新型コロナ感染症の影響もあり、感染症対策に対する意識は高まっています。しかし、新型コロナ感染症やインフルエンザだけでなく、冬特有の体調不良への対策はしっかりできているでしょうか?ワーカーが個人でできるものだけでなく、会社としてオフィスでもきちんと対策を講じる必要があります。
そこで本記事では、オフィスの冬の感染症対策と個人でできる方法やアイテムをご紹介します。
一年を通して感染の可能性がありながらも、「季節性インフルエンザ」や「ノロウイルス」がとくに冬に流行するのはなぜでしょうか。これは、該当ウイルスが低温・低湿度の環境下で生存率が高くなり、感染力が強まるからです。(※注)
また空気の乾燥により、のどや気管支が痛みやすくなる点や免疫力の低下が、感染症を引き起こしやすくしています。そのような冬だからこそ、オフィスでも改めて徹底すべき3つの感染症対策を詳しく解説します。
※注意:新型コロナ感染症や新型インフルエンザなど、必ずしも条件にあてはまらない感染症もあります。自己判断に頼らず、厚生労働省や医療機関の情報を確認し、対策・相談するようにしてください。
感染力が高くなる季節には、まずできるだけウイルスをオフィス内に持ち込まないようにしなければいけません。しかし多くの人が出入りするオフィスでは、気をつけていても持ち込んでしまう可能性もあります。そのため、オフィス内のウイルスをひろげない対策も必要です。そこで、まずは次の2つの対策を行ってください。
新型コロナ感染症対策により、飛沫感染対策を行っている会社も多いでしょう。飛沫感染とは、感染者のくしゃみ・咳・つばなどに含まれるウイルスが、他者の口や鼻から吸収されて引き起こる感染です。
アクリル板などによるパーテーションの設置、トイレにはハンドドライヤーではなく使い捨てのペーパータオルを用意するなどの対策をします。また密度の多い場所ではマスクの着用を推奨したり、食事中などマスクを外すときの会話を控えるように促したり、個人でできる対策を周知する必要があるでしょう。
ウイルスがオフィス内のものに付着した場合、それに触れた人が感染するのが接触感染です。ウイルスを触った手を経由して、目・鼻・口からウイルスが吸収され感染します。オフィスでは、書類や備品の共有をできるだけ減らす、共用備品や共用設備の使用後の清掃・除菌をするなどの対策も有効です。
ワーカーも咳エチケットを徹底し、ウイルスをオフィス内にひろげないようにしてください。外から室内に入る際には手洗いをし、すぐに洗えない環境の場合でもアルコールで消毒するようにしましょう。
前述のとおり、インフルエンザなどのウイルスは「低温・低湿度」で感染力が高くなります。そのためオフィス内の温度・湿度を含めた空気を調整して、感染のリスクを軽減させなければいけません。具体的に、どのように管理するとよいのでしょうか。
オフィスなどの室内温度は1年を通して「18℃以上29℃以下」とし、「外気の温度より低くする場合はその差を著しくしない」とされています。(出典:厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」)。季節や天気・時間帯によって外気温との差が変わり、体感温度も一定ではないため、状況に応じて温度設定を調整できるようにしましょう。
また、暑さ・寒さの感じ方には個人差があります。体質や体調の違う人が同じ場所で過ごすオフィスでは、個々の体感温度にあわせた温度設定が難しいケースもあります。羽織れる服やブランケットなどを用意し、ワーカーそれぞれで調整をしてください。空調設備の風向きによっても体感温度が変わります。固定席ではなく、自由に移動できるフリースペースの利用やフリーアドレス制度を取り入れてもよいでしょう。
厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」では、湿度は「40%以上70%以下」を維持管理するように指示されています。広い範囲で暖房をきかせるために、より乾燥しやすい冬場のオフィス。感染症の不安だけでなく肌や髪の乾燥や静電気の発生など、不快な環境に悩まされる方も多いでしょう。加湿器を設置して、湿度を上げるようにしてください。
ウイルスの微粒子が屋内にたまりやすいオフィス。それらを屋外へ出すために部屋の空気を入れ替えることが大切です。室内温度・湿度の変化に気をつけながら、定期的な換気を行ってください。厚生労働省では、1時間に2回以上・数分間ほど行うと効果的であるとしています。
そうはいっても、定期的に窓を開けて換気をするのは難しいのが現状かもしれません。空気清浄機を設置するなどの対策も検討してみてください。
設備や環境を整えるだけでなく、日ごろからワーカーの健康を支える取り組みも大切です。政府でも、従業員の健康管理を経営的な視点で考え戦略的に実践する「健康経営」を推進しています。(出典:経済産業省「健康経営」)人生100年時代を前に「健康で生き生きと働き続ける環境作り」は、企業もワーカーも考えなければいけない必須項目といえるでしょう。
福利厚生の一つとして、従業員の健康サポートを行う企業が増えています。これまでは休暇取得やノー残業など、時間的拘束を緩和する施策が多くありました。近年ではそれに加えて、もう少し具体的な健康促進・維持のための支援がみられるようになっています。
例えば、マッサージチェアの設置やランチサポートとして社員食堂やお弁当でヘルシーな食事を提供するなどが挙げられます。企業独自のバースデー休暇やユニークな推し休暇などもあります。
このような制度は従業員の満足度もあがり、企業にとっても価値がある取り組みです。
オフィスデザインをするうえで、休憩スペースを設ける重要性は高まっています。集中力を維持するために適度な休憩時間を取ると、作業効率があがります。また、テレワーク・リモートワークが定着し、コミュニケーション不足が問題視されるようになりました。休憩スペースは、部署をこえてコミュニケーションを取る場所としても利用できます。
食事や喫茶ができるような場所だけでなく、「瞑想ルーム」「ジム」のような空間を作る企業もあります。不特定多数の人が利用するため、飛沫感染・接触感染の対策をしっかりしたうえで、ワーカーの心とからだの健康をサポートする場所を設けてみてはいかがでしょうか。
ここまでは、企業が率先してできる感染症対策や健康促進サポートについてご紹介してきました。しかし、大切なのは自分で健康を守る姿勢です。季節を問わず、健康的な暮らしを維持できるように意識しましょう。
冬はウイルスの力が強くなり、風邪・インフルエンザ・ノロウイルスなどの病気に感染しやすくなります。かかりにくくするためには、自分のからだを強くすることも必要です。そこで、気を付けるとよい3つの項目を解説します。
免疫力とはウイルスなどの侵入を防ぐなど、健康を害するものから身を守る自己防衛機能の力をいいます。日常的に免疫力を高めると、風邪などを引きにくいからだになるでしょう。免疫力をあげるには偏りなく栄養を摂る必要があります。
免疫力を高めるには、適度な運動も忘れてはいけません。テレワーク・リモートワークで通勤が減り、運動不足を感じる方も多いのではないでしょうか。過度な運動は、運動不足の状態と同じように免疫力を低下させるといわれます。しかし、心拍数が少し上がるぐらいの軽い運動を20分程度継続的に行うことで、免疫力があがります。ウォーキングやストレッチ・ヨガなど、道具や設備がなくてもできる運動なら気軽に始められますので、日常的に行いましょう。
睡眠不足が続くと、免疫力を高める機能を持つといわれる「メラトニン」の分泌が減ります。また睡眠が足りていない状態は、感染症だけでなく生活習慣病の発症リスクを高めるともいわれます。心地よい眠りを導くような生活習慣を心がけて、質の高い睡眠を取るようにしましょう。
最後に、日常的に冬の感染症対策になるアイテムをご紹介します。かばんのなかやオフィスのデスクに用意して、感染症から身を守ってください。
まずは、人の多い場所で飛沫感染を防ぐためのマスク。自分が感染源としてウイルスをひろげないためにも必要なアイテムです。また不特定多数の人が出入りするオフィスでは、自分で接触感染を防ぐための除菌グッズもあるとよいでしょう。除菌効果のあるウエットティッシュやアルコールジェルなどは、すぐに手を洗えない状況でも便利です。
また免疫力低下につながる「冷え」を防ぐために、からだを温めるカイロやブランケットを用意してください。オフィスでは加湿器を使って、適度な湿度を保つように乾燥対策を意識することも大切です。水蒸気で書類が濡れる心配がある場合は、気化式のものを選びましょう。
新型コロナ感染症やインフルエンザなど、深刻な感染症にかかる不安も高まる冬。風邪による、のどの痛み・鼻水・咳・発熱などは、症状の重さに関わらず、とてもつらいものです。日ごろから、健康的なからだ作りをしながら、感染症を予防する対策をしっかり行い、元気に冬を過ごしましょう。