従業員のモチベーションが上がらず、オフィスに活気がないと悩んでいる経営者・人事部の方もいるのではないでしょうか。本記事では、オフィス環境が従業員のモチベーションにもたらす効果やメリットを詳しく解説します。
また、モチベーションが上がらないオフィスの課題や、やる気を出すために必要なポイントもご紹介。課題を改善するためのアイデアを参考にすれば、オフィスリニューアルをして従業員のモチベーションが上がる環境を作ることができるでしょう。ぜひ、参考にしてみてください。
モチベーションとは、「動機付け」のことを言います。「やりがい」「やる気」と捉えることが多いかもしれません。仕事におけるモチベーションは、業務上の目的に向かって進めていく意欲を指します。
スターツコーポレートサービス株式会社の「自分の働く環境に対する意識調査」では、オフィスにとても満足していると回答した従業員のうち、87%以上が「仕事が面白い」と答えました。この結果から、オフィス環境は従業員のモチベーションに関わりがあると言ってよいでしょう。
2019年4月に政府主導でスタートした「働き方改革」では、働きやすさに重点をおいて進められていました。近年では、働きやすさに加えて「働きがい」も大切だと考えられています。働きやすさに必要なのは、「健康・安全・福利厚生などに配慮された従業員が安心して働ける環境」です。一方、働きがいでは、「この職場で働きたいと感じる前向きな気持ちを持ち仕事に取り組める環境」が求められています。
働きやすく働きがいがあるオフィス環境は、従業員のモチベーションが上がります。従業員のモチベーションが上がれば、企業にとってもよい効果が生まれます。では、働きやすいオフィスが、企業にもたらす具体的なメリットを考えてみましょう。
健康・安全に配慮されたオフィスでは、安心して働けます。ストレスが軽減されて仕事に対するモチベーションが上がるでしょう。意欲が高いオフィスでみられるメリットの一つは、個々の仕事に対する集中力アップによる業務効率の改善です。また、ポジティブな雰囲気が作り出されて、コミュニケーションが活発化します。円滑なコミュニケーションは、連携ミスを防ぎチーム・部署全体の業務効率化が図れます。
業務効率が上がりミスコストも減れば、業績向上にもつながります。一人ひとりの働きがよくなるだけでなく、チーム・部署を超えた雑談やディスカッションも行われるでしょう。活発なコミュニケーションができるオフィスは、積極的なアイデア交換が行われやすい環境です。商品開発のアイデアも期待でき、さらなる業績アップにつながるのではないでしょうか。
業績のよい企業は、対外的な評価も高まります。また、オフィス環境がよくモチベーションの高い従業員が生き生きと働いている状況に、消費者や取引先は「企業の安定性・将来性」を感じられるのではないでしょうか。このように対外的な評価や企業価値の向上にもつながります。
企業にとって、人材確保・育成は、コストも負担もかかるものです。人材不足が叫ばれるなか、せっかく育てた人材が離れてしまう事態や優秀な人材確保に苦労している経営者・人事の方も多いのではないでしょうか。働きやすいオフィスでは、従業員の心身のストレスが少なく、高い意欲を持って仕事に取り組めるため離職率が下がります。また、雰囲気がよく業績の安定性・将来性を感じられる企業は就職活動中の学生や求職者にも魅力的に映るため、優秀な人材確保にもつながるでしょう。
働きやすく、働きがいが高まるオフィスでは、従業員のモチベーションがあがります。企業にとっても、メリットがあります。なかなか、従業員のモチベーションが上がらないと悩む企業には、どのような課題があるのかを考えてみましょう。
テレワーク・リモートワークの普及に伴い、通勤・退勤時間の負担によるストレスがこれまで以上に顕著に感じられるようになりました。「駅から離れている」「ランチができる場所が少ない」「コンビニエンスストアが近くにない」などの利便性の悪さは、業務に直接関係がなくても従業員のモチベーションに影響を与えます。
大人が集中できる時間は、50~90分と言われています。気持ちの切り替えは、集中力を高めて効率的に業務を進めるために重要です。しかし、固定席に座ったままでは、しっかりとリフレッシュさせるのは難しいかもしれません。お昼休憩を仕事をしているデスクで行うケースも多いでしょう。オン・オフのスイッチを切り替えられないと、心身のストレスが増えモチベーションも低下してしまいます。
オフィスでのコミュニケーションが円滑に取れないと、部署間での情報共有がうまくいかずミスにつながる恐れがあります。また、従来型の固定席では、決まった人との会話しか行われず、自由な発言がしにくい側面もあるでしょう。オープンな雰囲気がなく、風通しが悪いため人間関係の悪化につながりかねません。コミュニケーション不足は、モチベーション悪化のみならずメンタルヘルスへの悪影響や離職につながる可能性も考えられます。
人がどのように動くかを考えて家具や什器の配置ができていないと、業務効率が下がります。例えば、座っている人の後ろ側が通路になっているのに、十分な広さが確保できていなければ通りにくいでしょう。また、出入口からの距離や位置が遠い、複合機や収納棚などの共有アイテムへの行き来がしにくいといったストレスは、やる気をなくす引き金になります。
コロナ禍で一気に普及したオンライン会議や商談は、今では当たり前の方法となりました。周囲に人がいると声が出しにくい、逆に周囲の人の声が邪魔になる、声や音が反響して聞こえにくいなど、オフィスがオンライン業務に適していないと働きにくさを感じるでしょう。
換気が適切に行われていないと、二酸化炭素濃度の上昇・酸素濃度の低下を引き起こします。空気環境が悪いオフィスは、集中力を下げやすく、頭痛やめまい・疲労感につながるため環境整備が必要です。また、冷暖房が強すぎて体調不良を引き起こすケースもあります。空気環境や温度・湿度管理をしっかり行うことも重要です。
孤独感・疎外感のある環境では、何のために働いているのかわからなくなりモチベーションが下がります。上司や先輩・同僚からの適切な評価を受け取れる仕組みや環境を作ることが大切です。また、企業理念やビジョンが明確で、従業員にも浸透していると目指すべき方向性がはっきりします。
オフィス環境次第で、従業員のやる気は変わります。働きやすいと感じられるオフィス空間を作るためには、どのような点を意識するとよいのでしょうか。具体的なポイントを詳しく紹介します。
自分のデスクやワークスペースだけでなく、しっかりと気持ちの切り替えができるリフレッシュスペースを設けてみてください。別室を用意するスペースがない場合は、ソファやカフェテーブルとチェアなど小スペースでも業務から離れるエリアを作るとよいでしょう。業務スペースと切り分けると働いている人と休息を取っている人の間にパーテーションを作り、お互いの妨げにならないような工夫も必要です。
チームや部署単位、あるいは他部署の人も共有できるようなフリースペースもあると便利です。しかし、集中して業務を行いたい場合には、一人で作業ができるスペースを確保しておくとよいでしょう。オンライン会議や商談用のテレブースや周囲と適度に距離を保てるソファ席も便利です。
積極的なアイデア出しやチームの連携を円滑にするためには、コミュニケーションを取りやすい環境が重要です。チーム・部署の垣根を超えて交流が図れるフリースペースや、気軽にディスカッションができるカウンターなどを用意してみてください。わからないことを相談しやすいような、風通しのよい雰囲気作りも大切です。お互いの顔が見えて、気軽な会話を楽しめる空間作りも必要でしょう。
オフィスにはデスクとチェア以外にも、必要な家具や什器・OA機器などがあります。会議室や商談ブースのほかに、従業員が気持ちよく働くための休憩スペースなどを設けるためには十分な広さが必要です。物がそろっていても、ストレスなく移動ができる通路もなければいけません。幅60cmあれば、大人が身体を傾けずにまっすぐ歩けると言われています。業務上の動線を考えてレイアウトをしながら、余白スペースも作ることを意識してみてください。
働き方は多様化しています。近年、オンラインでできる仕事や副業・兼業を認める企業の増加に伴い、場所・時間にとらわれない自由な働き方をする人が増えてきました。また、オフィス内でも固定席ではなく、業務内容に合わせて好きな場所を選択して使うスタイルもよくみられるようになりました。フレキシブルに空間を利用できる環境も、働きやすさに関係する要素の一つです。
おしゃれなオフィスで働きたいと考える方は多いのではないでしょうか。画一的で無機質な印象のオフィスから、企業それぞれのアイデンティティが感じられるデザイン性の高い空間が求められています。就職を考えている学生や求職者にとっても、わかりやすい魅力の一つとなるでしょう。
おしゃれなだけではなく、明るさや温度・湿度が適切で過ごしやすいかどうかもチェックしてみてください。また、騒音や匂いに対しての対策も必要です。精神的なリラックスをもたらしてくれる植物を置くといった工夫もするとよいでしょう。窓からの景色を取り込んだ空間設計やアートをプラスして雰囲気を高めてみてはいかがでしょうか。
自分が働いている企業が、どのようなビジョンで将来的な展望を考えているのかをはっきりさせると、従業員も同じ目標に向かって意欲的に活動できるでしょう。企業理念や歴史、今後の活動方針を共有できる環境作りを目指してみてください。
ここでは、働きやすいオフィスにするための具体的なアイデアをご紹介します。オフィスのリニューアルや新設で、実際にどのような空間設計をすればよいか迷ったときにはぜひ参考にしてみてください。
リフレッシュするための休憩スペースを作りましょう。飲食用のテーブルとチェアがあるカフェのような空間は、簡単な商談にも利用できます。あるいは、ソファを置いてくつろげる場所もおすすめです。大きなソファなら、複数の人がリラックスしながら交流を図れます。一人掛けソファは、脳を休めて気分転換をしたり思索にふけったりできるでしょう。
オフィス内にライブラリースペースを設ける企業が増えています。業務に関わることだけでなく、さまざまな分野の知識を身に着けられる場となり、従業員のモチベーションが上がります。また、他部署の人との交流が深められるためコミュニケーションアップにもよい影響を与えられるでしょう。
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デスクワークが中心のオフィスワーカーは、運動不足による体調不良を感じることはないでしょうか。ジムへ毎日通うのは、時間的にも経済的にも負担が大きく、諦めている方も多いでしょう。休憩時間に簡単に身体を動かす機会があれば、すっきりと気分転換もできます。そこで、従業員が将来にわたり健康的に働ける環境整備の一環として、オフィス内にジムを設けてみてはいかがでしょうか。
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水回りの清潔さや快適さは、とても重要です。とくにトイレは、業務の合間に一息つけるリフレッシュタイムにもなります。明るく清潔でおしゃれな空間であれば、気持ちよく気持ちの切り替えができるでしょう。温水洗浄便器や脱臭装置、手洗い器などの設備が充実しているだけでなく、とくに女性トイレには化粧直しをするためのスペースがしっかり用意されていると喜ばれます。
業務内容次第では、一人で集中して仕事に取り組む環境も必要です。また、オンライン会議では周囲に邪魔にならないように、声が外に漏れにくい環境作りをしなければいけません。同時に、ほかの人の声がオンラインの相手に届いてしまうと、会話が途切れてしまいます。機密情報の漏洩につながる可能性もあるため、できればテレブースなど専用のスペースがあるとよいでしょう。
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ワークスペースと緩やかにつながるフリースペースがあるオフィスをよく見かけます。間仕切り収納家具やパーティションを使い簡易的に仕切っているケースもあります。チームや部署を超えた交流が図れる場所として、とても有意義な空間です。また、業務内容に応じてソファ・カウンター・カフェコーナーなどを自由に選べることは、多様化した働き方にマッチしています。このようなフリースペースで、コミュニケーションの活発化を促してみてください。
目に見えないからこそ、意識したいのが空気環境です。不特定多数の人が外と中を行き来するオフィスでは、外部のほこりや汚れを室内に持ち込む機会が多い環境です。換気や空気清浄をしっかり行い、心地よい空間作りを行いましょう。また、空調管理を一括で行うオフィスでは、個々で暑さ・寒さのコントロールがしにくくなります。できるだけ、快適に感じられる温度・湿度の管理をしながらも、個人で調整ができるようにブランケットや卓上扇風機を用意するなどの工夫を呼びかけて快適な環境を維持してもらえるようにしましょう。
企業の理念やビジョンを、社内外にアピールすることも大切です。社内では、同じ目的意識を持ち、業務に取り組めるようになります。対外的には、企業の目指す方向性を理解してもらうことができるでしょう。例えば、企業ロゴを目立つように配したエントランスやコーポレートカラーを使ったオフィスデザインをしてみてください。ウォールアートで企業理念を表現する方法もあります。
従業員のモチベーションを上げるためのオフィス環境には、さまざまな要素が必要です。WORK KITでは、働く人のやる気を底上げしてくれるようなオフィスデザインも数多く手掛けています。今回は、従業員のモチベーションアップにつながる工夫が随所に感じられる事例を、厳選して3つ紹介します。
高速バス・夜行バスの運行をしている企業のオフィスです。ワークスペースのほかに、ジムスペースやボルダリングができる壁を備えたラウンジ、また長距離移動をしてきた運転手のための仮眠室などが用意されています。しっかりワークアウトができるだけでなく、従業員がラウンジで交流を図れる空間設計が魅力的です。
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オフィス拡大に伴い、移転をしたオフィス事例です。広々としたワークスペースには、個人が集中して作業に取り組めるブースが用意されています。また、ワークスペースから独立したリフレッシュスペースもあり、作業中のほかのメンバーの集中を妨げることなく休息を取ることが可能です。
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CO2排出量可視化・削減サービスプラットフォームの開発・運営を行う企業のオフィスです。開放感があり、コミュニケーションが自然と生まれる空間になりました。やわらかいカラーコーディネートで、あたたかみのなる雰囲気が魅力的です。
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オフィス環境は、従業員のモチベーションに影響を与えます。働きやすく・働きがい(やりがい)を感じられる空間設計で、従業員のやる気を上げ業績向上や企業価値向上につなげてみませんか。リフレッシュスペースを設ける・個人ブースや共有スペースを使い分ける・企業らしさを伝えるなどのポイントを押さえてデザインすれば、価値のあるオフィスを実現できるでしょう。