快適なオフィス環境で、心地よく仕事に取り組めていますか?
近年「働く場所」は、自宅・カフェ・レンタルスペースなど幅広く展開するようになりました。オフィスのあり方は転換期を迎え「執務をする場所」から、新たな段階に進んでいるのではないでしょうか。快適で心地よいワークスペースは、働き手のモチベーションアップや業務効率化につながり、企業のイメージアップも図れます。ではどのようにすれば、快適な空間を構築できるのでしょうか。
本記事では、オフィス全体をデザインし、一つのアイデアとしてアートや植物を取り入れる方法をご紹介します。「人生をより豊かにできる」ワークスペースをいっしょに考えてみませんか。
オフィスは、企業理念やコンセプトを表現する手段の一つとなりました。内装をととのえ、デスクのレイアウトや動線を計画するオフィスデザインが着目されています。オフィスに求められるものは、いったいどのようなものでしょうか。
オフィス以外の場所でできる仕事の幅が増え、むしろオフィスで業務を行う理由がより明確になったと言えます。効率よく生産性を上げることはもちろん、テレワーク・リモートワークの定着にともないコミュニケーションの活性化が、これまで以上に求められるようになりました。
また従業員の心身の健康や幸福感を高める大切さが、改めて注目されています。ビジネスの場におけるウェルビーイング(※1)や健康経営(※2)などのキーワードもよく聞かれます。心の充実が仕事に大きな影響を与えることを、多くの人が実感していると思います。しかし大掛かりなレイアウト変更やリノベーションが難しい場合もあるでしょう。より快適な環境を作るために、まずは気軽にアートや植物を取り入れてみてはいかがですか。
現状のオフィスの変化だけでなく、新規開業、移転あるいは在宅ワーク環境にも生かせるオフィスデザインアイデアの一つです。
※1ウェルビーイング(well-being):幸福・健康の意味。
※2健康経営:従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること(出典:経済産業省)
これまで述べてきた通り、オフィスはただ執務を行う場から、従業員のモチベーションをあげ生産性を高める場へと移行しています。同時に、豊かな生活の一部を過ごす場としての需要も大きくなりました。アート作品をオフィスに取り入れると、感性が刺激され新たなイノベーションを生みだす可能性が広がります。また、集中して仕事に取り組むことは重要ですが、適度な休息も必要。ほっと一息つくとき、アートに触れるとリラックスできるでしょう。
企業の理念を象徴するようなアートや著名アーティストの作品などをエントランスや応接室に飾れば、来訪者へのアピールにもなります。強いインパクトは、対外的にも企業の価値を高めるチャンスとなり得ます。企業にとっても有益ですが、そこで働く人々の豊かなワークライフの実現にも一役買ってくれるのがアートの力です。
近年、バイオフィリックデザインが注目されています。これは人と自然がつながりを感じられるような設計・デザインを指し、建築物から都市計画まで含みます。
国土交通省の調査でも、緑が視界にあると安らぎ感が向上するとされています。エントランスや屋上・外壁面、あるいはビル前にあるパブリックスペースの緑化など、都市景観にも良い影響を及ぼす取り組みは、企業イメージの向上にもつながるでしょう。インテリア空間では、内装に自然を感じさせるカラーや自然由来の素材を使います。観葉植物や、壁を植物で覆うグリーンウォールもその一つ。植物は空気環境をよくし、快適な空間にしてくれます。また植物の緑は、パソコン作業が多い現代人の目の疲れを癒し、緊張をほぐす効果があります。リラックスした心理状態でコミュニケーションが活性化すれば、従業員エンゲージメントもあがるのではないでしょうか。
では、実際にアートをオフィスに取り入れる方法をみてみましょう。
もっとも一般的にイメージしやすいのが、壁面に絵画や写真を額装したものを飾る方法ではないでしょうか。会社に関係がある作家の作品、企業理念を明確に表現しているといった理由がない場合は、抽象的なものを選ぶことをおすすめします。
執務スペースには集中力を高める「青」、休憩所にはリラックス効果の高い「緑」など、色の効果を参考にすると選びやすいでしょう。色数を増やすとごちゃごちゃした印象で、落ち着かない空間になるため注意が必要です。
賃貸オフィスでは家主との協議が必要ですが、壁画(ウォールペイント)も印象的な空間演出ができます。エントランスホール、受付背面、廊下、階段の踊り場など、さまざまな場所をアート空間に早変わりさせられる壁画。広い面積を使用できるため、インパクトの強い表現が可能です。企業理念やブランドメッセージを込めたオリジナリティのある作品となるでしょう。
少しハードルが高い方法ではありますが、エントランスや来客スペースに、彫刻や立体物を飾ってみてはいかがでしょうか。訪れた人に強い印象を残すことができ、会話の糸口にもなります。
メッセージ性の強い現代アート作品は、企業の在り方や意思を伝える手段としても活用できます。パブリックスペースに印象的な作品を設置し、一般の方にもSNS映えする場として提供することで広告効果が期待できるかもしれません。
続いて、オフィスでの植物の取り入れ方をご紹介します。
視界に入る緑の植物の割合を示す「緑視率(りょくしりつ)」10~15%程度が、作業効率のよいオフィス空間といわれています。これまでは街づくりなどの指標だった緑視率ですが、近年では快適なオフィス空間にも必要だとされています。やみくもに緑を増やすとかえって集中力の妨げになるので、適度な量の植物をオフィス内に置きましょう。執務スペースは、業務の邪魔にならないことが重要です。天井高とのバランスを検討する必要がありますが、おおよそ1m40㎝~1m80㎝程度の鉢植えや床や棚・机に置ける小型の観葉植物がよいでしょう。枝の広がりが大きいと、通行の邪魔になる可能性があるので注意してください。
耐陰性のある「エバーフレッシュ」や「オーガスタ」、水耕栽培もでき育てやすい「ポトス」などがオフィスに向いています。しかし植物は水やりなどの手入れが必要なため、管理が大変だと感じる方もいるかもしれません。そのような場合は、フェイクグリーン(人工観葉植物)がおすすめです。
最近のオフィスデザインでは、積極的に休憩スペースを設ける傾向があります。集中して仕事に取り組むことは大切ですが、健康的な仕事環境には適度な休養も必要だからです。また、部署内外の社員とのコミュニケーションを深める場所としても活用できます。そのようなリラックススペースは、限られた空間を使っていることもあるでしょう。安らぎの場として植物を置きたくても、椅子やテーブルなどで十分な場所を確保できないケースもあるかもしれません。
コンパクトなスペースには「サンスベリア」など、縦方向に伸びるスリムな形状の植物を置きましょう。あるいは「アイビー」や「グリーンネックレス」などのツル性植物を、天井から吊るす飾り方も、有効にスペースを使えます。
エントランスは、会社の顔となる場所です。従業員や来訪者が通るときに、ほっと癒されるような演出をしましょう。お客様をお迎えするゆとりがあるエントランスには、大型の観葉植物が向いています。大きな鉢の素材やカラーを内装とコーディネートして、空間全体にボリューム感を出してください。
壁一面を覆う「グリーンウォール」も、エントランスを印象的に彩るアイテムになりおすすめ。また内と外を区切る役割として、目隠しに植物を使うこともあるかもしれません。複数の植物をまとめて置いたり、間仕切り棚の上に鉢植えを並べたりといった工夫も有効です。植物を育てるためには、通風・採光・温度管理なども必要です。オフィスによって条件は変わるため、それぞれの環境にあわせた植物を選びましょう。
オフィスデザインは、たくさんのアイデアを生かし、働く人が集中し快適に業務に取り組める環境を実現できます。内装や照明、空調などの空間設備や、業務に適した机のレイアウトや動線計画、エリア設計など、さまざまな角度から働く人の快適な環境を作りあげるのです。
そして、その決め手になるのが、プラスアルファの要素。今回ご紹介したように、アートや植物は実際にはなくても仕事を遂行することができます。しかし、このプラスアイテムがよりよいワークスペースを生み出し、従業員のモチベーションアップや生産性アップにつながります。ぜひオフィスにアートや植物を取り入れて、快適なオフィス環境を作り上げてください。