オフィスのあり方が大きく変わるなかで、よく耳にする「フリーアドレス」。すでに、取り入れている企業も多く、実際に体験している方もいるかもしれません。あるいは、取り入れてみたいけれどどうすればよいのか、取り入れてみたもののうまく運用できない悩みを抱えている企業もあるのではないでしょうか。
そこで、本記事では、フリーアドレスの基本やメリット・デメリットを詳しくご紹介します。また、フリーアドレスのポイントも解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
そもそも、フリーアドレスとはどういったものなのでしょうか。フリーアドレスとは、オフィスに固定席を設けず、自由にデスクを選択し好きな場所で業務を行う働き方のことです。
ノートパソコンを活用すれば、パソコンを使った業務でも席を選ばず作業ができます。デスクやテーブル形式のフリースペースなどをオフィス内に設け、空いている席を使って仕事に取り組めます。
これまでは、外出が多い営業の人向けに提案されていました。しかし、近年、テレワーク・リモートワークが一気に普及にしたことによりオフィス内に出社する人数が減ったこともあり、フリーアドレスの普及・定着が進みました。
フリーアドレスは、使われていない固定席を減らしオフィススペースを有効に利用できます。オフィスの縮小による固定費削減、空いた場所に休憩スペースを設けて有効に活用するなど、さまざまなメリットが生まれるでしょう。
一方で、集中できない・書類や文房具の管理がしにくいなどのデメリットもあります。業務内容によっては適していないケースもあるため、やみくもに取り入れるのではなくしっかり検討しなければいけません。
フリーアドレスにすることで、オフィスにとってはさまざまなメリットがあります。まずは、フリーアドレスを取り入れることで得られるメリットについて考えてみましょう。
営業で外回りをする人が多いオフィスでは、日中使わないデスクがあり稼働率が低くなります。ただの荷物を置く場所となってしまうケースも散見されます。しかし、フリーアドレスで空いている席を自由に使うようにすれば、必要な人が必要な時にだけ利用できるので、オフィス効率がUPします。
オフィスが賃貸の場合、オフィスを縮小して賃貸料の節約にもつながります。また、近年では社員が心身共に健康的に働き続けることを促進する「健康経営」を意識している企業も多いでしょう。フリーアドレスにより空いたスペースを、休憩スペースやからだを動かせる場所にするなど有効に活用することも可能です。
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固定席の場合、部署やチームごとに決められた席に座るため、他部署や業務で接点の少ない社員と交流することは少ないのではないでしょうか。フリーアドレスの場合、座る席を自由に選択できるため、通常接点のない人との交流が生まれやすくなります。
一つの部署が固まっていることで、入りにくい・声をかけにくいといった雰囲気を作り出してしまうこともあります。例えば、「経費精算の方法がわからないが、顔をよく知らない総務・経理のスタッフに声をかけにくく、締め切りになっても事務処理が進まない」といった悩みも、フリーアドレスならば気軽なコミュニケーションが取れるためスムーズに解決します。
フリーアドレスは、そのような「境界線」をなくす役割も担っていると言えます。また、部署の垣根を越えた積極的なコミュニケーションが、アイデアを生み出す・イノベーションにつながるなどのきっかけになるかもしれません。
フリーアドレスにはよい面だけでなく、状況や環境によってはデメリットもあります。ここでは、具体的にどのようなデメリットがあるのかご紹介しましょう。
他部署とのコミュニケーションが図りやすくなる一方で、チーム・部署単位での連携が取りにくくなる可能性があります。自由に席を選べることから、どこに誰がいるのかわかりにくいこともデメリットに挙げられます。すぐに依頼できない、質問事項の確認ができないなど、業務遂行の妨げになるかもしれません。
結局、いつも決まった席に座り、コミュニケーションの促進に繋がらないケースもあるでしょう。業務内容によっては、固定席のほうが円滑にコミュニケーションを取れて仕事がしやすい場合もあります。業務内容やチームの性質を踏まえて、導入を検討してみてください。
フリーアドレスの場合、社員がどこにいるかわからず声をかけにくい、何をしているか把握しにくいというデメリットがあります。仕事の進捗確認がしにくく、困っていることに周囲が気づかない可能性も考えられます。とくに、新人など仕事に慣れていない人が、相談できずに悩んでしまうかもしれません。あるいは、周囲の上司・先輩の仕事を見ながら覚えることができずに、成長の妨げになってしまうこともあるでしょう。
また、業務によってはノートパソコンだけでなく、紙の書類や文房具・共有のカタログ資料などをデスクに保管している人もいます。フリーアドレスでは、そのような物を管理できないため、その都度持ち運びをする必要があります。物の管理が面倒なだけでなく、重要な書類や資料の紛失にもつながる恐れがあるため、管理方法を考えなければいけません。
フリーアドレスのメリット・デメリットはわかりました。では、実際に導入する際にはどのようなことを意識するとよいのでしょうか。
出社している人がどこで業務を行っているかを、部署・チーム内でしっかりと把握しておくようにします。テレワーク・リモートワークを同時に行っている場合は、出社か在宅勤務なのかの情報も共有するようにしましょう。
WEB上で居場所を確認できるアプリやツールもあります。社員の出社状況をオンラインで管理できれば、テレワーク・リモートワークを行っている場合でも、コミュニケーション手段を選びやすくなるでしょう。チャットツールなどを利用して、こまめにコミュニケーションを取れるようにしてみてください。
フリーアドレスをなぜ取り入れるのか、目的を明確にしておく必要があります。部署・チームの垣根を越えたコミュニケーションの促進を図りたいのであれば、フリースペースを設けて大きなテーブルをシェアする方法がよいでしょう。デスクの数を減らしながらも集中して作業に取り組めるようにしたい場合は、パーテーションを設置したデスクスペースがあるとよいかもしれません。
また、オンラインミーティングを行う時のために、専用の部屋やテレブースなどを利用できるようにしておくことも必要です。オフィス内で、どのような人がどういった仕事を行うかを整理して、ゾーニングやデスクレイアウトを検討してみてください。
固定席の場合は、デスクに収納キャビネットや引き出しが用意されており、継続的に利用ができる場合が多いでしょう。しかし、フリーアドレスでは、次にそのデスクやテーブルを誰が使うかわからないため、業務で必要な道具や書類を常に携帯しなければいけません。
書類を頻繁に使う場合は、持ち運ぶ負担も大きく紛失や情報漏洩の危険も高まります。そのため、できる限りペーパーレス化を進めて、オンライン上で業務が完結する仕組みを作ることが大切です。テレワーク・リモートワークの併用にも必要なことであり、印刷にかかるコストの削減にもつながります。
テレワーク・リモートワークの普及に伴い、積極的な導入を進める企業が増えてきたフリーアドレス。他部署とのコミュニケーションの促進により、新たなアイデアが生まれるでしょう。また、ムダなスペースを減らし効率よく業務に取り組める方法としても有効です。
しかし、出社している人がどこにいるかわかりにくい、物の管理が難しいといったデメリットもあります。業務の性質によって、向き不向きがあるともいえるため、本当に必要な制度かどうかをしっかり検討し、人・物の管理やオンライン業務への切り替えなどを同時に進めるようにするとよいでしょう。