「働き方改革」「ワークライフバランス」という言葉は、もはや目新しくなくなりました。日々、働き方は変容し多様化しています。そのような中で、住む場所を一つに絞らないライフスタイルが注目されています。
例えば、これまでは富裕層のバカンス、あるいは老後の過ごし方としての認識が一般的だった別荘などでのデュアルライフ(二拠点生活)。ビジネスパーソンや子育て世代でも、デュアルライフを行う人が増えてきました。
本記事では、デュアルライフの魅力やメリット・デメリットを紹介します。新しいライフスタイルの一つとして、取り入れてみてはいかがでしょうか。
では、そもそもデュアルライフとはどういった暮らし方を指しているのでしょうか。コロナ禍でよく耳にするようになったワーケーションとの違いを考えながら、デュアルライフをひも解いてみます。
デュアルライフとは、二拠点生活を意味しています。日常的に生活する家とは別の居住空間を設けて、週末だけ・月の半分など一定期間を過ごす場所とするライフスタイルです。夏季休暇に過ごす別荘のような、バカンスに滞在する場所がイメージしやすいでしょう。
近年、テレワーク・リモートワークが定着しました。インターネット環境が整っていれば、オフィスに限らず働けるようになってきました。出社も交えながらも、自宅やそれに準じる場所で仕事に取り組む方も増えているのではないでしょうか。そこで、休暇だけでなく自宅以外の場所も生活拠点とするデュアルライフスタイルも増えてきました。
仕事をオフィスや自宅以外で行う働き方に、ワーケーションがあります。これは、非日常エリアで仕事を行うスタイルで、生産性や心身をより健康に維持するための働き方といわれています。休暇に仕事をプラスする方法や、会議・研修をリゾート地で行うなども含まれます。
コロナ禍で広く知られるようになった「拠点移動型」のワーケーションは、ホテルや貸別荘などを中短期間利用して仕事拠点を移動するスタイルです。地域活性化のために、自治体が積極的にワーカーを誘致する事例もあります。このようなワーケーションも、広義ではデュアルライフに含まれます。
近年、デュアルライフが注目された背景には、働き方の多様化が大きく影響しています。東日本大震災やコロナ禍を契機に、働き方・暮らし方の価値観が転換しました。テレワーク・リモートワークの普及、フリーランス・個人事業主の増加も関係しているでしょう。
また、ワークライフバランスを求める生き方が、企業やワーカーに根付いてきたのではないでしょうか。休日には自然豊かなエリアで過ごしたいと感じる人が多くなり、地方移住を検討している人も増えています。
では、実際にデュアルライフを行うには、どのような方法があるのでしょうか。住宅スペースの購入・賃貸以外にも、さまざまな方法で滞在する方法があります。ここでは、デュアルライフを実現するための方法について解説します。
まずは、別荘・別宅を購入または賃貸する方法があります。東京近郊の別荘地として人気があるのは、葉山・河口湖・箱根・熱海・那須高原などです。いずれも東京からは、車・電車で1時間30分~2時間で行けるアクセスの良さと自然豊かな環境が、人気の理由でしょう。
大学入学や就職で、東京などの都市に移り住んだものの、もともとは地方出身の方も多いでしょう。親の高齢化に伴い、介護や空き家になった実家をセカンドハウスとするケースもあります。
近年は、別荘のサブスクも増えてきました。「サブスク」とは、サブスクリプションの略で、定額制で、モノ・コトを利用するサービスを言います。例えば、動画や音楽などを一定額で見放題できるなどのサービスを利用している方もいるのではないでしょうか。
レンタルやリースと似たサービスですが、定額制で何度でも利用できる(※)点に違いがあります。家具や家電などの生活用品のほか、住宅・別荘のサブスクサービスを利用して、デュアルライフを行うこともできます。
※回数上限などの条件が付与される場合もあります。
コロナ禍で遠方への旅行ができなくなった経緯もあり、ホテルステイをする文化がトレンドになりました。韓国発の「ホカンス」(ホテルとバカンスを組み合わせた造語)という、スタイルを耳にしたことがある方もいるでしょう。
これは、観光目的ではなく、ホテルでゆっくりと非日常体験をする新しい旅のスタイルです。自宅近くのホテルへの宿泊を含め、リゾート地で過ごすケースもあります。このように、主な目的が観光ではない宿泊も、気軽なデュアルライフの一つと言えます。
デュアルライフのメリットについて、考えてみましょう。
忙しく働く毎日では、心身のゆとりを失いやすくなります。自宅で仕事をする人も増え、気持ちの切り替えができないと感じる方もいるでしょう。自然豊かな環境で、ゆっくりと過ごしたいと考える方にとって自宅以外の滞在がリフレッシュになります。
自然の多い地方に拠点を持つと、サーフィンや登山、キャンプなどのアウトドアの趣味を満喫できます。また、屋内で行う趣味でも環境を変えることで集中して楽しめるのではないでしょうか。
将来的に田舎暮らしをしたいと考えている人にとって、プレ移住を体験できます。本格的な移住をする前に、エリアの雰囲気や生活環境を知る機会としてデュアルライフを送れます。
都心で大災害の被害を受けた場合、すぐには生活機能が回復しない可能性があります。生活拠点がほかにあれば、万が一のときに避難先にすることもできます。ハザードマップを参照しながら、また自宅との交通機関やルートも考慮して、デュアルライフ先を検討するとよいでしょう。
デュアルライフには、デメリットもあります。具体的な問題点について、みていきたいと思います。
別荘・別宅を持つと、当たり前ですが家賃や光熱費が必要になるため、コストが高くつく点はデメリットといえます。固定資産税などの税金や保険費用、引っ越しや家財道具を新たに購入するための資金も必要です。セカンドハウスを利用する間の光熱費もかかり、使わない期間が長い場合でも基本料がかかる点も踏まえて費用を計画・用意しましょう。
交通費だけでなく、時間的な負担が大きくなり継続して通えなくなる人もいます。デュアルライフ先は、本拠点から少なくとも2時間以内で行ける場所がおすすめです。
週末だけ、あるいは月に2~3日などの滞在になるセカンドハウスは、防犯面での不安もあります。しっかりとセキュリティ対策をすると、その分費用もかかってしまいます。
働き方の変化に伴い、注目されているデュアルライフ。気分転換や心地よい環境でのワークスタイルを得られる面から、ビジネスパーソンの新しいライフスタイルとして人気が高まっています。これまでは、別荘を購入してバカンスを楽しむなどが主な過ごし方でしたが、サブスクやホテルなどの宿泊施設を利用した拠点の持ち方ができるようになりました。
以前より気軽に始められるデュアルライフ。コストがかかるなどのデメリットも踏まえて、新しいライフスタイル・ワークスタイルとして、ぜひ検討してみてください。