大地震などの災害は、どのようなタイミングで発生するかわかりません。地震だけでなく、台風や豪雨などの災害も多く、防災について考える方も増えているでしょう。しかし、自宅での防災対策は意識していても、オフィスや通勤・退勤時に被災する可能性について考える機会は少ないのではないでしょうか。
企業や自治体などによる支援・対策も重要ですが、一人ひとりが最低限の「自助」を行うことが大切です。そこで、本記事ではオフィスで大地震に被災するときに備えておくべき安全対策について、詳しく解説します。
オフィスには、自宅とは異なる大きな家具や設備もたくさんあります。また、家族と離れた場所にいるため、お互いの状況がわからず不安になるでしょう。ここではまず、オフィスで大地震災害に被災した場合に考えられる危険性について考えてみます。
オフィスには、書類などを収納する大型の家具や複合機のような大型電子機器がたくさんあります。収納家具自体が転倒して下敷きになるだけでなく、中身が飛び出す可能性もあり、非常に危険です。ガラスの飛散によるケガや、通路を邪魔して避難が遅れるといった被害にもつながるでしょう。
大地震ではデスク上のパソコンやディスプレイ画面が飛ばされるケースもあります。人や物に当たれば、ケガや建物の損壊に繋がり危険です。また、ケーブルが抜けたり停電したりすることで、作業中のデータが紛失してしまうかもしれません。
大地震などによる災害では、公共交通機関のマヒや道路の通行止めなどにより、帰宅できなくなる可能性が高くなります。東日本大震災では、東京都内で約352万人の帰宅困難者がいたと言われています。また「首都直下地震等による東京の被害想定」では、帰宅困難者が約453万人になると想定されました。移動中の被災では、屋外で長時間待機しなければならないかもしれません。
大災害発生時は、通信障害が起こりやすくなります。電話やメール機能が使えず、家族の安否確認が取りにくい、また自身の安否を伝えられない状況が考えられます。自宅から離れた場所では、双方がどれくらいの被害を受けているかもわからないため不安が大きくなるでしょう。
オフィスで大地震に遭遇したときには、さまざまな危険や不安があることがわかりました。天災を避けることはできませんが、万が一発生した場合でも被害を最小限に抑えることは可能です。日ごろから防災意識を高め、いざというときに慌てず行動するための備えをしっかりしておきましょう。
オフィスの場合、建物自体が堅牢で損害が少なくすむこともあるでしょう。しかし、大きな揺れにより室内では家具の転倒や移動、落下などが発生します。書類などを保管している大型の収納家具をしっかり固定してください。
OA機器やパソコンなどの電化製品が揺れで飛んでしまわないようにワイヤーで固定しておきます。キャスター付きのチェアやワゴン収納なども大きく移動する危険性があるため、使用していないときはロックをかけて動きにくくするなどの工夫も必要です。
地震の揺れでケーブルが抜ける、停電が発生するなどの状況が起こると、作業中のデータが紛失する可能性があります。頻繁に保存を行うだけでなく、遠隔地でのバックアップをして重要なデータが消えてしまわないようにしましょう。ケーブルの混線を避けるために、フリーアクセスフロアにすることもおすすめです。
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多くの人が出入りをしているオフィスでは、迅速に避難できるかどうかも重要なポイントです。出入口・廊下・階段などの避難経路に物を置かれていると移動時の邪魔になります。通路を倉庫代わりにして物を置かない、棚の転倒で通路が塞がれないように固定するなどの対策をとりましょう。
大地震で公共交通機関や交通網がマヒしてしまい、帰宅ができなくなった場合に備えて社内で避難をするための備蓄品を用意しておきます。飲料水・食料・衣料品のほか、担架や工具といった救急用資材も必要です。外部の人の避難先となる可能性も踏まえて、余裕を持った備蓄が必要です。また、徒歩での帰宅に備え、運動靴や簡易的な食糧品・ヘルメット・ヘッドライトなどを個人でも用意しておくとよいでしょう。
ハード面だけでなく、働く人たちの意識を高めることも重要です。また、防災担当者を決めて、いざという時に段取りよく避難や情報収集を進める訓練をしましょう。誰が何をするかをあらかじめ決めておくことで、緊急時に迅速な対応を取ることができます。
勤務時間内だからといって、全社員がオフィス内にいるとは限りません。外出している社員や欠勤者なども把握して、オフィス内外の社員の実態を把握する必要があります。被害状況の把握・情報の収集・伝達方法はあらかじめ決めておき、全社員に周知しておきましょう。また、緊急時の家族との連絡手段も決めておいてください。電話・メールは通信障害でしばらく使えない可能性もあります。「災害伝言ダイヤル(171)」を活用してみてください。
オフィスにも備蓄が必要ですが、通勤・退勤時や営業に被災することも考えられます。日常的な移動に負担が大きくなりすぎない程度の物を常備しておきましょう。持ち歩いているバッグに用意しておくとよいアイテムをご紹介します。
情報収集や連絡手段として欠かせないスマートフォン。地震発生直後は通信障害で使用できない可能性もありますが、簡易ライトの代わりとするなどさまざまな形で活用できます。充電が切れてしまうと使えないため、モバイルバッテリーも合わせて形態しておきましょう。スマートフォンを3回充電できる容量が望ましいとされています。太陽光で発電できるタイプもあるので、必要に応じて所持しておくとよいかもしれません。
日常的に小腹がすいたときに軽食を常備している方もいるでしょう。食べ慣れている好みの味の軽食やお菓子をバッグに入れておくと、万が一のときの食料となります。消費期限が切れてしまわないように、定期的に食べて新しい物を携帯しておきます。
避難所以外での避難が続く場合、支援物資の配給が遅れる可能性も考えられます。無理なく持ち運べる分だけでよいので、飲料水も常備しておくことをおすすめします。オフィス用に水筒を持参する方も多いと思いますが、帰宅時には空にしているケースがほとんどではないでしょうか。可能であれば、帰路用に水を補充しておくとよいでしょう。
通勤・退勤時に被災した場合、屋外で避難をしなければならない可能性があります。また、屋内であっても季節によっては夜の冷え込みで低体温症などを引き起こすかもしれません。エマージェンシーシートで、しっかりと暖を取れるようにしておいてください。
避難時のトイレ問題は深刻です。公衆トイレは長蛇の列となり、使用できるまでに数時間かかるケースもあります。また、水道が止まり劣悪な環境となり使えないかもしれません。消臭機能がある凝固剤で汚物を固めて廃棄できるような簡易トイレを携帯しておいてください。
また、水がなくても口内を拭いて衛生を維持できるシートや個包装のマウスウォッシュもあるとよいアイテムの1つです。限られた水しかない環境で、感染症対策として口内衛生をキープできます。非常時だけでなく、日ごろから持っていると便利に利用できます。
大勢の人が密集して避難するため、感染症対策としてマスクも携帯しておきます。3〜4枚の予備をバッグに入れておいてください。消毒ジェルやスプレーも合わせて用意しておきます。除菌タイプのウェットテッィシュなどもあると便利です。
万が一建物の倒壊に巻き込まれる、室内に閉じ込められるなどの状況になった場合は、ホイッスルで救助を求めてください。わずかな息でも大きな音がなるホイッスルなら、体力が低下している状態でも助けを呼び続けることができます。すぐに取り出せる使いやすい場所につけておくようにしてください。
災害発生時は、停電で電子マネーやクレジットカードが使えない可能性があります。最低限の現金を持っておくようにしてください。また、非常時でも公衆電話は比較的繋がりやすいので、10円玉を用意しておきましょう。(公衆電話は無料開放されるケースもあります)
いつ来るかわからない大災害だからこそ、いつ来ても被害を最小限に抑えるための備えが重要です。地震だけでなく、大雨災害や雪災害などさまざまな自然災害により、避難をしなければならない状況が訪れるかもしれません。万が一に備えて、安心・安全に働ける環境を整えましょう。