オフィスの空気環境について考えたことはありますか?オフィスの空気がきれいだと「気持ちがいいな」と言うのは、誰でも感じることではないでしょうか。空気環境は、からだやメンタルにも大きな影響があります。1日のうち、長い時間を過ごすオフィスが心地よい環境であるのはとても重要です。
本記事では、オフィスの空気環境が大切な理由やよい空気環境を維持する方法を紹介します。ぜひ、心身共に健康的な空気環境を整えて、快適なオフィスを作りましょう。
オフィスの空気環境がよくないと、どのような弊害が起こるのでしょうか。具体的に起こる現象をもとに、オフィスの空気環境を整える重要性について考えていきます。
そもそも、快適な空気環境とはどのような状態を言うのでしょうか。厚生労働省では、商業施設やオフィスなどビルの空気環境の基準を設けています。この基準でチェックする主な項目は、次の7つです。基準値を下回っていれば、空気環境は人体や建築物にとって快適であると言えます。
1. 浮遊粉じんの量:0.15mg/㎥
2. 一酸化炭素の含有率:6ppm以下
3. 二酸化炭素の含有率:1,000ppm以下
4. 温度:18℃以上28度以下(居室における温度を外気の温度より低くする場合はその差を著しくしない)
5. 相対湿度:40%以上70%以下
6. 気流0.5m/秒以下
7. ホルムアルデヒドの量0.08ppm以下
では、これらの基準値を満たしていないとどのような問題を引き起こすのでしょうか。
換気が適切に行われていないなどの理由で湿度が上がり、室内にカビが発生するケースが考えられます。カビ臭さによる不快感だけでなく、感染症やアレルギーの原因にもなるでしょう。また、ハウスダストや建材から出る化学物質などのアレルゲンが増加し、もともとアレルギー体質の人はもちろん、新たにアレルギー症状が発生することがあります。
換気不足は、二酸化炭素濃度の上昇・酸素濃度の低下も引き起こします。一般的に屋外の二酸化炭素濃度は400~450ppm程度と言われています。人の多いオフィスなどの屋内では、換気をせずにいるだけで、厚生労働省の基準値1,000ppmをすぐに超えてしまうようです。二酸化炭素濃度が1,000ppmを超えると眠気を引き起こし、さらに濃度が上がればひどい場合では頭痛や肩こりに発展する可能性もあります。簡単に室内の二酸化炭素濃度を測れる計測器も販売されているので、活用しながら適宜換気を行うとよいでしょう。
前述のカビやアレルゲンの発生は、感染症やアレルギーなどの病気の要因の一つです。また、換気が適切に行われないこと一酸化炭素の濃度上昇も懸念されます。一酸化炭素が急な上昇は中毒が起こり、命を脅かす危険性さえあります。空気環境の悪化は、頭痛・吐き気・めまい・疲労感につながるので、健康的に働くためにも環境整備が重要です。
オフィスの空気環境が悪化すると、生産性の低下や健康上の問題を引き起こす可能性があることがわかりました。ここでは、オフィスの快適な空気環境を維持するための方法を解説します。
快適な空気環境を維持するために重要なのが換気です。換気には、自然換気と機械換気があり、オフィスを含む「特定建築物」はビル管理法で換気基準が定められ、ビルのオーナーは空気環境測定を2ヵ月に1度行わなければなりません。
自然換気とは、空気の温度差や風圧・空気の流れを利用して空気を入れ替える方法で、窓や開口部を使います。一方、機械換気とは換気扇などの機械を使って換気する方法を言います。
厚生労働省では、30分に1回以上・数分程度窓を全開にする自然換気を推奨しています。複数の窓がある場合は、2方向の壁の窓を解放し、窓が1つしかないときはドアを開けるなどして、空気の流れを作るとよりよいでしょう。
適度な換気で、二酸化炭素濃度を下げるなど空気環境をよくすることは可能です。しかし、空気の汚れはそれだけではありません。例えば、たばこの煙やホコリなどによる空気の汚れが挙げられるでしょう。禁煙・分煙化が進んだ近年では、オフィス全体の空気はきれいになってきています。
しかし、多くの人が行きかうオフィスではホコリが舞いやすく、紙の書類・衣類・カーテン・カーペットなどに溜まっていきます。電子機器も多いので、静電気がホコリを吸い寄せ、火災の原因になるなどの被害も考えられます。また、外と中を行き来することで、外気の汚れを中に持ち込みやすい環境です。
こまめな清掃と空気清浄機を併用して、空気環境を汚す物質を除去することをおすすめします。細菌よりも小さな微粒子を吸引・除去できるような高性能フィルターを備えたものもあるので、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
換気や空気清浄機の導入で、基本的な空気環境の維持は実現できるでしょう。ここでは、さらに居心地のよいオフィス環境をつくるアイデアをご紹介します。
光合成で二酸化炭素を吸収し、酸素を生み出す植物には空気清浄効果があるとも言われます。NASAでも注目されている事実ですが、鉢植え1つ2つでは大きな効果は得られないかもしれません。しかし、植物の緑は空気清浄効果が高くなくても気持ちをリラックスさせてくれます。観葉植物を取り入れて、居心地のよい環境づくりをしてみてはいかがでしょうか。
香りは目に見えませんが、心身に影響を与える要素の1つです。不快なにおいを取り除き、アロマオイルなどのよい香りを取り入れると、より居心地のよい環境を作れるでしょう。しかし、香りは人によって好みがわかれることがあるため、その場所を利用する人と相談の上で導入してみてください。
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暗い部屋にいると、空気が淀んでいるように感じた経験はありませんか。感覚的な話ではありますが、適度に安定した光がある空間は気持ちがよいのではないでしょうか。カーテンや照明で、光をコントロールしてみましょう。
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どれだけ空気をきれいにしても、室内が散らかっていては快適とは言えません。書類やOA機器・コード類が整理されていないと、ホコリが溜まりやすく空気環境も悪化するでしょう。整理整頓がしやすい環境を整え、すっきりとしたオフィスを保つことも大切です。
室内の温度も、その空間で過ごす人にとっての快適度に影響があるでしょう。18~28℃が厚生労働省の薦める室内温度です。オフィスでは一括で室温コントロールをしているケースも考えられます。快適な温度は個人差もあるため、周囲の人とコミュニケーションを取りながら、適温を調整してみてください。
じめじめしている、あるいは逆に乾燥していると、不快指数が上がります。厚生労働省が推奨している相対湿度40~70%を維持できるように、加湿・除湿をしましょう。加湿器や除湿器の設置も有効です。また、調湿効果のある内装材を使えば、さらに効果が高まります。
オフィスの空気環境が改善できると、集中力が高まり、生産性向上につながります。逆に、空気環境が悪いだけで、ワーカーのモチベーションダウンや健康被害を引き起こす可能性があるとも言えます。
個人の心がけでより良い環境にできることもあれば、会社が主導して改善すべきこともあるでしょう。目に見えない「空気」ですが、オフィスデザインをする際に意識するとよりよいワークスペースを実現できます。ぜひ一度、オフィスの空気環境を見直してみてはいかがでしょうか。