サステナブル、SDGs、環境保護。社会を取り巻く問題や状況に対してのあり方を示すさまざまな言葉があふれるなか、オフィスの在り方も変容を求められています。そのような流れのひとつに「エシカル」が挙げられます。オフィスデザインにも、エシカルな視点が必要となるでしょう。
では、エシカルなオフィスとは、いったいどのような場所を指すのでしょうか。本記事では、言葉の意味や意義を詳しくひも解いていきます。働き方だけでなく、現代を生きる私たちがこれからの未来を考えて、大切にすべき課題について学ぶきっかけになることでしょう。
現代に生きる私たちには、多様化する社会問題に対して、多角的にとらえる視野が求められています。そのなかで、近年「エシカル」という言葉を耳にするようになりました。エシカル消費・エシカル食品・エシカルファッションなど、さまざまな分野で使われています。
オフィスデザインにおいても、エシカルである必要性は高まっているといえるでしょう。では、エシカルとはいったい何を指しているのでしょうか。
エシカルは、倫理的・道徳的という意味です。つまり、エシカル消費といえば、倫理的・道徳的(に正しい)消費となります。具体的には、次のようなことに配慮した消費行動を指しています。
● 地域の活性化につながる
● 雇用を生む
● 人や社会に配慮されている
● 地球環境に配慮されている
身近な行動としては、エコマークの付いた製品を販売・購入する、フェアトレード商品を利用する、地産地消の食材を使うなどが挙げられます。
エシカルは、時として「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」と混同されます。そもそも、SDGsとは、2015年に国連で採択されたよりよい未来を築くための「持続可能な開発目標」のことを言います。
SDGsの行動指標として、次の17項目がゴールに設定されています。
1. 貧困をなくそう
2. 飢餓をゼロに
3. すべての人に健康と福祉を
4. 質の高い教育をみんなに
5. ジェンダー平等を実現しよう
6. 安全な水とトイレを世界中に
7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに
8. 働きがいも経済成長も
9. 産業と技術革新の基礎をつくろう
10. 人や国の不平等をなくそう
11. 住み続けられるまちづくりを
12. つくる責任 つかう責任
13. 気候変動に具体的な対策を
14. 海の豊かさを守ろう
15. 緑の豊かさも守ろう
16. 平和と公正をすべての人に
17. パートナーシップで目標を達成しよう
エシカルな観点は、これらのゴールすべてに関係があるともいえます。エシカルなオフィスを考えると、ジェンダー平等や働きがい、産業と技術革新の基礎づくりなどが深くかかわるのではないでしょうか。
近年、家具を借りるサービスが広く普及してきました。これは、モデルルームや一般住宅だけでなく、オフィス家具でも同様です。新しく買うだけでなく、借りることで循環型の仕組みを取り入れられます。
オフィス家具を借りるための主な方法には、次の3つがあります。それぞれの特徴にあわせて適切な借り方を選択してみてください。
● リース:原則として新品をリース会社から借りるシステム。販売者ではなく、リース会社に分割で支払う。定められたリース契約期間中の解約はできないため、中長期的な利用に向いている。
● レンタル:原則としてリユース品を、一定期間借りるシステム。短期的な利用に向いている。
● サブスク:サブスクリプションの略。定額制あるいは従量制で、一定期間サービスや製品を利用するシステム。
エシカルオフィスは「人や社会、地球に倫理的・道徳的に配慮されたオフィス」です。前述のとおり、SDGsのゴールを参考に具体的な行動目標を設定できます。ここでは、具体的にエシカルなオフィスに求められる例を挙げてみたいと思います。
人が暮らしやすい地球環境を維持するためにも、環境に配慮した製品を使い、不要なものは適切に廃棄しなければいけません。エシカルなオフィスでは、具体的に次のようなことを意識してデザインします。
近年、家具を借りるサービスが広く普及してきました。これは、モデルルームや一般住宅だけでなく、オフィス家具でも同様です。新しく買うだけでなく、借りることで循環型の仕組みを取り入れられます。
オフィス家具を借りるための主な方法には、次の3つがあります。それぞれの特徴にあわせて適切な借り方を選択してみてください。
● リース:原則として新品をリース会社から借りるシステム。販売者ではなく、リース会社に分割で支払う。定められたリース契約期間中の解約はできないため、中長期的な利用に向いている。
● レンタル:原則としてリユース品を、一定期間借りるシステム。短期的な利用に向いている。
● サブスク:サブスクリプションの略。定額制あるいは従量制で、一定期間サービスや製品を利用するシステム。
環境に配慮する方法の一つに、家具や内装材の再利用やリサイクル製品の利用が挙げられます。オフィス移転であれば、もともと使っていた什器をそのままあるいは修理して使います。新しいオフィスでもリユース品を購入したり、前述のリースやサブスクを活用したりする方法も検討してみてください。
また、家具を作られる過程で材料や製法にこだわったものを選ぶのも、環境への配慮となります。例えば、ハーマンミラーの「アーロンチェア」。発表された当時のデザインはそのままに材料をリサイクルされたものに変えるイノベーションが行われたオフィスチェアです。
これまでもリサイクル素材を50%以上使っていましたが、近年新たに海洋プラスチックが加わりました。この変革により、毎年150トン以上のプラスチックが生態系から回収されるようになっています。
日本の国土の70%近くが森林です。しかし、間伐などの手入れが行き届かない現状から、十分にその資源をいかせない現状があります。そこで、国産材を活用した空間づくりもエシカルな行動の一つといえるのではないでしょうか。
オフィス家具メーカーのコクヨでは、オフィス用のデスクにも全国の地域材を使ったシリーズを展開しています。無機質だったオフィス家具ですが、天板に木材を使うことで機能性はそのままに温かみのあるデザインを実現しています。
国産材を使えば、エシカル化といえば必ずしもそうとは言えません。国産材に限らず、持続可能な森林活用・保全が行われている森から伐採した材を使って作られた家具や内装材を利用することも大切です。
国際的な指標としては、「FSC認証」も知られています。持続可能な森林活用・保全を目的として作られた認証です。認証を受けた森林からの生産品には、FSCのロゴマークはつけられます。
また日本では、2017年5月に林野庁により「クリーンウッド法」が施行されました。違法伐採の取り締まり、地球温暖化防止、自然環境保全、健全な森林の維持管理などがこの法律の主な目的です。
このような認証や法律も、家具を選ぶ一つの指標とするとよいでしょう。
ゴミを減らす、リサイクルすることは環境配慮への第一歩です。オフィス移転やリニューアル時などに出る廃棄物をできるだけ減らす工夫も必要でしょう。解体工事を行う際には、現場での工事廃棄物の処理を慎重に行います。後々にリサイクルをしやすくするために、分別を考えて解体し、現場で細かく仕分けるなど工程をしっかり考えます。
また、新たに購入・導入する家具や内装材も、メンテナンスをして長く使えるもの、廃棄するときに環境負荷の少ない素材のものを選ぶようにしましょう。
物が作られる過程で使うエネルギーについて考えてみたことはありますか?サステナブル(持続可能)な社会では、工場を稼働させる電力や運搬にかかるエネルギーをエコにする視点も重要です。
オフィスで使われる家具を作る工場の屋根を使い、太陽光発電で電気を作ったり、木材加工で発生する端材を利用した木質バイオマスボイラーを熱源としたりする企業もあります。できあがる製品そのものだけでなく、手元に届くまでの過程がエシカルであるかどうかを確認してみてください。
ユニバーサルデザインとは、年齢・性別・身体的状況・国籍・言語・知識・経験などの違いにかかわらず、すべての人が使用できる製品や空間・環境のデザインを指す考え方です。SDGsで設定されているゴールと重なる部分も多い内容です。
ビジネスの現場でも「ダイバーシティ=多様性」が重要とされるようになりました。女性の活躍できる機会を作る、身体的障がいを持つ方が勤務しやすい環境にするなどの取り組みがよく聞かれます。これからの時代において、ユニバーサルデザインに基づき、より広範囲で多様性を受け入れるオフィスや環境づくりが必要となるでしょう。
ここまではエシカルなオフィスとは、どのような環境・場所を指しているのか考えてきました。日本でも、近年ようやくオフィスデザインに「エシカル」な視点を取り入れられてきました。では、世界的にみてオフィスデザインは、どのように考えられているのでしょうか。
ここでは、海外のエシカルなオフィス事例をご紹介します。
インドのムンバイにあるオフィス。低地で雨が多いエリアであることから、なるべく床にものを置かない設計がされました。このように土地特有の災害に対して考慮する視点もオフィスデザインには必要です。
→事例の詳細はこちら
倉庫として使われていた歴史的な建築物を、オフィスに再利用したアメリカ・ポートランド事例です。既存の木製梁・天井・柱をそのまま生かし、それ以外の場所を新たに刷新し新旧が融合した空間となりました。
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コワーキングスペースとして利用されているオフィス空間。子どもが楽しく過ごせるスペースを設けています。大人も子どもも同時に楽しく過ごせる、これまでにない発想のコワーキングスペースです。
→事例の詳細はこちら
エシカルなオフィスは、そこで働くワーカーの抱えるさまざまな問題の解決を前提としてデザインされます。多様性をお互いに受け入れ、心地よく働ける環境づくりは、これからの時代になくてはならない考えとなるでしょう。オフィススペースから、社会の問題解決に目を向けるきっかけとなるかもしれません。ぜひ、一度エシカルな視点で働き方について考えてみてはいかがでしょうか。