近年、ソファ席を設けるオフィスが増えています。昔ながらの固定席のみのオフィスを一新し、コミュニケーションを活発にさせる方法を模索している企業も多いのではないでしょうか。他社のオフィスでソファ席を見て、取り入れたいと考える方もいるかもしれません。
オフィスにソファ席を設けると得られるメリットはあるのでしょうか。デメリットや気をつけるべき点があるのかも気になります。
そこで本記事では、オフィスのソファ席、とくにトレンドなっている「ファミレス席」について詳しく解説します。メリット・デメリットや、ファミレス席を設ける際のポイントだけでなく、WORK KITが手がけた事例もご紹介。ソファ席でオフィスを活性化させるヒントを見つけてみてください。
オフィスのソファ席でも注目されているのが「ファミレス席」です。ファミレス席とは、
向かい合わせのシンプルなソファ席のことで、真ん中にテーブルを配置しています。ファミリーレストランによくある座席のため、ファミレス席と呼ばれています。
ファミレス席は、向かい合って座り会話ができるようになっているボックス席です。高い背もたれやパーテーションを併用してセミクローズドな空間を作れます。会議室のような閉塞感がなく、完全なオープンスペースに比べて周囲から隔離されるため、気軽なミーティングや集中して作業に取り組む場として活用可能です。4~8名で利用できるサイズが多く、ホワイトボードやモニター画面を設置して利用するケースもみられます。
オフィスに導入されているファミレス席は、気軽なミーティングや作業スペースとしてだけでなく、さまざまな目的で利用されています。ここでは、具体的な用途や目的を考えてみます。
「ファミレス席」はソファ席といっても、リビングでくつろぐようなタイプではありません。ダイニングテーブルと同じような高さのテーブルが用意されているため、パソコン作業をはじめとした執務スペースとして利用可能です。疲れたときには背もたれに背中を預けてリラックスできます。背もたれの高いソファやパーテーションを併用したセミクローズド空間は、周囲の視線を感じにくく集中して業務に取り組めるでしょう。
通常、4~8名ほどの人が利用できる「ファミレス席」は、ミーティングスペースとしても使えます。チームで気軽な話し合いを行いたいときには、とても便利なスペースです。モニターやホワイトボードをあらかじめ備え付けておけば、ミーティングもスムーズに進められます。しかし、機密性が低いため、秘匿性の高い重要決議の場としてはふさわしくありません。話し合う内容や目的によって、クローズドな会議室と使い分ける必要があります。
来客の待ち合いスペースや簡単な商談の場としても利用できます。「ファミレス席」は、適度に周囲と切り離されながらも完全に閉じられていない開放的な場所です。閉鎖的な会議室や応接室に比べて、リラックスした状態で会話ができます。積極的な情報交換や前向きな商談につながるのではないでしょうか。一方で、周囲に声が漏れる可能性が高いことから、秘匿性の高い商談には適していません。ミーティングスペース同様、目的・用途によっては、応接室や会議室を利用してみてください。
休憩や昼食のための場所にすることも可能です。名称の由来になっている「ファミレス=ファミリーレストラン」は、くつろいで食事ができる場所です。同僚と会話を楽しみながら食事をしたり、ブレイクタイムにお茶やコーヒーを飲んだり、リラックスして過ごせるでしょう。しかし、食事の匂いや雑談の声が商談や仕事をしている人の妨げになるかもしれません。利用時間を制限する、休憩に利用できる席を限定するなどの工夫が必要です。
さまざまな用途で利用できる点は、ファミレス席のメリットと言えるでしょう。ここでは、利用用途の幅が広いこと以外にも得られるメリットを、具体的に紹介します。
これまでお伝えしてきた通り、ファミレス席はセミクローズド空間です。開放感があり周囲から適度に遮られているため、気軽な話し合いに適しています。
閉鎖的な会議室では、話し合いが煮詰まりディスカッションが進まなくなることがあります。一方で、同僚との気軽な会話のなかで、新しいアイデアが生まれた経験を持つ方もいるのではないでしょうか。ファミレス席はリラックスした状態で会話ができ、積極的な意見交換がしやすいでしょう。
また、テレワーク・リモートワークが定着し、オンラインでのミーティングも増えています。ファミレス席は、周囲の視線をある程度遮ることができるため、オンラインでのコミュニケーションもしやすい環境です。近年の働き方にもマッチしたスペースと言えます。
会議室やミーティングブースが新たに必要になっても、オフィス内に十分な広さを確保できないと悩んでいる経営者の方もいるかもしれません。ファミレス席はソファとテーブルだけで、4~8人分のミーティングスペースを作ることが可能です。背もたれやパーテーションで仕切るオープンな形状のため、狭い場所に配置しても圧迫感が少なくなります。そのため、限られたスペースにも設置しやすいでしょう。
また、部屋を増設する場合は、大掛かりな工事をしなければいけません。換気・空調設備や照明の増設も必要です。しかし、ファミレス席は、今ある空間のレイアウトを変更して設置できるためコストを抑えられます。
執務に集中している個人デスクや閉鎖的な会議室では、カジュアルなコミュニケーションが取りにくいでしょう。オフィス内で気軽に利用できる場所は、コミュニケーション促進を図れます。オフィス内で従業員が自由に利用できるファミレス席なら、他部署の人とも顔を合わせる機会ができ、部署を超えたつながりを持てます。他部署の業務や課題を知るきっかけになり、連携ミスによるトラブル軽減につながるのではないでしょうか。
チームや部署を超えたメンバーとの雑談の中から新しいアイデアが生まれるかもしれません。コミュニケーションの活性化は、生産性の向上や従業員のモチベーションアップにつながります。活気あるオフィスは来訪者にもポジティブな印象を与えることができ、企業価値を高められます。
一日の長い時間を過ごすオフィスは、居心地がよくストレスが少ない場所でなければいけません。大人が集中できる時間は、50~90分ほどですが、適度に休憩を取れば疲労を回復させて再び集中して作業に取り掛かれます。また、ストレスによって引き起こされる従業員の心身の疲労や集中力低下は、企業にとって重要な課題です。近年、そのような観点から、休憩スペースを設けることが重要視されています。
ファミレス席は、休憩スペースとしても使えます。休憩のために専用の部屋を設けるのは、大掛かりで大変だと感じる方もいるでしょう。ファミレス席なら設置しやすく、従業員も気軽に利用しやすいのではないでしょうか。心身ともに健康的に働けることで、従業員の生産性向上をもたらし、会社の業績向上にもつながります。
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カフェのような居心地がよくおしゃれな空間は、過ごす人の気持ちをポジティブにしてくれます。ファミレス席を含むソファ席は、オフィスの雰囲気を高めるアイテムの一つです。そこで、オフィス全体のインテリアになじむおしゃれな演出をして、従業員のモチベーションアップにつなげるとよいのではないでしょうか。
オフィスは企業を体現する場であり、そこで働く人の雰囲気は取引先にも伝わります。ファミレス席を設けたおしゃれなオフィスを見た就職活動中の学生や転職者にも、魅力的に映るでしょう。おしゃれで活気あるオフィスは企業価値を高める効果もあり、採用率アップにもつながります。
ファミレス席は、作業効率向上や従業員のモチベーションアップなどのメリットがたくさんあります。しかし、一方でデメリットもあるため、利用に際して注意が必要です。ここでは、オフィスのファミレス席を利用する際のデメリットについて解説します。
ファミレス席は、中央のテーブルを挟んで向かい合わせに座る作りになっています。一般的には、4~8人程度が利用できる広さで作られています。そのため、大人数での会議やミーティングには向いていません。なお、ファミレス席のソファサイズ目安は以下の通りです。
【幅】
4人掛け(2人席):約1m50cm
6人掛け(3人席):約1m80cm
8人掛け(4人席):約2m10cm
【奥行】
約50~60cm
【背もたれの高さ】
約70~1m50cm
よりクローズした席にしたい場合は、背もたれを高くするかパーテーションを設けます。天井までつながっているボックス席にするケースもあります。
ファミレス席は、ソファの背もたれやパーテーションを用いてオフィス内の別空間と間仕切ります。壁で囲われた空間ではないため、席での会話は周囲に漏れてしまいます。また、視線を完全に遮れないので、書類やパソコン画面が近くの人に見える可能性がある点にも注意が必要です。このように、情報漏洩の危険性があるため、機密性・秘匿性の高い話はできません。
席を利用している人の会話が漏れるだけでなく、周囲の声・音が会話の妨げになる可能性も考えられます。これまでお伝えした通り、ファミレス席の用途はさまざまです。集中して個人的な業務を行っている人もいれば、ミーティングや休憩に利用する人もいます。利用者がお互いに配慮をして、大きな声での会話や雑談を控えるようにすることも大切です。
ファミレス席を設けるエリアで騒音が発生しやすい場合は、パーテーションを高くして周囲からの音をできる限り遮るようにしてみてください。また、吸音効果のある照明器具を併用するような工夫をしてもよいでしょう。
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ファミレス席をオフィスに導入するのであれば、コミュニケーション促進が図れ、活発な雰囲気をもたらすスペースにしたいのではないでしょうか。また、多くの従業員に、気持ちよく利用してもらいたいでしょう。そこで、ここでは、利用価値の高いファミレス席を作る際に意識するとよいポイントを紹介します。
ファミレス席の魅力の一つが、使用用途の幅の広さです。ミーティングだけでなく、個人の仕事や休憩にも使えることを周知しておきましょう。しかし、休憩時の雑談が商談の妨げになるようなケースも出てくるため、気をつける必要があります。お互いに声のボリュームを抑えるような配慮ある使い方をする、使用する時間帯を制限するなどのルールを作ってもよいかもしれません。
ファミレス席は、限られたスペースに作ることができます。普段利用しない場所を有効に活用できるでしょう。例えば、オフィスビルでは窓側は柱による凹凸があり、通路以外に使いにくいスペースです。そのような窓際にファミレス席を並べてみてはいかがでしょうか。開放的な雰囲気になり、窓からの景色を楽しめるため、よりリラックスして過ごせるようになります。
打ち合わせや執務スペースとして利用するファミレス席ですが、あえて空間の間仕切りとすることもできます。背もたれを高くして、パーテーション代わりに使ってもよいでしょう。通路や執務スペースを隔てるアイテムとして、活用可能です。
小さめのテーブルとチェアを組み合わせた、カフェのような打ち合わせスペースもよく見られます。ファミレス席同様に適度な距離感で会話ができ、個人的な仕事をすることもできます。しかし、ファミレス席は、そのようなオープンなスペースと異なり視界や音を遮れる点に魅力があります。周囲の視線や音を適度に遮りながらも、閉塞感のないセミクローズド空間を生かしたレイアウトを計画してみください。
従業員の満足度を高めるためにも、おしゃれで居心地のよいスペースを意識してデザインにもこだわってみましょう。ファミレス席は、ソファやテーブルはシンプルなので、目を引くデザインにするのは難しいかもしれません。しかし、あえて目立たせる必要はなく、オフィス全体に統一感があるコーディネートをすることが重要です。また、カラーコーディネートも大切です。ソファの張地にコーポレートカラーを取り入れて、企業のアイデンティティを表現してもよいかもしれません。
WORK KITでは、ソファ席・ファミレス席を導入したオフィスデザインを手掛けています。数ある事例の中から、厳選して3つの事例をご紹介しますので、ファミレス席の導入の参考にしてみてください。
ファミレス席だけでなく、多くの人が交流できるソファスペースや一つの部屋のようなソファブース席を導入したオフィスです。社員数の増加やテレワーク・リモートワークの定着に伴うオンライン会議のために、固定席だったオフィスをリニューアルしました。
情報共有・交換が活発に行われ、課題解決をチームで解決するためのオープンな環境にすることがデザインコンセプトです。窓際に並ぶファミレス席では、ゆったりとチームでのミーティングが行えます。また、造り付けの大きなソファを備えたコミュニケーションエリアでは、従業員が和気あいあいと会話を楽しめます。
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美と健康に関する商品のブランド育成支援・販売事業等を行っている企業のオフィスです。ワークスペースだけでなく、TELブースやベンチ、ソファ席、畳の小上がりスペースなどを設けています。また、フリースペースに、コの字型のファミレス席を作りました。
業務内容によって適切な場所を選び、気分転換を図りながら仕事に取り組むことが可能です。将来的な増員を見据えて、ゆとりあるレイアウトや動線計画を行っています。全体的にやさしいカラーコーディネートでシンプルにまとめた和モダンインテリアが魅力的です。
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ネイビー・ブルー・ホワイトのカラーコーディネートがおしゃれな、ワンフロアのオフィスです。「River & Bay」をコンセプトに、海辺のリゾート感があるカフェをイメージしたラウンジを設けています。オフィス全体の清潔感と清涼感のあるコーディネートが魅力的です。
窓際には、背もたれの高いファミレス席を並べて作りました。開放的な雰囲気の中で、気持ちよく過ごせます。カウンター席やテーブル席などもあり、社員それぞれが対応している業務に適したスペースで自由に働くことができます。可動式の家具を多く導入し、将来的な増員にも対応できるフレキシブルな設計です。
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これまでの固定席が並ぶ無機質な印象のオフィス。働き方が大きく変わり、オフィスの使い方にも変化がみられます。健康的に心地よく働き続けるためには、居心地のよいオフィス空間であることが重要です。そこで近年、オフィスにリビングのようにくつろげるソファ席を設ける会社も増えてきました。
今回ご紹介した気軽なミーティングや休憩スペースとしても利用できる「ファミレス席」も注目されています。向かい合わせに座るファミレス席は、さまざまな使い方ができ、スペースの有効活用が可能です。ファミレス席を導入して、従業員が働きやすくモチベーションが上がるオフィス作りを検討してみてください。