多くの人が、子育てと仕事の両立の難しさに悩みを抱えながら働いています。以前に比べれば、産休・育休制度を活用する人も増えてきました。しかし、子どもを預ける保育所がない、急病で仕事の途中で迎えに行かなければならないなどの問題もたくさん聞かれます。
このような状況のなかで、近年注目されているのが「企業内保育所」です。子どもと一緒に働くスタイルは今後ますます重要視されるのではないでしょうか。本記事では、企業内保育所とは、いったいどのようなものなのか、また、企業内保育所のメリットや問題点もご紹介します。
そもそも「企業内保育所」とは、会社内や近隣に設けられた託児施設のことです。自社で働く従業員が、働いている間子どもを預けられるように設けられています。少子化対策・人材不足対策として、子育てをしながら働ける環境づくりの一環として積極的に取り入れる企業も増えてきました。
企業内保育所にはおもに次の3種類があります。
・認可保育所:国が定めた基準を満たし、自治体に認可された保育所。従業員だけでなく、地域住民の子どもにも施設提供をする必要がある。
・認可外保育所:国による厳しい基準がなく自由度が高いが、自治体による運営基準がある。助成金がない。
・企業主導型保育所:認可外保育所の1種。内閣府主導で行われており、認可保育所と同等の助成がある。企業の営業時間に合わせた保育時間を設定可能。
企業内保育所は、近年その数が増えています。その理由には、社会情勢や価値観の変化、国や自治体による施策などさまざまな理由が挙げられるでしょう。ここでは、企業内保育所が注目され、増えてきている理由について考えてみます。
男性による子育ても積極的になってきてはいるものの、依然として女性が携わることが多いのが現状ではないでしょうか。一方で、女性の就業率は継続的に上昇しています。
そのため、働きながら子育てをする家庭が増えているため、子どもを預ける保育所も増加傾向にあります。企業内外に関わらず、全国的に保育所の数は増加傾向です。企業内保育所も、このような女性の社会進出に伴い増えていると言えるでしょう。
日本における少子化問題は、年々深刻になっています。若い世代の労働力が現象することは、企業の人材確保にも多大な影響があるでしょう。また、出産・子育て世代はビジネス上での貴重な戦力にも関わらず、仕事との両立ができずに離れてしまことで企業にとっての大きな損失となります。
育児中の人材をしっかり確保できれば、継続的に安定した業務を遂行できます。そのための支援の一環として、子育てをしやすい環境を整えることが重要な課題です。そこで、企業主体で保育所を設ける動きが高まっています。
企業主導型保育事業の助成金制度が、企業内保育所増加の理由の1つでもあります。運営費あるいは整備費について申請できる制度で、内閣府が児童育成協会に委託していました。定員11万人分の受け皿確保を目指して対応していましたが、現在はおおむね達成したため、令和4年度以降は、申請の受付をしていません。今後、再開されるかどうかは未定ですが、この助成金制度が後押しとなり、企業内保育所が一気に増えました。
企業内保育所は、育児と仕事を両立したいと考える方にとって、あると嬉しい施設でしょう。企業内保育所を設けることは大変ですが、企業にとっても大きなメリットがあります。
働いている間に子どもの世話する人がいなければ、働くことはできません。育休が終わったあとに親族や預けられる保育所がない場合は、離職を余儀なくされてしまいます。企業内保育所があれば自社の子育てをしている従業員の離職を防げます。新たな人材確保や育成をする必要がなく、安定した業務を遂行し続けられます。
安心して子どもを預けられれば、子育てをしながらでも働き続けられるでしょう。企業所内保育所は、勤務地との距離も近く送迎にかかる時間も削減できます。送り迎えの負担が軽くなれば、より働きやすくなると同時に勤務時間を長くすることも可能です。子育てをしながら働く従業員だけでなく、他のスタッフにとっても負担が減るため、生産性の低下を防げます。
また、子どもの急な病気やケガのときも、すぐに駆け付けられるので安心です。このような安心感は「働きやすい」と感じられ、仕事に対するモチベーションも上がるのではないでしょうか。
離職率が低く、従業員の士気が高いと企業のイメージアップにつながります。子育てと仕事を両立したいと考える若い世代の方も多いため、採用率を上げるポイントにもなるでしょう。福利厚生の手厚さは、求人においても企業のアピールポイントの1つです。従業員が長く働けることで、優秀な人材を育てる土壌を作りやすく、企業の成長も見込めます。
実際に企業内保育所を利用する従業員にとってのメリットには、どのようなものがあるでしょうか。
勤務地内、あるいは近隣にある保育施設のため、送迎にかかる時間を削減できます。忙しい朝時間に少しでもゆとりを持てるのは、とても助かるのではないでしょうか。また、お迎えのために時間短縮勤務をしている方もいるでしょう。お迎えもすぐに行ける距離のため、より長い時間働くことが可能です。企業の営業日に合わせて対応してくれることから、土日祝日の休日勤務でも利用できる点もメリットと言えます。
子どもは、預けたときには元気でも突然熱を出すことがよくあります。このような、急な病気やケガの際にも連絡がつきやすく、すぐに迎えに行けるため安心です。子どもが近くにいる安心感は、働いている間の集中力にもつながります。また、子どもも親が近くにいることで安心できるのではないでしょうか。
いいことばかりのように感じる企業所内保育所ですが、デメリットもあります。大切な子どもを預ける場所のため、メリットだけでなくデメリットもしっかり把握したうえで利用を検討してみてください。
通常の保育園では、運動会やレクリエーションなどの行事が頻繁に行われます。企業所内保育所では、このような行事が比較的少ない傾向です。また、園庭で遊ぶ時間や散歩など、外の空気に触れた活動もあるでしょう。企業所内保育所は、オフィスビルなどに設置されるケースが多く、散歩に出かけにくい環境のケースがあります。そもそも園庭がなく外遊びができない可能性も高いです。
企業内保育所に限った話ではないが、保育施設は増加傾向にあるものの、保育士不足の問題は深刻です。企業が率先して保育所設営をしても、保育士が見つからず子どもを預かれない状況になる可能性もあります。また、保育環境や保育の質についての指摘も問題視されています。国の支援もあり一気に増えた企業内保育所では、人材・設備面で一般の保育所と比較すると不足している点があるかもしれません。子どもを安心して預けられる環境かどうかは、しっかりと確認しておくようにしましょう。
株式会社アトラエ vol.3
社内の福利厚生として育児サポートがしっかりしており、子連れで仕事をする方も多いオフィスです。ワークスペースの一部が畳スペースでは、子どもを見守りながら働く姿も見られます。子どもの近くで働きやすいようにスペースが整えられています。
→事例の詳細はコチラ
充実した仕事をしながらも子どもや家族との時間も大切にするスタイルは、これからますます求められるでしょう。企業内保育所は、子育てと仕事を両立したい人にとって、子どもを預けやすく見守りやすい施設です。企業にとっても、イメージアップ・採用率向上につながります。企業所内保育所を活用して、子育ても仕事も、どちらも大切にしながら生き生きとした暮らしを送りましょう。