テレワーク・リモートワークが浸透し、出社率の低下が課題になっている企業も増えています。雑談やディスカッションの機会が減り、コミュニケーション不足が引き金となるミスやトラブルが表面化しました。若手社員の教育や社歴の短いメンバーへのフォロー不足の悩みを抱えているリーダーもいるのではないでしょうか。
そのような企業では、事業成長のためにもオフィス環境の整備は急務の一つです。そこで本記事では、オフィス離れの理由を踏まえて、オフィスの価値や意義を見直します。また、価値あるオフィスに必要な要素やその要素をおさえた事例を紹介します。ぜひ、オフィスリニューアルや移転を考える際の具体的なヒントを見つけてみてください。
「出社は当たり前」と考えられていた時代から一変。働く場所を変えても、これまでと同じあるいは近い状態で続けられる仕事が増えています。そのような観点からも、オフィスに対する価値観に変化がみられます。なぜ、いまオフィス離れが進んでいるのでしょうか。
2020年に世界を襲ったパンデミックは、リモートワークの急速な普及を後押ししました。それ以前から「働き方改革」の一環として、ワーケーションをはじめとするリモートワークは推進されています。しかし、コロナ禍による「強制的」なリモートワークは、オフィス離れに拍車をかけた大きな要因の一つです。
テレワーク・リモートワークを行うには、インターネット環境の充実が不可欠です。コロナ禍では、オンラインミーティング用のツール・チャットシステム・電子書類などが発達しました。そのため、対面でのコミュニケーションがなくても円滑に仕事が進む基盤が整ったといえます。
対面を基本とする飲食店でも、テイクアウト・宅配への切り替えが積極的に行われ、自宅で仕事をしながら外食気分を味わえます。また、旅行ができない環境からホテル・旅館事業がワーケーションの場として客室を提供するためのサービスを構築が進みました。このように、オフィス以外でも快適に働ける選択肢が増えたこともオフィス離れの要因かもしれません。
テレワーク・リモートワークの普及に伴い、これまで「仕方ないこと」と思っていた通勤・退勤の苦労から多くの人が解放されました。東京都内に通勤する人の往復移動時間は、40分~1時間30分ほどです。通退勤時間がなくなれば、朝ゆっくり眠れる、余暇にあてられるなど、時間的な余裕が生まれます。コロナ禍に、オフィスに通わなくても仕事ができることを体感し自宅で仕事をしたいと考える人が増えました。
オフィス離れは、強制的な状況下に急速に進みました。しかし、テレワーク・リモートワークにはメリットがなければ、オフィスに戻りたいと考えるでしょう。テレワーク・リモートワークを続けたいと感じるメリットとは、どのようなものなのでしょうか。
オフィス離れの大きな理由は、通退勤時間がなくなることです。通退勤がなくなれば、移動にかかる時間をそのまま自由に使えるようになります。また、満員電車に長時間揺られる状態は、疲労につながります。出社した時点で疲れたと感じる方も多いでしょう。テレワーク・リモートワークは、通退勤時にかかる心身のストレスを軽減できます。
テレワーク・リモートワークは、主に自宅で行う方が多いでしょう。自宅では、人の目を気にせず、慣れ親しんだ空間で作業を行います。複数の人が利用するオフィスでは個別対応ができない冷暖房の温度も自分好みに設定可能です。休憩時間にはリビングのソファでゆっくり休む、ベッドで30分ほどの昼寝をするなど、十分な休息が取れます。しっかりリフレッシュができれば、仕事への集中力も高まり、効率も上がるでしょう。
テレワーク・リモートワークには、メリットもたくさんあります。一方で、課題も明らかになってきました。オフィス回帰を目指すには、テレワーク・リモートワークの課題を把握し、解決できる場にする必要があります。具体的にどのような課題・デメリットがあるのか考えてみましょう。
オフィスでは、チームメンバーの顔を見ながら相手の状況を確認できます。しかし、テレワーク・リモートワークでは、離れた場所にいて相手が何をしているのかわかりません。電話・メール・チャットが、主なコミュニケーションツールになります。電話をかけるタイミングを見計らいにくく、メール・チャットはレスポンスを待つタイムラグにストレスを感じるかもしれません。
このような小さなコミュニケーショントラブルは、相談がしにくい状態を生み出します。若手社員や業務に慣れていないメンバーは、誰にいつ相談してよいかわからず、孤独感を覚えるケースが増えているようです。先輩や上司も後輩・部下の顔が見えないため、相手が不安・不満を抱えている状態を見逃しやすくなります。
コミュニケーション不足は、ミスの発生につながります。前述のとおり、若手社員はわからないことがあっても相談できずに抱え込んでしまい、ミスやクレームが肥大化してから発覚する可能性も考えられるでしょう。他部署との連携もとりにくくなり、やり取りに時間がかかるかもしれません。
連携不足・ディスコミュニケーションによるトラブルは、人間関係にも影響を与えます。ますます、コミュニケーションが取れなくなり、ミスが増えるような悪循環を生み出してしまいます。
革新的なアイデアは、思わぬ雑談から生まれることがあります。テレワーク・リモートワークでは、必要な時に必要なことだけを確認し合うコミュニケーションになりがちです。何気ない日常会話が減ると、思いつきを共有するタイミングを逃してしまいます。せっかく、業務改善や商談成立に結び付くアイデアがあってもそのまま消滅してしまうかもしれません。
自宅にプライベートな空間が用意できない場合は、仕事に集中できない可能性があります。ダイニングテーブル・チェアは、長時間の作業に適していないかもしれません。また、家族がいて、会話や気配が邪魔することもあるでしょう。くつろぐために設計されたリビングでは、作業に適した照明が用意できないケースも考えられます。
また、テレワーク・リモートワークは、インターネット環境がしっかりと整っている必要があります。Wi-Fiが用意できるか、コピーやスキャンができるかなど、オフィスにある環境を自宅に用意できないと集中して作業ができないでしょう。
企業理念の共有や管理者との接触が少ない状況は、従業員の企業に対する想いが高まりません。また、コミュニケーション不足は、やっている仕事に対する評価を得られにくい環境になります。孤独感を感じやすい点を加えると、さらに仕事における存在意義を感じにくくなり、ワーカーのモチベーションが下がります。
テレワーク・リモートワークには、メリットも課題もあることがわかりました。コロナ禍で急速なに進んだテレワーク・リモートワークですが、出社を組み合わせたハイブリッドワークを行う企業も増えています。社会情勢の変化に伴い、オフィスの価値も変化しているといえるでしょう。そこで、オフィスへ出社するからこそ得られるものについて考えてみます。
テレワーク・リモートワークの課題は、主にコミュニケーション不足に起因しているものが多い印象です。オフィスの一番の価値は、コミュニケーションの促進が図れる点にあるといえるのではないでしょうか。
オフィスに出社すれば、朝の挨拶に始まり、雑談や業務上の気軽な相談など、顔を見ながら様々な会話が繰り広げられます。テレワーク・リモートワークでは、1対1での通話は行う機会があっても、たまたま居合わせた人と話をするケースはほとんどありません。このように、予定調和のないコミュニケーションは思わぬアイデアを生み出すことがあります。
直接相手の状況確認ができる環境では、忙しいのか余裕があるのかも判断しやすくなります。タイミングを見計い、相談しながら仕事を進められるため、不安要素を1人で抱え込むことなく早い段階で解決に導けます。ミス軽減にもつながり、業務効率アップ・サービスや業績の向上が見込めるでしょう。
オフィスに集まることで、教育・研修・ワークショップが行いやすくなります。また、グループワーク・ディスカッションもスムーズに行えます。オンラインでは「話すタイミングがつかみにくい」「音声が聞こえにくい」などの状況から円滑な話し合いが進まないことがあります。その結果、議論が活発にならない、積極的な発言が導き出せない状況になるのではないでしょうか。
実際に顔を見ながら話し合いができれば、話者に向かい合い反応をみながら話を進めることができます。表情やリアクションから、理解度が高いのか、あるいはうまく伝わっていないのかの判断もしやすくなるでしょう。そのような「会話の温度」がつかみやすいミーティングでは、参加者が意見を出しやすく積極的な状態になります。
テレワーク・リモートワークによる課題があきらかになったことで、効率よく仕事ができる場所としてのオフィスではなく、イノベーションを生み出す場としての価値も見直されています。
デスク・チェアといった家具や複合機や大きなディスプレイモニターなど、仕事に必要なアイテムをすべて自宅で用意するのは難しいのではないでしょうか。テレワーク・リモートワークは、インターネット回線を使って仕事のやり取りをすることが大前提となっています。そのため、高速な通信回線やセキュリティの設定も必要です。ハイブリッドワークの普及から、オフィス内でもオンライン会議や商談がしやすいようなテレブースの設置も進んでいます。
オフィスなら、このような「仕事をする環境」がしっかり整っているため、ストレスなく業務に取り組めます。また、休憩スペースやジムなど、気分転換ができる空間を設ける企業も増えました。チームや部署を超えたコミュニケーションの場としても有効に使えます。オフィスは「ただ仕事をする場所」以上の目的や価値が求められています。
現代のオフィスは「企業の価値」を表現する場所でもあります。社員だけでなく来訪者にも、どのような会社なのかをアピールするための場といってもよいでしょう。画一的な空間に、無機質なデスクとチェアが並べられた旧態依然としたオフィスではなく、企業の特徴を伝えられる空間デザインはこれからのオフィスに必須の要素といえます。
コーポレートロゴをあしらったエントランスデザインやコーポレートカラーを取り入れた内装も、企業アイデンティティを伝える方法の一つです。企業の歴史を振り返るエリアや取り扱っている商品を展示する空間を作れば、社内外に企業らしさをシェアできます。働く従業員の帰属意識も高まり、モチベーションアップにもつながるでしょう。
オフィス価値の変化に伴い、求められている要素もこれまでとは変わってきました。では、現代のオフィス、そしてこれからのオフィスに必要な要素とはなんでしょうか。
テレワーク・リモートワークが普及している今、「わざわざ」オフィスに来て仕事に取り組む意義は、コミュニケーションの取りやすさにあるとも言えます。チーム内外に関わらず、会話ややり取りがしやすいデスクレイアウトを考えてみてください。誰でも使えるフリースペースもおすすめです。
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ハイブリッドワークの環境下では、依然としてオンラインでの会議や商談も行われます。そのため、集中してオンラインでの会話ができるようにTELブースを設けるとよいでしょう。また、固定席の空きを有効活用できるフリーアドレスや大きなテーブルを共有して仕事をするなどの工夫も必要です。
仕事を効率よく進められる環境も大切です。それぞれの業務に適した広さのデスクや体に負荷のかかりにくいオフィスチェアを選んでみてください。個人ブースを設けて、集中できる環境を作ってもよいでしょう。適度な休息は、作業効率アップにつながります。仕事場を離れてしっかりリフレッシュできる空間も必要とされています。
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複合機やOA機器がしっかり用意され、滞りなく業務を進められるのがオフィスの魅力の一つです。安定的に全体を明るくする照明や空調設備も、働きやすさを感じる理由になります。同時に、自宅だからこそ得られたリラックス感や居心地のよさもオフィスには必要です。ソファや畳スペースなど、くつろげるアイテム・スペースを用意してみましょう。
おしゃれなオフィスは、いるだけで気分が高まります。人生100年時代を迎える現代では、楽しく健康的に長く働きたいと考える人も増えています。通いたくなるオフィスなら、仕事自体を楽しめると同時に人生のモチベーションも上がるのではないでしょうか。ジムやライブラリースペース・カフェなどのプラスアルファの要素もあると喜ばれます。
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勤めている会社に魅力がなければ、従業員も働く意欲が薄れてしまいます。企業理念が伝わり、自分の存在意義を感じられるオフィスが、これからの時代には求められるでしょう。オフィスのカラーコーディネートや用いる家具などで、それぞれの会社らしさを表現することが大切です。
数多くのオフィスデザインを手掛けるWORK KIT。時代を見据えた新しい視点で設計したオフィスデザインを厳選してご紹介します。
ITサービスを中心にした幅広い事業を展開している企業のオフィスリニューアル事例です。これまでよくあった「ワークデスクが規則的に並べられたオフィスレイアウトを一新したい」というリクエストにこたえたデザインです。オフィス中央に置かれた変形テーブルの中心には、インテリアグリーンが植えられ、囲うようにチェアを設置しています。
通路とワークスペースの間仕切りには、視線の抜けがある低めの収納を置きました。圧迫感を軽減し、窓側に作られた小上がりスペースまで続く抜け感があります。壁際の個人で利用できるデスク付きソファブースや、小上がりスペースの掘りごたつ式デスクなど、さまざまな働き方に合わせて自由に席を選べます。
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高速バス・夜行バスの運行を手掛ける企業様の事務所です。通りに面してガラス張りになっている目を引く建物は、1階・2階それぞれに通常のオフィスには珍しいエリアを設けています。
長距離移動をしてきた運転手の体調管理をするための場所として、仮眠室や体を動かすジムスペースがあります。また、ラウンジスペースにボルダリングが備えられ、従業員が自由に楽しんでいます。もちろん、しっか集中して事務作業に取り組めるワークスペースもあり、メリハリをつけて過ごせるオフィスとなりました。
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オフィスリニューアル事例です。「WFH=Work From Home(在宅勤務)」を含めた新しい働き方でフレキシブルなワークスタイルを実現しています。例えば、TELブース・集中席・フリースペースを用意して円滑なコミュニケーションが図れる空間になっています。
盲導犬利用者に配慮したレイアウトで、インクルーシブな企業文化が根付いた職場です。会社の歴史を表す年表や壁面グラフィックを取り入れて、企業のアイデンティティが従業員や来訪者にわかりやすく伝わります。企業ブランディングが徹底された魅力あふれるオフィスです。
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時代に合わせて働き方は変化しています。また、オフィスの必要性を迫られる事態を経て、改めてオフィスの価値の見直しを迫られているのではないでしょうか。従業員が生き生きと働き、事業が成長するためには、オフィスの内装デザインはとても大切です。これからの時代に通いたくなる価値あるオフィスにリニューアルしてみてはいかがでしょうか。