世界的に見ても、SDGsを考慮したサステナブルな経営がスタンダードになっています。サステナブルな取り組みや健康経営は、オフィスデザインにおいても大きな課題なのではないでしょうか。サステナブル経営の要素として、人材育成や環境負荷の軽減などが挙げられます。
例えば、国産家具の利用もサステナブル経営の一環ともなります。本記事では、国産家具がよりよい社会づくりにつながる理由と実際の取り組み事例を紹介します。国産家具を取り入れて、従業員意識を高めるとともに、サステナブルなオフィスデザインを実現しましょう。
日本は国土の7割近くが森林です。近年、コロナ禍の影響などで話題になった「ウッドショック」により、国産材活用に目が向けられています。日本の木材自給率は、2002年に過去最低の18.8%まで下がりました。その後、少しずつ上昇し2021年には41.1%まで回復したものの、まだ全体の5割に満たない状況です。
国産家具は木材を多用しており、日本の森林業界における問題やエネルギー問題に取り組む企業(ブランド)がたくさんあります。改めて、その動きを見直してみましょう。
そもそもサステナブルとは、持続可能・使い続けられるという意味の造語です。やや漠然としていますが、製品の一つひとつが長く使えるかどうかだけでなく、私たちが地球上で快適に生活し続けるための環境を保護するという意味も含まれます。
仕事においては、従業員の満足度を上げ、やりがいを持って働き続けられるような職場環境を整備することも大切です。バリアフリー・ユニバーサルデザインやボーダーレスな環境も、サステナブルな考え方とつながっているのではないでしょうか。環境への配慮という観点では、CO2削減・海洋プラスチック問題の解消などの事例が挙げられ、その一つに「国産材の活用」も含まれています。
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なぜ、国産材の活用が必要なのでしょうか。前述の通り、コロナ禍ではウッドショックと呼ばれる木材価格の高騰が起こり、日本の林業・木材マーケットの課題が浮き彫りになりました。ちなみに、ウッドショックはコロナ禍が初めてではありません。過去に2回(1990年代初頭・2006年頃)、東南アジアでの天然林保護運動や伐採規制により発生しました。
コロナ禍の「第3次ウッドショック」は、これまでとは違う流れから起こっています。具体的には、どのような流れだったのか、簡単に解説します。コロナ禍による出荷規制や同時期に起こったアメリカでの木材の需要拡大や森林火災などが重なり、価格高等に拍車がかかったのです。
また、日本では次のような歴史的な流れがあり、森林が育っているにも関わらずスムーズに国産材利用への切り替えができなかったという背景があります。
戦中・戦後の大量伐採
↓
植林
↓
育つまでのあいだの輸入材依存
↓
国内林業衰退
林業従事者の減少
適切な森林保護・不十分な管理
国産材が積極的に使われるようになれば、林業や製材業の活性化・森林保護管理ができるようになります。豊かな資源を適切に活用するための取り組みは、サステナブルな活動と言えるでしょう。
オフィスでは、内装材やデスク・収納などの家具に国産材を使用できます。しかし、国産材であればどんなものでもよいかと言えば、そうではありません。国産材に限ったことではありませんが、まずは適切に管理された材料を使っているかどうかをしっかりと確認しましょう。また、森林伐採にかかわる労働環境に倫理的に問題がないかもチェックが必要です。
日本では、次の6つの地域が「6大家具産地」として知られています。
● 北海道・旭川
● 静岡県中部
● 岐阜県・飛騨高山
● 広島県・府中
● 徳島県・徳島
● 福岡県・大川
長い間、それぞれの土地の特徴に合った、収納家具や椅子などが作られてきました。なかでも、オフィス利用に向いているチェア・テーブル・ソファを主に生産しているのが、北海道・旭川と岐阜県・飛騨高山です。そこで、ここではその二つのエリアのメーカーと、自然エネルギーの活用やオフィス家具メーカーの取り組みをご紹介します。
「カンディハウス」の創業者・長原氏は、北海道産ミズナラで作られた家具が修行先であるドイツから世界中に輸出されている事実に衝撃を受けます。そして、帰国後の1968年、北海道・旭川で「インテリアセンター(現カンディハウス)」を設立しました。
創業当初から「自然と調和したものづくり」を意識し、積極的に地元・北海道産の木を使った家具づくりを行っています。森林管理の観点から、継続的な植林や合法木材の使用をし、地元の木材を利用することで輸送による環境負荷の軽減にも努めています。
また、厳選された素材・確かな技術にこだわり商品を開発。長く使い続けられる「ロングライフプロダクト」です。家具の引き取りやメンテナンスなどのアフターフォローもしっかりと受けており、安心して利用できます。
岐阜県・飛騨高山地方は、木工家具製作が盛んな地域です。2020年に創業100年を迎えた飛騨産業では、次の「4つの価値観」をベースにサステナブルな活動を展開しています。
● 人を想う
● 時を継ぐ
● 技を磨く
● 森と歩む
例えば「人を想う」活動として、男性社員の育休取得や女性が活躍できる職場環境の整備などのジェンダー平等に基づく活動のほか、技術者育成・障がい者が働きやすい職場づくりが挙げられます。
また、家具づくりに使われない木材の約1/3にあたる「未利用材」の活用にも力を入れています。節や枝など、これまで家具には使いづらいとされていた材料を取り入れたデザインもその一つです。また、バイオマス燃料としての利用、さらにはエッシェンシャルオイルなどの新しい商品としての活用など幅広く展開しています。
愛知県・刈谷市で1940年「刈谷木工所」として歩みはじめた「カリモク家具」。ソファ・椅子・テーブル・収納家具など、数多くの商品を製造し、複数ブランドを展開している国内最大手家具メーカーの一つです。
木を扱う企業として、森林や自然環境の持続可能性を踏まえた事業活動を行うと同時に、社会的な問題にも向き合っています。
具体的には、次の6つの目標を掲げています。
● 資源の保全・生物多様性の確保
● 気候変動への対応(CO2削減)
● 廃棄物の削減
● お客様のウェルビーイングの実現
● 地域社会との共生
● 健康で長くイキイキと働く職場の実現
例えば、再生可能エネルギーを活用するために、2013年から太陽光発電設備を導入しました。現在では、国内8事業所で発電を行っています。また、できるだけ廃材が出ないようにした「木取り」技術や木材加工の過程で発生する端材などをバイオマスボイラーの燃料として使うなど、廃棄物の削減にも貢献しています。
文房具・オフィス家具を取り扱っている「コクヨ」は、常に革新的なワークスタイルを研究し提案しています。
● 人と社会:人や社会とつながり豊かに生きる場や仕組み
● 環境:環境を守り、育て、共存するものづくり
● プロダクトとサービス:永く、心地よく愛用できるプロダクトとサービス
この3つの目標を軸に、多岐に渡る活動を行い、働き方の変容に幅広く対応する商品・サービスを生み出しているのです。
例えば、「働く」「学ぶ」に「暮らす」をプラスした視点で価値を提案する「THINK OF THINGS」があります。これまで以上にワークとライフの境界がなくなりつつある現代。社会と企業の双方向なつながり・コミュニケーションを大切にした取り組みの一つです。
また、高知県四万十町森林組との共同環境保全プロジェクト「結の森」や、びわ湖の環境保全活動など地域と一体になって環境に向き合っています。
最後にオフィスでも活用できる、国産家具を厳選して2つご紹介します。
コロナ禍の在宅勤務用に開発されたリーズです。無機質な素材で作られることの多いオフィスチェアですが、北海道産のタモ材を使った商品はあたたかみが感じられます。ナチュラルなインテリアにマッチするデザイン・開発には、オフィス家具メーカー・コクヨも監修に携わっています。
商品の詳細はこちら
表面材には国産ヒノキ、芯材には国産ブナを使ったチェア・テーブルシリーズ。オフィスの待合や共有スペースに設置して、印象的な空間演出ができるでしょう。先にご紹介した、コクヨと四万十町森林組合による森林保全活動で伐採された木材を使用しています。
商品の詳細はこちら
SDGsを考慮したサステナブルな経営は、これからの時代の必須課題です。サステナブルなオフィスデザインを考えるときには、国産家具の魅力を見直してみてください。森林保全や環境問題・人材育成などに目を向けた活動をしているメーカーの家具から、快適なオフィス空間を実現するヒントが見つけられるでしょう。