「オフィスの床材は、どのような色・柄・素材ですか?」と聞かれたときに、明確にイメージできるでしょうか。グレーのカーペットやタイルフロアなどのかたい素材などが思い浮かぶかもしれません。
目に入る面積が広く、立っていても座っていても触れている床は、仕事を進めるうえで重要な役割を果たしています。しかし、あまり意識して床材を選んでいないオフィスも多いのが現状です。本記事では、オフィスでより快適に過ごすために大切な床選びのポイントを詳しくご紹介します。
オフィスは、仕事をしやすい環境でなければいけません。そのため、意匠性だけでなく、業務に適した床材を選ぶ必要があります。まずは、オフィスの床材を選ぶときに意識するとよいポイントを解説します。
業務を効率よく進め、長時間同じ場所で過ごしても快適であることが重要です。まずは、歩行性が高いことやクッション性があるかを考えてみてください。また、キャスター付きのオフィスチェアを使う場合は、椅子の出し入れがしやすいかどうかもポイントです。かたい素材の場合、足音が響き、周囲の人の集中力を削ぐ可能性もあるため、吸音性についても検討する必要があります。
これまでのオフィスは、必要な業務を遂行する場所の要素が高い場所でした。もちろん、現在でも、効率よく作業をする場所であることは最も重要な要素です。しかし、長時間過ごす場所としての居心地の良さや出社したいと思えるおしゃれな空間といった魅力も求められています。
アイデンティティや価値を伝えるようなデザイン性の高い内装のオフィスは、社員のモチベーションアップにもつながり、活気のある企業風土を生み出します。対外的にみても、企業価値が高まるため、床材にこだわることがブランディング効果につながります。
オフィスは、ワークスペース・会議室・通路など、役割によって用途が変わります。壁や家具を用いて仕切るだけでなく、床材の種類を変えてゾーニングをする方法があります。コミュニ―ケーションを促進できるオープンスペースでも、用途や部署・チームごとに空間を分けたい場合には、床材に変化をつけてみるとよいでしょう。
多くの場合、オフィスでは靴を履いたまま過ごします。そのため、耐久性や清掃性の高さも意識するとよいポイントです。近年、ワックス不要でメンテナンスの手間やコストを軽減できる床材もみられるようになりました。そういった機能性のある床材を用いてみてもよいでしょう。また、これからのオフィスには、環境への負荷を低減できるかどうかという点も重要です。製造過程や廃棄時の環境負荷を考えて選ぶ必要があります。森林保護につながる木材を使ったフローリング材を利用してもよいのではないでしょうか。
オフィスに使われる床材には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、素材別の床材をご紹介します。オフィスのコンセプトや使い勝手をふまえて、適した床材を選んでみてください。
多くのオフィスで使われているスタンダードな床材といえば、タイルカーペットでしょう。タイルカーペットとは、40〜50cm角のタイル状になっているカーペット材のことです。裏面に接着剤をつけて、モルタル・OAフロアなどに直接貼ることができます。また、比較的容易にはがせるため、施工性のよさからも採用されるケースが多いようです。
静電・防汚機能があり、耐久性も高いため、メンテナンス性にも優れていると言えます。汚れが目立つ場合は、その部分のみはがして張り替えができるためメンテナンスコストも抑えることが可能です。しかし、経年変化で古い場所と新しい場所の違いがはっきりわかるため、悪目立ちする場合は周辺一帯を取り換えたほうがよいかもしれない点は注意が必要です。
長尺の敷き込みカーペットを使うケースもあります。いずれも、表面の仕上げやカラー・柄の種類も豊富で、さまざまなコンセプトのオフィスにマッチするタイルカーペットを選べます。エントランスや応接室には、コーポレートカラーを取り入れて企業イメージを伝えるようにしてもよいでしょう。
表面がカーペットではなくポリ塩化ビニル製の床材です。尺角タイプのフロアタイルと長尺タイプのフロアシートがありますが、いずれも施工性がよくタイルカーペット同様に多くのオフィスで採用されています。耐久性・クッション性が高く、歩行の多い場所や椅子による加重がかかるデスクスペースにも向いています。
色柄が豊富で、なかには木製フローリングや大理石・タイルのようなデザインのものもあります。近年では、プリント技術が高くなり本物の素材(木や大理石)と見間違えるほど精巧です。安価で耐久性があることから、あえて選ばれることもあるでしょう。ワックス不要でメンテナンス性もよく、オフィスでの利用に適した素材の一つです。
住宅でよく使われている木質フローリングを、オフィスに使うこともできます。木のあたたかみを感じられる木質フローリングは、居心地のよい空間演出にぴったりの素材です。タイルカーペットやフロアタイルに比べると、耐久性やメンテナンス性に劣るため、オフィスでの使用には注意が必要です。
オフィスをリビングのようにくつろぐ場所としてデザインする企業も増えていることから、執務スペースにも採用するケースも見られます。しかし、不特定多数の人の出入りや移動が多く、キズや汚れが気になるという理由で採用を迷うようであれば、休憩室や応接室だけに使うなど、場所を限定してみてもよいでしょう。
また、高級感のある素材ですが、タイルカーペットやフロアタイルに比べるとコストがかかります。総合的に判断して、必要な場所に使うとよいのではないでしょうか。
タイルや大理石も床材としてよく使われる素材です。石目調の柄が多く、高級感のある雰囲気を出したいときにおすすめです。天然大理石は高級感がありますが、コストが高く、メンテナンス性が低いため、多くの人が出入りするオフィスでは床材より壁材に使うとよいかもしれません。あるいは社長室や重要な来客を迎える応接室などに適した素材です。
メンテナンス性を考えると、大理石調のタイルを使ったほうがよいでしょう。本物と見分けがつかないようなタイルもあり、高級感のある空間作りが可能です。また、タイルは色・柄も多く、さまざまなコンセプトのオフィスに合わせて選ぶことができます。
面積が広く視界に入りやすい床は、その色や柄によって心理作用に働きかけることがあります。ここでは、床の配色によって得られる効果を色別にご紹介します。
ブルーには、集中し冷静な判断を促す効果があると言われています。そこで、書類作成・見積り作成など集中して作業をする必要がある事務職用のスペースに用いるとよいでしょう。また、重要な決議をするための会議室にも向いているかもしれません。考えを深めるための場所に効果的に使ってみてください。
明るくポジティブな印象のイエロー・オレンジは、快活な議論の場やひらめきを必要とする場所に適しています。積極的な議論を交わしてアイデアを出すようなミーティングルームやクリエイティブな業務や開発・企画職のためのワークスペースにぴったりです。
森や草木などの植物を連想させるグリーンや、大地をイメージするブラウン・ベージュなどのアースカラーは、癒しの空間に使うとよいでしょう。休憩室や食堂など、業務を離れてくつろぐための場所にふさわしい色と言えます。また、来訪者が滞在するエントランスや応接室に使うことで、リラックスして話ができます。
オフィスでは床材に注目されることは、あまりありません。しかし、面積が広く視界に入ることが多い床材は、居心地のよさにも大きく関係してきます。働きやすく過ごしやすいオフィスにするために、床材にもこだわってみてください。素材や色柄を意識して選び、企業価値も高まるオフィスデザインを実現しましょう。