近年、フリーランスの活躍やテレワーク・リモートワークの普及によるオフィスの縮小などから、スモールオフィスが注目されています。また、スタートアップ企業で少人数の従業員で運用するケースも増え、小さくても効率よく仕事に取り組める環境は今後ますます需要が高まるのではないでしょうか。
そこで本記事では、スモールオフィスの特徴やメリット・デメリット、実際に作るときのポイントを詳しく解説します。小さなオフィスを検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
スモールオフィスには、明確な条件やルールはありません。元々は「SOHO(ソーホー)」のことを指していました。これは「Small Office / Home Office」の頭文字をとって作られた言葉です。自宅や数人程度が働ける広さのオフィスを仕事場としている、個人事業主やフリーランスが該当します。
自宅をオフィスとする「ホームオフィス」や、コワーキングスペース・シェアオフィスなどのサービスオフィスもスモールオフィスに含むケースもあります。また、数人から10人程度の従業員が働く小規模オフィスもスモールオフィスと言ってもよいでしょう。
近年では、テレワーク・リモートワークの普及・定着に伴い、場所を選ばない働き方も一般化してきました。このような働き方が増えたことで出社人数が減少し、オフィスの縮小を図る企業も増えています。インターネットを使えば仕事がある程度完結する仕事内容であれば、通信インフラやOA機器がそろった環境であれば、どこでもオフィスになります。そのような時世もあり、スモールオフィスの需要は高まっています。
スモールオフィスの形態はさまざまですが、規模を小さくすることで得られるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
通常の賃貸オフィスに比べて、初期費用を抑えることができます。そもそも面積が広くないことから賃料が安い傾向があり、家具や什器なども少なくて済むからです。入居時の設備設置・内装工事費用も削減できるでしょう。また、シェアオフィスやコワーキングスペース・レンタルオフィスなどを利用する場合は、敷金・礼金・仲介手数料がかかりません。入会金が必要になるケースもありますが、賃貸契約を結ぶよりは安価です。
オフィスを運用するには、賃貸料だけでなく、電気代や空調代などのランニングコストもかかります。小さなオフィスであれば、それらにかかるコストは広いオフィスに比べて安く済ませることが可能です。また、前述にもあるコワーキングスペースなどでは、これらの光熱費に加えてインターネット通信環境もすでに整えられています。施設の使用料金に含まれているため、ランニングコストを減らすことができるでしょう。
オフィス用に賃貸物件を探す場合でも、比較的見つかりやすく安い傾向がみられます。オフィス利用が可能なマンションの1室を事務所とすることもできます。条件に合う物件数が多いことから、駅に近い・人通りの少ない環境など求める条件に合うオフィス空間を見つけやすいでしょう。
スモールオフィスは、ワークスペースやミーティングルームなどが一つの空間に集約されているケースが多くなります。従業員同士あるいは来訪者とのコミュニケーションが取りやすい環境です。また、コワーキングスペースを利用する場合は、ほかの利用者との交流を図る機会も増えます。新たなビジネスのチャンスのきっかけがつかめるかもしれません。
スモールオフィスには、デメリットもあります。注意する点にも着目し、事業に合ったスタイルを検討してみてください。また、必要に応じて対策を取ることも重要です。
大規模なオフィススペースを探すより、スモールオフィス用の物件数が多い点がメリットであるとお伝えしました。しかし、主要駅に近いエリアは人気が高く、希望するタイミングに空いていない可能性があります。条件に合う物件が見つかったら、早めに契約を進められるように準備をしておくとよいでしょう。資金だけでなく、内装や必要な家具などもあらかじめイメージしておき、施工業者も目星をつけておくとスムーズに進められます。
限られたスペースで業務を行うため、公開前の社内決議や外部に漏洩してはいけない情報が来訪者の目に留まりやすくなります。また、コワーキングスペースやシェアオフィスなどでは、ほかの利用者と共同利用をする特性上、情報漏洩の危険が高くなるでしょう。セキュリティ対策をしっかり行う必要があります。
コワーキングスペースやシェアオフィスは、利用できる時間帯が決まっています。業務を行う時間帯に合うかどうか、あらかじめ確認しておきましょう。また、座席数や部屋数に限りがあり、予約制の場合、使いたい時間に空いていない可能性も考えられます。事業内容に合わせて、必要なときに確実に使えるオフィスを利用するようにしてみてください。
コワーキングスペースやシェアオフィスではなく、自社専用のスモールオフィスを作るときには、メリット・デメリットを踏まえた計画が必要です。ここでは、スモールオフィスを作るときのポイントを解説します。
限られたスペースを有効に利用するため、業務内容に合うゾーニングと家具レイアウトが重要です。ゾーニングとは、機能ごとに空間を区分けすることを言います。例えばオフィスでの区分に挙げらえるのは、エントランス・ワークスペース・休憩スペース・ミーティングルーム・応接室・トイレ・給湯室などです。すべての機能をわけて用意するスペースがない場合は、ミーティングルームと応接室を兼用する、エントランス(受付)はあえて設けないなどの工夫をしてみてください。
また、デスクを固定とするか自由に選べるフリーアドレスにするかも決める必要があるでしょう。出社と在宅ワークを併用する場合や勤務時間が固定されていないフレックス制、あるいは営業職で外出が多い場合などは、フリーアドレスが向いています。
スモールオフィスはその名の通り、面積の小さなオフィスです。限られた空間に仕事に必要な家具や什器を設置し、空間に間仕切りを用意する必要もあるでしょう。壁を設置すると、視線が遮られ圧迫感により窮屈さが増してしまいます。そこで、オープン収納家具や透明なパーテーションなど、視線抜けがある間仕切りを利用するとよいでしょう。収納家具も背の低い物を選べば、席に座った状態でも抜け感があり広さを感じやすくなります。
デスク・チェア・OA機器類など、業務に必要な家具・機器は数多くあります。それに加えて、書類・資料・カタログ・文房具などの細かな物が多いため、しっかりと収納を用意しなければなりません。しかし、限られた広さしかないスモールオフィスでは、十分な収納スペースを確保できない課題があります。後から収納を追加すると、動線を邪魔する可能性も高くなるでしょう。オフィスの設計段階で、十分な収納スペースを確保できるようなゾーニングやレイアウトを検討してみてください。あらかじめ、業務内容に即した収納量を把握しておくことも大切です。
オフィスは、一日の長い時間を過ごす場所です。集中して業務に取り組めるだけでなく、居心地のよい空間でなければなりません。スモールオフィスは、一部屋にさまざまな機能が集約されるため、煩雑な印象になりがちです。そのため、インテリアにまとまりを持たせて、統一感のある空間にすることをおすすめします。
オフィス家具やOA機器は、無機質で冷たさを感じやすいかもしれません。チェアの素材や張地、リラックススペースや応接用のソファのデザインや素材などにこだわり、居心地のよい空間作りをしてみてください。インテリアグリーンやアートを取り入れると、より雰囲気のよいオフィスになるでしょう。
スモールオフィスはワンルームの場合もあります。そのため、社外の人との打ち合わせや商談もワークスペースで行わなければならないかもしれません。従業員が作業しているパソコン画面や机上に置かれた書類が、うっかり来訪者の目に入る可能性も考えられます。来訪者を通す場所にパソコン画面が見えないようなデスクレイアウトにする、パーテーションを設けるなどの対策が必要です。
また、受付スペースがなく、関係者以外の人がダイレクトにオフィス内に入ってきてしまう危険性もあります。とくにスモールオフィスは、人が少ないあるいは不在になる可能性があることから、不審者に狙われやすいと言われています。オートロック機能が備えられた施錠や入退室管理システムを導入して、部外者の侵入を防ぐようにしましょう。
スモールオフィスは、コミュニケーションが取りやすい環境と言えます。しかし、ほかの人の作業音や電話・オンラインミーティングの声が邪魔になり、集中して作業に取り組みにくいデメリットもあります。そのような状況が生まれやすい場合は、個人ブースの設置やミーティングルームの活用など、集中して作業ができる場所を作るとよいでしょう。
フリーランスや個人事業主の増加、働き方の変化に伴うオフィス縮小などの理由から、スモールオフィスの需要は高まっています。スモールオフィスの一つでもあるコワーキングスペースやシェアオフィスの利用も、フレキシブルな働き方にマッチしたオフィスのあり方と言えるでしょう。狭さを感じさせない空間設計やセキュリティ管理に注意すれば、働きやすい自社専用のスモールオフィスを作ることができます。コーディネートにもこだわって、居心地のよいオフィスを作ってみてください。