新型コロナ感染症対策を経て定着したテレワーク・リモートワークや人生100年時代に向けた健康経営など私たちを取りまく「働く環境」は大きな変革のときを迎えています。副業をする人やフリーランス(個人事業主)として働く人も増えているなか、オフィスのあり方も変わってきました。企業に所属していても、在宅勤務あるいはサテライトオフィスやカフェなどを活用した、場所にとらわれない働き方をしている人もいるのではないでしょうか。
そのような社会情勢のなかで、「ハイブリッドワーク」と呼ばれる新しい働き方も一般的になりました。本記事では、働き方にあわせたワークスタイルの場をご提案しているWORK KITが、ハイブリッドワークの課題やオフィスデザインで必要なポイントを解説します。バランスを大切にしたオフィスづくりのヒントを、実例をまじえてご紹介していますので参考にしてみてください。
コロナ禍を経て、新しい働き方だったハイブリットワークは、メジャーな働き方に変化してきています。現在、ハイブリットワークは企業やワーカーにどれくらい受け入れられているのでしょうか。
ハイブリッドワークは、テレワーク・リモートワークとオフィスワークを組み合わせた働き方です。オフィスワークは決まった事務所に赴き、同僚といっしょに働く従来型の勤務体系で、テレワークは情報通信技術(ICT)を使った場所や時間にとらわれない働き方を指しています。
テレワーク・リモートワークはおもに、自宅やサテライトオフィス・コワーキングスペースなどの施設を利用します。リゾート施設など非日常の場所で仕事をするワーケーションも含まれています。ハイブリットワークは、主に在宅勤務とオフィスワークを組み合わせるケースが多い傾向です。コロナ禍では出社率の調整として、テレワーク・リモートワークを導入する企業が増えました。その後は、、生産性や働く意欲を高める働き方として注目され現在に至ります。
国土交通省による「令和5年度テレワーク人口実態調査-調査結果」を参照すると、2018~2023年の雇用型テレワーカーの割合の全国平均は以下の通りです。
●2018年 16.6%
●2019年 14.8%
●2020年 23.0%
●2021年 27.0%
●2022年 26.1%
●2023年 24.8%
この結果をみると、テレワークを行っている人は、2021年をピークに減少傾向にあることがわかります。2020年~2021年、コロナ禍において大きく上昇しました。その後、落ち着きを取り戻し減少傾向にあるものの、コロナ禍以前よりは高水準を維持しています。とくに、首都圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)では、30%を超える結果です。
テレワークを行う人が減少している背景には、会社による出社指示や対面業務が必要でテレワークができないといった理由がある。しかし、継続したいと考える人は多いようである。前述の調査による「テレワーク実施希望頻度」の結果は、次の通りです。
●週5日以上 24.6%
●週4日 10.8%
●週3日 18.7%
●週2日 23.5%
●週1日 22.3%
現状の実施頻度では、36.0%の「週1日未満」を希望する回答はありませんでした。週1~4日の場合は、出社と組み合わせたハイブリットワークを希望していることになります。フルリモートを希望する回答が24.6%であるのに対し、ハイブリッドワーク希望は70%を越えた結果です。これからの働き方として、ハイブリッドワークが拡大傾向であると言えるでしょう。
テレワーク・リモートワークはメリットも多い一方で、課題も表面化してきました。そこで、オフィスへの出社と合わせたハイブリッドワークが求められています。ハイブリッドワークで得られるメリットについて考えてみましょう。
取り組んでいる業務は、部署・チーム・人それぞれです。オフィスでまわりの人とやり取りをしながら進めるもの、一人で集中しておこなうほうが効率のよいものなど、さまざまでしょう。また時期やプロジェクトによっては、どちらも必要かもしれません。
業務にあわせてワークスタイルを選べることで、効率的に進められるようになります。また台風や大雨などで公共交通機関が動かなくなり出社できなくても、在宅勤務に切り替えるなどフレキシブルな対応が可能です。
子育てや介護などの家庭の事情で、長時間勤務ができない人もいます。ハイブリットワークなら、通勤時間を減らせる在宅勤務を選べるようになり、バランスよく働けるでしょう。
逆に自宅では集中して仕事ができない、専念する場所がないといった理由でオフィスワークやサテライトオフィスの利用を希望する人もいます。このように、従業員のライフスタイルにあわせた働き方を実現できます。
常に出社する人数が減ることにより、オフィスの規模を縮小して賃貸料を削減することができます。あるいは、執務スペース以外にミーティングや休憩用の場所を充実させて、従業員の満足度を高めることができるでしょう。
企業・従業員、双方にメリットも大きいハイブリッドワークですが、デメリットもあります。ハイブリッドワークにおける課題についても、確認しておきたいと思います。
テレワーク・リモートワークも同様ですが、顔をあわせて話しにくい環境になりやすいのがデメリットの一つです。情報共有がスムーズにできず、伝達漏れや認識のずれによるミスを引き起こす可能性があります。
社内だけでなく、テレワーク・リモートワークと外出の判断がつかず、社内にかかってきた電話に正しい状況を伝えられなかった、来客時にすぐに連絡がつかなかったなど、顧客の信用にかかわるミスも起こります。メールやチャットの活用・スケジュールの共有など、どこにいてもお互いの状況や共有情報を確認できるようにしましょう。また定期的にミーティングを行い、コミュニケーションの促進をはかってください。
テレワーク・リモートワークとオフィスワークが混在するため、勤怠管理が複雑になります。社内SNSやメールを活用して、上司が勤務状況をすぐに確認できる工夫も大切です。また移動先でも勤怠報告がしやすいように、パソコン上での出勤・退勤管理だけでなく、スマートフォンやタブレットを活用できるシステムを導入するなどの対策も必要でしょう。
業務に対応できるインターネット環境が自宅にととのっておらず、在宅勤務に踏み切れない人もいるかもしれません。パソコン利用や照明・空調の利用にかかる費用負担についても明確な定めがなく、従業員が個人的に負担しなければならない状況もあります。
ハイブリッドワークの場合、自宅での業務割合がどれくらいになるかがマチマチのため、線引きをしにくいでしょう。また機密事項が含まれるデータや書類を社外へ持ち出さなければならず、セキュリティや情報漏洩の不安もフォローも大きな課題です。
ハイブリットワークを快適にするためには、オフィスも変革が必要です。ここでは、柔軟な働き方をいかすためのオフィスデザインに大切なポイントをまとめます。
ハイブリットワークでは出社率が少ない日は、空き席が出てしまいます。個々のデスクを持たず、空いている席や自由な場所で業務をおこなうフリーアドレス制を採用すれば無駄なく、オフィスを活用できます。しかしフリーアドレス制は、社員がどこにいるか分かりにくく、動向を把握できないデメリットもあります。在席・離席状況やどこにいるかを共有できるアプリなどのサービスを活用することをおすすめします。
また毎日環境がかわることで、集中しにくいと感じる人もいます。オープンスペースだけでなく、パーテーションなどである程度パーソナルな状況が確保できるスペースを用意するとよいでしょう。
毎日、全員が出社しないため、顔を合わせたコミュニケーションが少なくなるハイブリットワーク。あいさつや雑談でも人間関係を深めるきっかけになりますが、その機会が減ってしまいます。ハイブリットワークでは、コミュニケーションを積極的かつ意識的にとらなければいけません。メールや電話だけでなく、チャットを使った気軽な連絡や会話ができるようにします。
またWeb会議や取引先との打ち合わせをしやすいような部屋やブースをつくるなど、オフィス内にも環境をととのえましょう。休憩スペースを充実させ、他部署をふくめたコミュニケーションを活発にする工夫も有効です。
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テレワーク・リモートワークも含まれるハイブリッドワークでは、顧客や機密情報データの入った業務用のパソコンを社外へ持ち出さなければいけません。通信保護やネットワークへのアクセスパスワードを強化させるなどの、セキュリティ対策をしっかりとしましょう。
また自宅に通信環境がととのっていないと円滑に業務を進められず、かえって効率がさがります。WiFiの貸与、通信精度の高いネットワークへの変更も検討すべきでしょう。在宅勤務時の光熱費や通信料の負担についても、ルール化する必要もあります。
WORK KITは、お客様の視点に立って、企画・デザイン・品質と価格のバランスを大切にするオフィスデザインをプランしています。
そんなWORK KITが手がけた、ハイブリッドワークを快適にするオフィス事例とテレワーク時代のオフィス出社を支えるサービスをご紹介します。
求人メディアの企画・運営を行っている株式会社アトラエ様のオフィスプロジェクト事例です。オフィスは、ワークラウンジとワークスペースの2フロアに分かれています。
フリーに使えるワークラウンジは、ブラウン・グレーを基調として木目素材を取り入れた落ち着きのある雰囲気です。ソファスペースやカウンターを設けており、目的に合わせた使い方ができます。
ホテルのラウンジやおしゃれなカフェのように洗練されたインテリアで、居心地よく仕事に取り組めるでしょう。
社内外のミーティングや商談は、周囲の声や視線が届きにくい場所で行いたいケースもあるでしょう。ワークラウンジの奥には、カーテンで仕切られたガラス張りのミーティングスペースも用意されています。
ワークスペースは白を基調とした洗練された内装です。機能性にすぐれた造作デスクなどが用意され、社員が働きやすい環境が作られています。
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【関連記事】リモートやオフィスを組み合わせたハイブリッドワークで、これからのワークスタイルに変化をつける
CO2排出可視化・削減サービスプラットフォームの開発・運営を行う企業のオフィスデザインです。コミュニケーションが取りやすい開放的な空間を意識し、両側にある窓面から窓面へ視線が抜けるレイアウトにしました。
壁面の特殊塗装や木目のしっかりした床材、木製テーブルなど、自然のあたたかさを感じられる素材を使いました。やさしく穏やかな空気感を醸し出してくれています。
ワンフロアがつながっている空間は、少し単調に感じられるケースがあります。こちらでは、床面に高低差をつけたり、天井を一部スケルトンにしたり、空間にリズムを生み出すようにしました。
ナチュラルでやさしいテイストですが、あえて天井のライン照明をランダムに配置。これは、コーポレートアイデンティティのキーワードである「疾走感」を表現しています。ほかにも、企業ブランドイメージが、盛り込まれています。
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特許出願・登録支援を行う企業のリニューアル事例です。社員数の増加・在宅勤務やオンライン会議の定着化に伴い、固定席運用を一新したデザインを実現しています。
知恵を出し合う場としてのオフィスを目指し、言葉・光・目線を感じられる空間としました。活発な情報交換を促し、問題・課題を一人で抱え込まずにチームで解決できる環境になりました。
清潔感のある白を基調とし、ピンクや青をアクセントカラーとして取り入れています。自然を感じられる木目や石などの素材を加えて、リラックス感を演出しました。窓に向かって並ぶ一人席では、集中して仕事に取り組めます。
ボックス席やファミレス席(ソファ席)も用意されています。作業目的や内容に合わせて、適切な場所を選べるのも働きやすいポイントの一つです。
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ITサービスを中心に幅広い事業を展開している企業の、リニューアル事例です。規則的にデスクが並ぶオフィスの一角を現代に合う形へと変化させました。
活用できていないデスクや収納を減らしました。代わりに、変形テーブルや小上がりのスペースなど、ユニークなアイデアを空間になじむように落とし込んでいます。
全体的には明るいカラーコーディネートですが、テーブルや収納の天板にはダークトーンを採用し、メリハリのある空間になっています。落ち着きがありますが、明るくやさしい雰囲気です。
メンバーの交流を促すコミュニケーションエリア。窓側に設けられた小上がりスペースでは、掘りごたつ式のデスクでリラックスしながら仕事に取り組めます。休息を取ることもできるので、適度な気分転換を図れるでしょう。
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企業のデジタル化支援を行っている会社の移転のお手伝いをさせていただきました。新オフィスは、長く使い続けられることを条件に計画しています。
大きな窓から差し込む自然光をしっかりとオフィス内に取り入れたシンプルで飽きのこない空間に、木目調の家具や植物をたくさん導入しました。スケルトンの無骨な印象の空間に、あたたかみが加わった居心地のよいオフィスです。
一人作業のためのモニター付きオリジナルデスクの設置やWEB会議に集中できる吸音ブースなどの工夫をしています。これまでのオフィスで抱えていた「場所・騒音」に関する課題を改善するためのアイデアです。
自由にコミュニケーションが取れるエリアには、可動式のデスクを配置しました。ワークスペースとしてだけでなく、セミナーや社内イベント等、さまざまな使い方ができます。
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ハイブリッドワークは、社員の出社管理や座席確認が複雑でコミュニケーションが取りにくいデメリットがあります。そんなハイブリッドワークの悩みをサポートするために、座席の利用状況・出社予定の登録・会議室の予約などの機能を可視化したサービス「SMART WORK KIT」で、業務効率化をはかりませんか?
60日間の無料体験もできますので、ハイブリッドワークで社員の勤怠管理や出社後の座席確認などにお困りの方は、ぜひいちどお試しください。
詳しくはこちらのサイトをご参照ください。
働き方は、いつの時代も変化を続けています。「ワークライフバランス」「健康経営」といった言葉も、少しずつ定着してきました。またコロナ禍でテレワーク・リモートワークが一気に普及したこともあり、この数年でオフィスのあり方も大きく変わりました。
「場所」にこだわらない働き方には、メリットもデメリットもあります。双方のよいところをバランスよくとったハイブリッドワークは、これからますます多くの企業で採用され、働き方のスタンダードになってくるのではないでしょうか。
新しい時代の働き方にあわせたオフィスデザイン・設計で、快適なオフィス環境を実現させましょう。