コロナ禍が広まり、働き方の変革がスタートしてから早4年。それまでは同じ時間帯にオフィスに出社し、肩を並べて働くことが当たり前でしたが、近年急速に変化してきています。様々な働き方が登場し、オフィスの在り方や考え方が見直され、企業にとってオフィスを今後どのように活用してゆけばよいのか?、と大きな判断を強いられています。
オフィスは単なる「仕事をする場」だけではなく、クリエイティブなアイデアを創造するための仕掛けや社員のモチベーションを向上させる「新たな場」へと変革してゆかなければなりません。そのような「新たな場」へと進化させるために、空間としてのオフィスの可能性についてご紹介してゆきたいと思います。
オフィスデザインとは、オフィス内のレイアウトや装飾、動線などを総合的にデザインすることです。既存のオフィスをリノベーションして新たに作り出す場合や、新しくしたオフィスに移転する場合も、オフィスデザインによって、どちらもプラスに働くようにしなければなりません。そこで、まずはどのようなプラスの効果が期待できるのか解説いたします。
コロナ前までは、1日の大半をオフィスで業務をこなすための空間としてオフィスは存在しました。質素で味気ない空間よりも、視覚的・体感的に工夫が施された場所の方が、社員の生産性も向上し、業務効率も上がります。また、オフィスでは様々な人が出入りし、業務外のストレスなど気がつかないうちに蓄積していることが多いため、メンタルケアを改善させるオフィスデザインを取り入れることも重要となっています。そのためコロナ禍ではますますストレスフリーな環境をつくることもこれからのオフィスの必須条件となっています。
人は機械ではないので、生産性向上のための空間づくりだけでは持続可能とは言えません。いかに社員が働きやすく、ストレスなく集中できる空間にしてゆくかが、モチベーションアップの絶対条件となります。そのためには社員の働き方や動線に最適化したレイアウトや快適なリフレッシュエリア、創造的な会議ができるミーティングスペースなど、ワークスペース+αが社員のモチベーションアップを向上させます。
コロナ禍の中で、リモートワークを導入した企業が直面した問題として「業務外のコミュニケーションの減少」です。一見、業務外の無駄なコミュニケーション削減により生産性が向上するように思えますが、コミュニケーション不足による心理的安全性が損なわれてしまい、業務効率が下がったという本末転倒な側面があります。あらためてオフィスの重要性や在り方について考えるキッカケとなり、リアルなオフィスは社員のコミュニケーション活性の場として見直されています。
コロナ禍によるリモートワーク推進がされる少し前、2019年4月に政府による「働き方改革」が施行されました。社員が個々の事情に応じた多様な働き方を自分で選択できる改革という定義の上、試行錯誤しながら取り組んでいかなければならない企業が多くありました。このような社員個々の事情に応じた働き方を、オフィスデザインによって解決できることが沢山あります。
今までのオフィスは横並びのデスクで業務を行うスタイルが主流でした。当たり前とされていたスタイルがコロナ禍により、一定の距離感を取ることが必要となり、さらにパーソナルスペース(個人を取り囲む空間)で快適に仕事をしたいという動きが強くなりました。そのために個人ブースをつくり、一人で作業に集中したり、オンラインでの商談や会議を行ったりとこれからの働き方に対応した場を用意することが重要となっています。
一昔前は、一律で味気のない同じ執務机に事務椅子がオフィスの主流でした。今では快適なオフィスをつくるための重要なアイテムとして見直され、見た目だけでなく、人間工学的に開発された什器が多くでています。椅子一つとっても、パソコン作業やリフレッシュ、ミーティングなど用途に合わせた形の椅子があり、社員の生産性やモチベーションを向上させるために、その場に最適化された什器を配置することもポイントです。
社員のための憩いの場であるリフレッシュエリア。カフェが併設されていたり、仕事帰りにお酒が飲めるカウンターバーがあったりと、特徴のあるリフレッシュエリアをつくる企業が増えてきました。従来の社員食堂や休憩室とは異なり、オンとオフを切り替える場所であり、ランチミーティングや交流の場所である、など多目的な場所として利用されています。
今後オフィスの見直しをすることを検討している方や重要性に気づいた方に向けて、どのように進めてゆけばよいか?抑えておくべきポイントについて解説いたします。
生産性が下がっている、社員のモチベーションが低下している、企業全体の士気がなくなってきているなど、企業存続が危ぶまれている状況を打破するためにはオフィスの変革が必要かもしれません。企業ごとに課題は様々ありますが、大抵のことはオフィスデザインによって解決できます。まずは課題を整理し、オフィスを変える目的を明確にしてからコンセプトを決めていきましょう。
オフィスは働く社員のためにあるので、社員の声をより多く集めてゆきます。エントランスからワークスペース、ミーティングスペース、リフレッシュエリアなど、社員一人一人の不満や要望を集めて、理想のオフィス空間にするための項目をまとめていきます。実現可能か不可能かはここでは考えずに、できるだけ多くの声を集めることが重要です。
コンセプトや社員の声が集まった段階で、次に実現するための「相談相手」を探しましょう。世の中にはいろいろな空間デザインを手掛ける会社がありますが、オフィスデザインに特化した実績の多い会社に相談することが早道です。自分たちだけでは実現不可能と思っていることが、実績の多い会社によって、思ってもいなかった視点でアプローチし、実現可能にしてくれるかもしれません。
社名の由来からオフィス全体を「肥沃な大地」と定義し、River・Canyon・Forestと名付けてエリア分けをしています。3つのエリアはそれぞれ伝達・対話・集中をテーマにし、シーンに合わせたオフィスデザインを設計しています。目的を持って能動的に働ける場所を意識・行動を促す仕掛けを散りばめることで、その先に偶発的な出材が増える場を目指しました。
個々のワークスペースをなくし、オフィスの中心にL字型のオープンキッチンを配している面白いレイアウト。ワークスペースはフリーアドレスデスクを導入し、煩雑になりがちなデスクの足回りもスッキリさせることで、キッチンスペースと上手く馴染ませる設計になっています。複数の箇所にベンチソファを設け、MTGや集中作業など多様なシーンで利用できるようになっており、柔軟な働き方、社員の交流を促進します。
リフレッシュスペースにHUBスペースがあるオフィス。天井をスケルトンにすることによって圧迫感をなくし、斜めに走らせたライティングレールで遊び心を加えています。素材や色合いが目を引くカウンターは、オフィスの中央に位置し社内の人々が気軽に集まれるHUBスペースとしての役割を担っています。
政府が推進する働き方改革をはじめ、コロナ禍によるリモートワークとオフィス出社の併用スタイルなど急速にオフィスの在り方が変わってきています。今後は生産性向上や社員のモチベーションアップのためのオフィスデザインがマストであり、企業の成長のためには不可欠なものとなっています。そこで働く社員一人一人が実績や功績を作り出せる場としてのオフィスデザインを考えていくことが、これからの時代のオフィスの在り方と言えるでしょう。