レイアウト図面を作成する際にはオフィス家具メーカーやオフィスデザイン会社に依頼をするケースが多いかと思いますが、その際に事前資料を用意しておくと計画がスムーズに進みます。
・登記簿謄本または概要書
登記上の所在地や防火地域、構造や階数、また敷地や建物、フロアーの面積などの情報が記載されている資料です。これは工事の際に防火対象物計画(使用開始)届として、入居テナントが管轄の消防署へ届出として提出する義務のある書類に必要な情報となります。
・貸し方基準または入居工事の手引
入居時における各種工事区分や工事の際の規則、搬入時の注意事項などが記載された資料となります。
・躯体図
入居ビルの躯体や柱などが記載され寸法が表記されています。
・天井伏せ図
照明や空調、防災設備など、天井に付帯する設備が記載された図面です。
それぞれの設備に分かれている事があります。
・電気系統図
入居テナントの利用できる回路などの記載されている分電盤の図面です。
*あれば尚可です。
これらはビルの管理会社に問い合わせることで取り寄せることのできる図面や資料です。
正式な入居契約前であれば、不動産仲介会社などに相談して取り寄せることも可能です。
オフィスデザイン会社との打ち合わせの際に今のオフィス感覚や思いつきで要望を伝えてしまうと思ったようなレイアウトになるまでにとても時間が掛かってしまいがちです。
打ち合わせの前に社内で事前に、今のオフィス環境における課題や移転後のオフィスへの要望などをある程度具体的にまとめて整理しておくことが大切です。レイアウト作成をしている上での課題が出た場合の判断もスムーズに進みます。
入居の契約期間でどのくらいの増員があるかを見込んでおくことも必要です。
また希望とするデスクサイズを事前に伝えられるとスムーズです。現状と同様か部署によってサイズが異なる場合があるかなどある程度イメージを固めて細かく検討してみましょう。
オフィスには会議室や役員室・サーバー室・リフレッシュスペース・倉庫スペースなど、各企業によって必要な施設は様々です。
それらの施設を作る際にまず無駄なスペースを作らないためにも、今のオフィスで本当に必要だったのか、また不足していたのかを把握しておくことも大切です。
新たな施設を作る際には運用後のイメージを考えてよく検討しておきましょう。例えば30名入るセミナールームを作って毎月1回しか使わないのであれば、近くの貸し会議室を調べてみるとそちらのほうが費用対効果が高い場合もあります。
数年保管の義務がある書類などを保管する倉庫なども貸倉庫の方が良いケースもあり、保管倉庫を作る面積でワークスペース充実させたり、新たな施設をレイアウトすることが可能となります。
オフィスレイアウトをする際に必ずしも理想的なレイアウトが出来るとは限りません。
物理的に入らないことや多くの個室を計画しすぎて空調や防災などの設備コストが大きくなり予算に合わなくなってしまうなどの理由が挙げられます。
そのような場合に何かを諦めるという選択肢が求められます。事前に優先事項が決まっていれば、オフィスレイアウトの再検討がしやすくなります。
オフィス移転を計画し色々な物件を内見をしている際に要望が膨らんで、これもあれもとなるケースがあります。移転を決定した時の理由から辿って考えると本来の優先すべき事項が明確になることもあります。
本来であればオフィスの物件探しの段階からレイアウトを検討して貸室面積を検討すると、このようなことが防ぎやすくなるのでおすすめしたい事項です。
事前に用意した図面はあくまでも竣工時の図面が多く、寸法や設備が変更となっている場合が多いこともあります。
オフィスレイアウトを作成する前にデザイン会社にそのような調査をお願いすることで実際の寸法を測定し、設備の把握や窓の位置・ロケーションなども確認してもらえることから、具現的なレイアウトプランが完成します。
事前に確認してもらうことによって、防災面や費用感などの懸念事項も検討しやすくなります。できること、できないことが明確になり計画期間やコスト面でも大きな効果が得られることが多いです。
オフィスレイアウトをする上でまず大切なのはゾーニングです。これはそれぞれの施設をエリアでまとめ、区割りするイメージです。
たとえば受付の近くに来客用の会議室や応接室をパブリックゾーンとしたエリアでまとめて配置、日頃あまり入らないケースが多い倉庫やサーバー室を同じエリアでまとめて配置するなど、それぞれオフィスビルの特性を活かしながらゾーニングすることで効率的でセキュリティ面でも配慮されたオフィスレイアウトになります。
会議室や役員室、またサーバー室や倉庫などの個室を作る際には、必ず防災設備と空調設備が必要となります。
これらを忘れずに設備費用の検討事項に入れてレイアウトを作成することを覚えておきましょう。
防災設備はビルによって付帯仕様が異なります。
一般的には煙感知器、熱感知器、スプリンクラーなどの消火設備が存在します。
また誘導灯や消火器などの設備もあり、これらは一般的にビルの管理会社もしくはビルの指定する設備業者が計画したレイアウトに基づき設計・工事を行います。
この他にも排煙計画なども考慮しながら計画することが義務となります。
オフィス移転のご担当者様の中には天井まで届かないパーティションなら防災設備がいらないと言われる方もいらっしゃいますが、最近ではそのような壁でもスプリンクラー設備の設置義務を指摘する管轄もありますので消防との事前協議が必要となるので注意しましょう。
またオフィスレイアウトを作成する際には法令で定められていた避難経路などを配慮した動線計画が必要となります。
このような専門的な要素が多い事項に対してオフィスデザイン会社が計画時に消防との協議をして確認をとり、基本プランができたタイミングで管理会社との協議に入る事で早期に課題を見出しながら実現へ向けたオフィスレイアウトを設計させていきます。
計画している個室に空調や換気などの設備がない場合もまた同様のケースでビルと協議しながら検討を進めていきます。
オフィスの防災設備は規制も厳しくなっており、このような配慮が不足しているオフィスデザイン会社も多いので会社や設計者、担当するプロジェクトマネージャーの経験値を確認することも安心して任せられる大事な要素です。
オフィスの通路動線は消防法で120cm以上を基準としています。これは人がすれ違うための最低の通路幅を意味しているものです。
十分な通路幅を設けることで空間としての印象も良くなります。不特定多数の人が行き交うオフィスでの片側通行を想定した動線はあまりおすすめしません。
オフィスの島と島の間となる通路の寸法は160cmから180cmが適正寸法といわれています。
座っている後ろを通る際に気にならない寸法であり、オフィスチェアーを引いてもぶつからないような距離でもあります。
また災害時に避難をする際、この動線があまりにも狭いと混乱を招いてしまう恐れもあります。座席の後ろが壁の場合、快適な動線は最低120cm。
座席の後ろが書庫や複合機であれば140cm以上を設定しておけば背面に座っていても気になりにくい距離となります。
スペースに余裕があれば多くの人が利用するような複合機や収納、家具などは配置しないことが望ましいです。
会議テーブルと会議室の壁は1200mmが適切でしょう。
この距離が狭まってしまうと会議室の奥に座っている方が途中退室する際、手前に座るメンバーが窮屈になってしまいます。
会議室の収容人数によってはこれに限らずですが、この基本以上の寸法を設定しておくと圧迫感の無い会議室で来訪者にも快適な空間で過ごしてもらうことが可能です。
また設置するモニターやホワイトボードなどの備品によって大きさを検討する必要があるので、事前に必要な設備を伝えレイアウトしてもらうことも重要です。
国内メーカーのオフィス家具のサイズは100cmから120cm、140cmと20cm刻みのサイズレンジが多く採用されています。高さは現在72cmが推奨されています。
以前は70cmの高さが基準でしたが、日本人の身長も大きくなり改めて算出された結果72cmとなっているそうです。
オフィス家具メーカーの調査によると日本企業の85%が長方形のデスクを採用しており、一人あたりのデスク幅は120cmから160cmが65%を占めているそうです。
職種によってデスク幅を選定することで効率的で快適な作業環境がうまれます。営業職のようなノートPCが主体となる作業環境では120cmが多く、一方で書類を扱う作業の多い管理部門やデスクトップPCや複数台のモニターを扱う開発部門などは140cm以上のデスクサイズを選択するケースが多くみられます。
また日本オフィス家具協会(JOIFA)では、フリーアドレステーブルで組織の増減に応じてデスク幅する調整していくようなユニバーサルレイアウトを採用する際は一人あたりの幅は100cmに設定することが望ましいと推奨されています。10名の営業部門で在席率が80%であれば最低8mのフリーアドレステーブルを採用して効率と快適性のバランスを保つことが望ましいとのことです。
会議テーブルのサイズを選定する際に基準となるのは一人あたりの座席の幅が目安となります。一般的にはミニマムサイズで 60cm~80cmを基準として設計されています。
例えば6名の会議室であれば180cmから240cmが会議テーブルの幅の目安ということになります。
しかしながら多くの人数が着席する会議室ではそれぞれの動きも多く、60cmの設定では厳しいと思われます。
失敗しない会議テーブルのサイズ選びは利用目的で選定することです。来客用の会議室であれば選定する会議チェアーも通常の事務用チェアーのような大きさになることが考えられることから、一人あたり80cmで設定することが理想的です。
社内の4名程度の小規模なミーティングブースなどでは60cmで設定しても問題ないでしょう。
このように会議室がどのような目的で使われるのかで設計していくことによって選ぶポイントが分かるようになります。
オフィスチェアーの大きさはメーカーにより様々です。最近では長時間のデスクワークに配慮した座り心地の良い椅子などが増え、比較的サイズの大きな製品が増えてきています。
またアーロンチェアーなどの海外メーカーの製品などは体格に合わせて設計されているため、効果に製品より大きなサイズのチェアーが多く見られます。
デスクと椅子のサイズのバランスにも配慮して計画をすることをおすすめします。
オフィスの書庫、またはキャビネットと呼ばれる物の主流となっているサイズは横幅90cm奥行45cm。最近ではオフィスでの書類の収納量も削減されたり、A4サイズの書類が多くなってきていて、幅80cm奥行40cmのサイズの書庫も選べるようになってきました。ほとんどの家具メーカーはこのサイズで統一しています。以前は88cm38cmの収納も多く存在していたため、レイアウト作成する際はこうした収納のサイズを把握しなるべく同じサイズの物を一緒に配置することで、きれいなオフィス動線が生まれたり無駄なスペースを削減できることにもつながります。
オフィス移転やリニューアルをする際に紙削減や電子化などの運用を検討して書庫を減らことで空間にゆとりを作ることも大切です。
オフィスレイアウトを作成するには様々な設備要件や快適な寸法などの条件を検討しながら進めていくことが必要となります。専門的な要素が多いため、オフィスデザインに関する経験値の高い設計者に依頼することでほとんどが解決できるので、事前準備や依頼する社内要件や優先条件などをきちんとまとめておけば、快適で効率の良いオフィス環境が実現します。