをする場として活用できる点も、メリットの一つです。
2020年ごろから、新型コロナウィルス感染症対策の一環として、テレワーク・リモートワークが一気に普及しました。接触を減らすために広がった動きでしたが、出退勤時間の有効活用ができるメリットなどから、引き続きテレワーク・リモートワークを希望する従業員も多い状況です。
普及が拡大する一方で、対面ではないコミュニケーションによるミスの誘発や、モチベーション低下などのデメリットも目立つようになりました。それらの課題を解決するために、オフィス回帰の兆しも見られます。オフィスライブラリーがあることで、オフィスでのわくわくした気持ちを引き出すことができ出社率を上げるきっかけになるでしょう。
本に書かれている内容から、新しいアイデアの種を得られることがよくあります。業務に関わりのある専門書ではなくても、思わぬひらめきが引き出せるかもしれません。また、日常的な業務から離れて気持ちを切り替えることで、滞りがちな思考のスイッチチェンジも図れるでしょう。
オフィスライブラリースペースは、対外的に社内の雰囲気や企業のビジョンを伝える場所にもなります。そろえている本の内容は、企業の目指すべき姿勢を表すものとなるでしょう。また、従業員の活発な雰囲気を感じることができるため、前向きな印象を与えることができます。
就職活動中の学生や転職活動者が内見する際にも、魅力の一つとなります。アイデアを生み出す優秀な人材の確保にもつながるのではないでしょうか。
さまざまなメリットがあるオフィスライブラリーですが、気をつけておきたいポイントもあります。ここでは、設置にあたり注意しておきたい点について解説します。
オフィスライブラリーには、本を置く棚や本を読むための場所が必要です。業務に必ず必要なスペースではないため、ワークスペースや会議室などが十分に用意できるだけの広さを確保したうえで設置しなければいけません。
狭くて居心地が悪い、用意されている本が見にくい、ゆっくりくつろげる閲覧スペースがないなど、快適な空間になっていないと利用率も下がってしまうでしょう。オフィスライブラリーを設ける理由を明確にし、コンセプトに合う本や家具をしっかり用意できる十分なスペースの確保が必要です。
オフィスライブラリーは、その場で閲覧・読書をするだけのケースと、オフィス内の別のスペースや自宅へ持ち帰ることができるケースがあります。前者の場合は、比較的管理は楽に行えますが、貸し出しをする場合には運用にリソースが必要です。
どの範囲まで持ち出しができるのか、貸出期間はどれくらいかなどのルールを明確にし、しっかりと管理をしなければなりません。貸し出し管理をどの部署が対応するのかなど、管理者を明確にすることも重要です。
ライブラリースペースの清掃、本の整理など日常的なメンテナンスをしなければいけません。新しい本との入れ替えや傷んだ本の補修なども必要です。
また、新しいアイデアや知識を得るためには、常にライブラリーに並ぶ本をブラッシュアップする必要があります。どういった本を設置するのかを考えて、定期的な入れ替えをしてみてください。利用する従業員にアンケートを取り、どのような本があるとよいのか調査してみてもよいでしょう。
実際にオフィスライブラリーを設けるときに、意識するとよいポイントをご紹介します。
ほとんどの場合、ライブラリースペースは、業務に必ずしも必要な場所ではありません。そのため、必要性を明らかにし、コンセプトを決めてみてください。
休憩時の息抜き・リフレッシュ用であれば、娯楽誌や業務とは関わりはなくても楽しみながら読める本を用意し、ソファやラウンジチェアなどくつろげる家具があるとよいでしょう。業務の専門的な知識を深めるための場所とするなら、集中して閲覧できるブースを作ったり、貸し出しができるようにしたりするとよいなど、設計の方向性が明確になります。
しっかり決めたコンセプトに従い、ライブラリースペースを設置する場所を検討します。場所には限りがあるため、オフィス内のどこにどれくらいに規模でつくるか考えなければいけません。
また、ワークスペースやエントランス・トイレなどからの動線も意識してください。本を扱う場所であることから、換気・日光による日焼けなど、本にダメージがかかりにくいかどうかも気をつけておくとよいポイントです。
息抜きやリフレッシュの場になるとはいえ、本来の業務に支障を与える場所になってはいけません。利用時間も決めておく必要があるでしょう。また、貸し出しができるのか、その場所での閲覧のみかも検討します。貸し出しをする場合には、管理する人材が必要です。新しい本の購入・メンテナンス・清掃などにも、人の手がかかります。それらの管理を誰がするのか、予算はどれだけかけられるのかも考えておきましょう。
ライブラリーの設置目的・コンセプトによって、置く本も変わってきます。設置効果を高めるためにも、本選びはとても重要なポイントです。また、どれくらいの頻度で新しい本を置くのか、常時何冊置くのかといった点も決めておくとよいでしょう。
従業員の希望アンケート調査を参考にした選定もよいでしょう。せっかく設置したのに、ニーズに合わない蔵書内容では利用率が低下してしまいます。知識を増やし、コミュニケーションを活発にするなどのメリットを持続させられる本を選んでみてください。
ライブラリーは運用開始後も、定期的なメンテナンスが必要です。棚の整理整頓やスペースの清掃だけでなく、蔵書の入れ替えも重要です。本は高温多湿な環境に弱く、カビが発生することもありますので、取り扱いには注意をしてください。
社内だけで、中長期的な管理が難しい場合はメンテナンスや新しい本の選定などを請け負うコンシェルジュ会社もあるため、アウトソーシングしてみてもよいのではないでしょうか。
オフィスにライブラリーがあると、生産性の向上やコミュニケーション促進を図ることができます。新しいアイデアを生み出すきっかけになる、ブランディング効果が高まるなど、企業にとってもメリットがあります。スペース確保ができるか、管理方法をどうするかといった点に気をつけて、魅力的なオフィスライブラリーを設置してみてください。従業員のモチベーションも上がり、生き生きしたオフィスとなるでしょう。